Balloon Cafeはセルフで如何?

小市民 改め Balloon Taster

(前書き)筆者は真性popperですが、膨らませるのが面倒で後片付けも億劫、ただそれだけの理由で最近全く実践できておらず、こういうシチュがあれば幸甚!という視点で我儘勝手書きました。同好諸兄よりの愚か者、無精者、上げ膳据え膳など100年早いわ!とのお叱りは覚悟の上ですが、様々なニーズのカフェが多種あるこのご時世、こんなカフェビジネス近い将来どなたかやっていただけませんか?


 定時に退社し会社を出る。今宵は定時でないと困る理由がある。家には「今日は少し遅くなる。食事は大丈夫」とラインした。「仕事で」とは書いていない。少し電車に乗り、駅前からすぐのビルに入る。いつものBalloon Cafeの予約時間5分前、エレベーターで4階に上がり、ドアが開くとすぐ受付カウンターがあるので会員証を提示。コロナはほぼ終息しつつあるとはいえ、俺も受付嬢もマスクをし会話はない。会員証を読み取り画面を見ている受付嬢が「19番様、本日はプリペア60分セルフコースでよろしかったですね?」と尋ねるので軽くうなずく。料金はスマホ決済で前払い。「では、お掛けになってしばらくお待ち下さい。」

 受付横のソファに腰掛ける。造作を見つつ、このビルは昔はカラオケが入っていたのかな?などと考えていると、さほど間もなく「19番様、お待たせいたしました、こちらへどうぞ」と案内される。細い廊下をついていき、3番の部屋のドアが開くと、室内には色とりどりの大きい風船。「プリペアご指定はユニーク16インチ、ジュエル・アソート無地20個エアーでよろしかったですね?」と目を見て聞かれ、思わず「はいっ」と言ってしまう。「ご用意できてます。ごゆっくりぞうぞ・・・一個、サービスしときました。」

 室内に入るといい具合に空調が効き、風船が揺れサワサワ微かな音をたてている。そう、ここは風船を割るための部屋。ここが60分間貸し切りになり、緊急時以外は受付からの邪魔は入らない。これまで、週末にビジホに泊りがけで数割りをしようとしたが、宿泊はするが「想定外」の使用法であり、騒音に対し苦情が来たり、万が一チェーン全店出入り禁止になってしまったら出張にも差し障る。では音を出しても良いところ、むかし「風船だらけにするオフ」とかあったよな、と考えて一人カラオケでやってみたが、これも「用途外」の使用法でドリンク注文伺いの電話は入るしドアに覗き窓はあるし、コトに集中できない。ラブホに男一人は面妖だ。こんなことを口にしてしまったらpopperとして完全にアウト、追放処分を免れられないのだが、自分で膨らまして自分で割って、後始末もして・・・を繰り返すのは・・・無常というか。だからこういうCafeはありがたい。

 ベッドの枕元に、「この風船は私が用意しました」という写真入りの手書きのメモが置いてあり、これは持ち帰りOKだ。ほぼ同じ趣旨だが、ビジホの枕元に置いてある「この部屋は私がメイクしました」という紙片とは値打ちが全然違う。写真を見るとさっき部屋まで案内してくれた娘だ。あの娘が膨らませたこの風船を、これから俺が全部割るんだぜ?そうと分かって部屋まで案内してくれたんだよね?サービスって1つ余分に割らせたいの?気分が高まる。コロナ以降はもちろんブロアー使用だが、手間はかかるが一個につき二回ていねいに膨らませてくれているので、いい具合に大きく好みに膨らんでいる。ちなみに注意事項を見ても「個室使用にあたっては衣服着用のこと」とは書いていない。これは常識で判断せよということだろうし、まさか隠しカメラなどないだろう。いつも最初はTシャツに海パン。ここでは音を気にしたり後始末のことを考えたりして途中で気分が萎えてしまうこともなく割りに集中できる。さて、始めるか。

 部屋いっぱいの色とりどり、きれいに透き通ったジュエルカラーの風船の写真を数枚撮り、照明を落とす。始めはひとつひとつ、時間をかけ、体で丁寧に割っていく。大きな音をたてゴム片が飛び散る。気にしない。割る。追憶と数々の妄想。割る。痛み。皮膚に伝わる圧と擦れる感覚。軋む音。割る。ゴム風船を割っている。あと一つ。「当店では衛生上、風船が残っても使いまわさず全て処分します」。これ一つ残して帰ったらあの娘が割るのかな?怖がるかな?いや、時間勝負だから無慈悲に針で割って事務的に始末してしまうのかな?じゃあ俺が割る。ひしゃげる音とゴムの匂い。最後の一つを激しく割る。コトが終わり、照明を点け、部屋中に散らばる、無残に引き裂かれねじ曲げられた大小のゴム片を撮影。着衣を整えて、退室。受付に行く途中、部屋を片づけに行くあの娘とすれ違う。ビルの外へでて深呼吸、満足感に浸りつつ帰宅。

 ・・・さて、いつもセルフコースだが、メニューによると、バディコースもあり、コス指定ができる娘が時間内部屋に同伴してくれ、膨らましや割りもOKのようだ。また、二人連れ客、同伴での使用も可。三脚付きビデオカメラのレンタルもできるようだ。プリペアコースのほか、キャリーインコースもあり、こちらは風船を自分で当日持込む人用。ブロアーは受付で貸し出してくれ、値は張るようだがヘリウム使用もOK。さらに、裏メニューとしては、前もって持ち込んだキャラ風船を膨らまして用意しておいてくれたりもすると聞いている。このようにいろんなコースがあるが、置いてあるメニューには金額が明記されていない。白金の寿司屋のようだ。予約する時に金額の提示はあるのだろうけど。さて同好諸兄、本日のコース、60分個室使用料と割った21個(1個サービス)の風船代等を含めて5,500円。高いか安いか。今の俺の境遇なら、月に1回はこれからも通い続けたいと思っている(了)。