ポルカドットに挟まれて

夜風BB

「あっ、風船だ!」

ある小春日和。街中を歩いていたら、どこからともなくそんな声が聞こえてきた。

空を見上げると、あぁあれだ、とすぐにわかった。

水玉模様の入った赤と紫の2つの風船。それが、ビルの3〜4階位の高さのところをふわふわと浮遊していた。 手の届かない高さではあるが、それでも空高くではない。ましてやあの水玉模様。否が応でも人目を引く。

多少、風船に関する知識のある私は、あれがポルカドットの16インチだとわかった。 2つの風船はリボンで繋がれ、厚紙の錘が付けられていた。

となると、故意に飛ばしたものではなく、きっと誰かが誤って飛ばしたものだろうな、と思う。 でも、2つの風船にあの錘1つじゃ、錘が軽すぎて飛んでゆくのも無理ないな、と思ってしまう。

風船はそよ風に乗ってゆっくりと流されてゆく。

しばらく眺めていたら、まるで人目を避けるように、ビルとビルとの間の、細い路地に入っていった。 不思議なもので、手に届かないものほど異様に欲しくなってしまう。

捕まえられるという確信もないのに、いつの間にか私もその路地に吸い込まれていった。 路地に入ると、ビルの谷間で気流が変わったのか、風船の動きが止まった。

路地には誰もいない。私だけが空を見上げて、風船の行方を見守っていた。

やがて、風を掴んだのか、風船が動き始めた。細い路地の奥へ奥へと流されてゆく。

ひょっともしたら、という思いで私は小走りにそれを追いかけた。

すると見たところ、流されてゆくにつれ、風船がだんだんと下がってゆくではないか!

しばらく走った後、いつしか助走して、手を伸ばしてジャンプ! 着地した時、伸ばした手の2本指の間には、しっかりとあの厚紙の錘が挟まれていた。

ウソ、捕まえちゃったよ風船。あんなに高い所を飛んでいたのに…。

紛れもなく、赤と紫の水玉模様の風船が、私のすぐ目の前にあった。顔の前をコロコロと転がり、頬にふわっと触れた。

とにかく次に私が採った行動は、近くのビルに入り、応対した警備員に「用を足したい」と告げることだった。 親切にもその警備員が貸してくれたのは、車椅子用の広いトイレだった。

自動扉が閉まり、「施錠中」のランプが灯ったのを見て、ひとまず安心した。

改めて風船を眺めてみる。

それにしても16インチはでかい。販促でよく配られる9〜11インチの風船を見慣れた目には余計にそう感じる。 もとよりヘリウム不足のこの御時勢、こんなにでかい風船をタダで配るとは考えられない。

すると、どこかで結婚式でもあったのか、それとも、店舗のディスプレイに使うやつが誤ってリリースされたのか…。

それにこの風船、まだ艶がある。普通、ゴム風船は外気に長い間触れると、表面の艶がなくなり色が濁ってくる。 ところがこの風船にはそれがない。照明を反射して、表面がツルツルと光っている。

ということは、この風船は膨らましてまだ間もないもののようだ。確かに触ってみると、まだガスがパンパンに詰まっている。

…などと冷静な分析をしているヒマはないようだ。早いとこ、どんな“用”を足すのか、下半身と相談して決めないと。

股の所から取り出して聞いてみたところ、最初にやりたいと言い出したのは、あの“輪っか”の中に入りたい、というものだった。

輪っか、とは、厚紙の錘に開いている、指を通すための穴のことだった。

この厚紙の錘、よくマイラーとかに付いている物と比べると大きいものだが、それでもこれ1個で2つの風船を飛ばないようにするには無理がある。 現に、室内で手を放しても、錘をゆらりゆらりとぶら下げながら浮き上がり、風船がトンッと軽く天井を打った。

私は風船のリボンを掴むと、風船をグイッと引っ張り、錘が床近くに来る所まで下ろして、再び手を放した。 フラフラとゆっくりと浮かび上がる風船と共に、錘も足下から上昇してくる。

よーく狙いを定め、錘の輪っかが股の高さに来た時、すかさず先っぽを突き出す。 すると、フニャッとまだ柔らかい先っぽが、うまくその錘の輪っかの中に入った。

錘が先っぽから外れないように、しばらく息を殺してじっとしていると、明らかに先っぽは浮力を感じて反応してきたようだった。 さっきまでフニャフニャだったものが、徐々にビクンビクンと鼓動を感じるようになってきている。

次に先っぽが要求してきたのは、この浮力を“生”で感じたい、というものだった。

私は風船から錘を取り外した。手を放すと、風船は先ほどとは比べ物にならないくらい勢いでスーッと浮かび上がった。

(ブボボンッ!ボンッ!)

2つの風船が激しく天井を打った。

(ポン!ポン!ポンポンポンポポポポポ………)

リバウンドがだんだん小刻みになってゆき、天井に張り付くと、ゆらりゆらりと転がり出す風船。

私は2つの風船のリボンの先を結び付けた。リボンで繋がった2つの風船。 その結び目を再びグイッと引っ張って風船を天井から下ろした。

私はその結び目が足下にくるぐらいまで下に下ろしたところで、再び手を放した。

途端にまたスーッと勢いよく浮かび上がる風船。が、結び目が、2つの風船の間で構えていた先っぽにうまく引っかかった。

(ツンッ!)

16インチバルーンの浮力がビンビンともろに伝わってくる。風船同士が擦れ合ってカサカサと音を立てている。 時々風船を横から手でポンッと突いて揺らすと、それに合わせて右へ左へと弄ばれる。 それに反応して、だんだんと硬くなってきた。

でも、もっと快感が欲しい。

次のリクエストは、あの風船を先っぽでつつきたい、というものだった。

私はリボンをつかんで風船をグイッと手繰り寄せると、風船がちょうど股の高さになるようにして、リボンを便器の座板に結びつけた。 そして、ゆらりゆらりと揺れる風船目掛けて、思う存分、先っぽでツンツンとつつきまくった。

水玉模様が先っぽに触れると異様に興奮する。突いて、リバウンドが先っぽに当たって、また突いて…。 カサカサと擦れ合う音を立てながら、次々と激しく先っぽを襲う風船。ツンツンと突く度に、先っぽに触れながら右へ左へとこぼれるように転がる風船。

すっかり太く、硬く、そして長くなったところで、もう準備は整った。最後のリクエストは、もうあれしかない。

(あの風船と風船の間に挟まれて、狭○…)

私は2つの風船を徐に手でつかむと、その間に挟み込んだ。

不思議なもので、何も柄の入っていない風船に挟まれるよりも興奮する。 しかも、ついさっきまで、手の届かない高さを飛んでいた物が、今ここにあって、さらにそれに挟まれているなんて…。否が応でも興奮する。

私は風船をゆっくりとコロコロ転がし始めた。水玉模様が先っぽに触れる。

(あぁ気持ちいい…)

声を出したいが、出すわけにはゆかない。転がるスピードが徐々に速くなる。

(ああああああああ…)

水玉模様が激しく転がる。だんだんと先っぽに熱いものが込み上げてきた。

(あ〜〜〜もう来る!来そう…)

手を緩めず転がし続ける。

ポルカドット16インチ。赤と紫の水玉模様の大きな風船。 女の子が見たら、きっと「かわいい!」と言うものを、まさかこんなことに使っているなんて…

(あ〜あ〜あ〜あ〜あ〜…)

息が荒くなってきた。もう来るか? 転がす手にも力が入る。目にも止まらぬすさまじい勢いで手が往復する。

(行く〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

あぁもう先っぽが破裂しそう!破裂する!あっあっあっ………あーーーーーーー!!!

(ドピュピュッ!ドピュッドピュッドピュッドピュッ…)

水玉模様の風船に包まれながら、ビクンビクンと蠕動運動が… 2つの風船の間で暴れまわる私の………
………………………
………………
………

「どうされましたか!」

激しいノックと共に、扉の外から声が聞こえる。

「いえ、別に何もありませんけど。」

自動扉を開け、何食わぬ顔で外へ出る私。当然もう服は着てしまっている。

「そうですか。これは失礼しました。」 「いえ、こちらこそ助かりました。」

警備員に礼を言うと、私は風船を持ってそそくさとその場を立ち去った。

もっとも、あの警備員、風船の表面にべっとりと付いた白い液体には気づかなかったようだが…。