夜風BB
11月のある日、ずっと仲良しだった友達の結婚式に出た。
これで、私の友達はみんな結婚してしまった。残ったのは私一人。今年もこのまま売れ残りで終わってしまうのか。
ホテルでの披露宴が終わって、これから寒風吹きすさぶ中帰るのもなぁ…と思った時、
会場に飾られた風船の撤収作業が目に入った。各テーブルが、パールシルバーの浮かぶバルーン・ブーケで飾られていたのだった。
これを持って帰れば、少しは独身女の寂しい気持ちも紛れるかなぁ…と。
恥ずかしいけど、結婚式帰りだとわかれば、周りも大目に見てくれるでしょ。
私は思わず撤収スタッフに声をかけた。「この風船、頂いてもよろしいですか?」
「あっ、いいですよ。これみんな割っちゃうから」
「えっ、そうなんですか。勿体ないですね。」
「いくつでも好きなだけ持って行ってください。」この言葉に甘えてしまって、方々のテーブルから風船のカールリボンを取って束ねて行き、気がつくと、私の頭上は風船で山盛りになっていた。
他の人が見たら、まるでデパートのイベントで風船を配っている人みたいに見えたかも。
でも、こんなにたくさんの風船、一度持ってみたいと思っていたのも事実。この浮力。やっぱり楽しくなってしまう。
さて、これを途中で飛ばさずにどう持って帰るか、と思案していたら、ホテルのスタッフが気をきかせてタクシーを呼んでくださった。
おかげで途中1個も飛ばすことなく、また恥ずかしい思いもせずに、私が一人暮らしするマンションに帰りついた。
部屋に入るなり、さぁもう大丈夫と、私はこれらの風船を解き放った。今までずっとつながれていた風船が一斉にふわふわと飛んで行った。
天井にポンポンと当たる風船。たちまち天井はパールシルバーの“真珠”で埋め尽くされた。マンションの1室にこんなにたくさんの風船。
天井に上がった風船は、部屋の微風でゆらりゆらりと転がり、シーリングライトの灯りを反射した。何だかゴージャスな気分。
早く家着に着替えなきゃならないのに、それも忘れてベッドに腰掛け、しばらく風船で遊んだ。
いくつかの風船のカールリボンを引っ張って手を放し、また天井に当てる。ポンポンとリバウンドし、ゆらりゆらりと転がる風船。
これを何度も繰り返し、その様子を眺めていたら、変な感情が生まれてきた。「私も天井になりたい!」
私は服を脱ぐと、家着に着替えずに、裸のままでいた。
そして、ベッドの上にうつ伏せに寝ると、淵からベッドの外へ上半身だけ乗り出した。
すると、乳房が重力に引かれて垂れ下がった。これが私の「天井」。
カールリボンを引っ張って、風船を1個取ると、それを乗り出した上半身の真下の床の所にまで持ってきて、手を放した。
風船が浮かび上がり、私の「天井」…つまり、垂れ下がった乳房目がけて飛んできた。
そして、重力に引かれて垂れ下がる乳首に、重力に逆らってふわふわと飛んでくる風船。それが乳首の先っぽにコツンと当った瞬間、「あん!」
私は思わず声をあげた。乳首の先っぽで小刻みにリバウンドする風船。
この時の心地よいくすぐったさといったらなかった。風船の浮力を乳首で受け止める快感!
私はもう病みつきになり、何度もこれを繰り返した。繰り返す度に乳首が硬くなってきて、風船がリバウンドした時の弾みが良くなってきた。
それがまた快感を一層増幅させるのだった。
風船はリバウンドした後、乳首の下でコロリコロリと転がって踊った。風船に心地よくくすぐられる乳首の先っぽ。「ああ気持ちいい…」
時々風船が乳首からこぼれて飛びそうになると、手で軽くついて乳首からこぼれないようにした。
私は両方の乳首でこれをやってみたくなり、もう1個風船を取って、それぞれの乳首の下で風船を踊らせた。
風船同士が当ってこぼれそうになる時もあるので、なかなかコントロールが難しい。
やっと静止して安定し、乳首の先っぽを心地よく押し続ける風船の浮力を味わった。
どうせならこれを全身で味わいたい。でもまさか全身が「天井」になるわけにもいかないし…。
私は一計を案じた。ベッドの上に一束のバルーン・ブーケを持ってくると、それを全部覆うように毛布をかけた。
毛布で浮力を封じ込められた風船たち。私はその毛布の中に、自分の体を入れた。
毛布の中に入っていた風船にくるまれる私の体。仰向けに寝て、まず毛布と乳首の間に風船を1個ずつ。
それから腰のくびれの両脇に1個ずつ。そして、“あそこ”の上に1個。あとは適当に。これで準備完了。
腰を回すようにゆっくりと体を動かすと、毛布と体の間に挟まれた風船が転がり、まさに“全身愛撫”。「あぁん……あぁん……」
体を動かす度、風船たちは私の全身を包みこんで、転がって優しく刺激する。
目で見えるのは、乳首の上でぐるぐると回るように転がる風船。もっとも、乳首は乳房の中に埋もれてしまっているけど、
毛布が軽いので、風船が乳首を押しつける感触がちょうどいい。
毛布の中では腰を両脇から挟んで転がる風船、そして“あそこ”を押しつけながら転がる風船も…。
刺激される度、だんだんと体の動きが激しくなってきた。特に腰のくねりが!「あぁもう私、風船と結婚したい!」
思わず声に出してしまった。あのまま披露宴会場にあったら割られる運命にあった風船たち。
それを救った“恩返し”か、絶頂に向けて奉仕する風船たち…。「お願い!このまま私を別世界に連れてって!」
心の声か、それとも本当に声に出したのか。
「はぁん…はぁん…もう行く!行く!行っちゃう!」
あと少しで別世界が待っている!
「あっあっあっあっあっあっあっあああああああああああーーーーーーーーー!………」
別世界だ!
「………はふん………はふん………もう、………行っちゃった………」
私は上にかかっていた毛布を払いのけた。風船が一斉に浮かび上がり、天井へと飛んで行った。
その中に1個だけ、濡れて浮力が落ち、ゆるりゆるりとゆっくり浮上する風船があった。