グライダー体験搭乗記

2015.10.10


いつも「グライダーってのは、スロープってのは・・・」と薀蓄を垂れている私ですが、実は本物のグライダーを知りません。これじゃあ、片手落ち? 説得力まるでなし?? そんな時、機会あってグライダーの体験搭乗を行ってきましたのでその内容をレポートします。


まず行先はハワイ、オアフ島の北西、ディーリンガム飛行場という所。
インターネットで検索した結果見つけたのが、HANA HOU AIR というホームページがヒット。
日本人女性の教官がいて、グライダーの体験搭乗、体験操縦、操縦練習なども行っているらしい。
早速メールしたところ、何となくたどたどしい日本語で返信あり。きっとハワイに移住して長いんだろうなぁ。まあ、問題なく通じるから良しとする。スケジュールを調整し予約を取りました。飛行機曳航で約20分の体験操縦です。

ハナホウ・エアーさんのホームページ

約束の時間に少々遅れて現地着。
想像よりだいぶ質素なバラックのような格納庫にそれらしき人影。すでに曳航機L-19とグライダーGROB103 TWIN ACROが引き出してありました。
簡単な手続きと世間話で、私がパイロットだと知ると、ブリーフィングもかなり省略モードだったような気が・・・
「とりあえず行きましょうか」ってな感じで、早速機体へ案内してくれた、オーナー/教官の松元裕子さん。
このディーリンガム飛行場は3000mの滑走路がありますが、駐機しているのはセスナなどの小型機とグライダーのみ。
飛行場の東半分は主にグライダーで、西半分と飛行場脇の緑地はスカイダイビングで使われています。見たことないグライダーがいっぱいありました。
曳航に使うのは、セスナL-19バードドッグ、日本の陸上自衛隊でも連絡機として使われていた、短距離離着陸が得意な縦列複座の軽飛行機です。軍の払い下げなのか、迷彩塗装が残っていますが素性は不明。
曳航機のパイロットは、アメリカン航空をリタイヤしたばかりという、ブライアンさん

  

搭乗するグライダー、G-103は実に質素な仕様。計器は、速度計、高度計、バリオ(昇降計)、滑り計のみ。教官はハンディーのラジオを持っています。

レバー類は簡単! ラダーペダルの調整とコックピットのベント(空気口)の開閉レバーが計器盤に、曳航ケーブルのロック/リリース・レバーが足元にあります。スピードブレーキ、エレベーターのトリムレバーは左サイドパネル。

グラスファイバーの胴体は、身体の大きい私が下手に乗ると壊しそうな雰囲気。乗り込み方、キャノピーの閉め方、5点式のシートベルトの締め方をレクチャーされ乗り込みます。

「キャノピーの連絡口の中に手を突っ込んで持ち上げないように」と注意あり。連絡口の周囲にクラックが入っている機体は殆どがそういう扱いをしているからだとか。あと、キャノピーは極力きれいに保つように、当然ですね。

説明を受けている間に、L-19はエンジンスタート完了。「じゃあ行きます よ」と、そのままL-19に引っ張られ、駐機場所から斜めに滑走路へ。ラダーで操向しながら滑走路に正対させそのまま離陸。
走り出してまず行うことは、翼を水平にすること。わずかな速度でエルロンが効きだし、これは簡単です。
あとはエレベーターを操作し、前輪を浮かして機体を水平に保つ。そのまま離陸速度に達すると浮揚します。

  

ラジコンと同じく、グライダーが先に浮揚し、曳航機のやや上方に位置して曳航機の浮揚を待ちます。
(あ、ラジコンが実機と同じなのか:笑)

曳航機が良く見えるので、ついていくのは簡単に思えました。
ラダーを積極的に使って軸線を保ちます。エルロンは翼を水平に保つのみ。
旋回中は、曳航機よりも小さな操舵で控えめに、との説明。やはり、初めての場合はオーバー・コントロールで蛇行飛行になる人が多いとのこと。ラジコンも同じですね。
上下位置は、曳航機よりもやや高い位置(HIGH TOW)を保つのが普通だそう。LEVEL〜LOW TOWでは、曳航機の後流の影響を受けて安定しないらしい。
この日は気流が非常に安定していて風も弱く、サーマルもスロープ風も期待できないとのことで、普段よりやや高い、4000FTまで上昇しました。曳航中の速度は約65mph

リリース・レバーを引っ張ると、「ガコン」というやや大きいショックがあり、離脱完了。
すぐさま曳航機が横にブレイクし、いよいよソアリングの開始です。
姿勢指示器がないので、姿勢の保持は外界とキャノピーの位置関係によります。慣れないとちょっと難しいかも。
ほぼ水平姿勢を保ち、バリオ(昇降率)をマイナス1-1.5(ノット表示らしい)にすると、最適な滑空速度45mphぐらいになります。速度基準のほうが判りやすい気がするのだが・・・
通常、飛行機はエルロンで旋回するのだが、グライダーは傾くだけでなかなか旋回してくれません。アドバース・ヨーが発生するようです。努めてラダーを先行して操作します。だんだん慣れてくると、滑り計やキャノピーの外に貼られたヨー・ストリング(毛糸)を見ながら、滑りのない旋回を行うことが出来ます。
慣れてきたところで、左右の急旋回(45度バンク)を連続して行ってみます。
今度はかなりラダーを強く使用する必要がありますが、バンク角が確立すればラダーを中立に戻す必要があります。
このへんが難しいところ。身体で覚えるまで少しかかりそうですね。
左右360度、合計720度連続旋回して、高度が300フィート程度しか低下していないのはさすが!
サーマルの中ではこのような急旋回を繰り返して、サーマルを逃がさないように操縦する。
急旋回による高度低下より、サーマルのリフトの方がはるかに大きいのだとか。

  

サーマルやスロープ風を体験できなかったことがやや残念ではあるが、安定した気流の中で十分操縦感覚を味わいながら約20分、いよいよ着陸です。
まず、60mphまで増速し、ダウンウィンドに進入します。高度はあまり見ていないようで、飛行場が約45°下方に見えればOKとのこと。ベースターンの位置で、風向・風速に対する調整を行う。この日は殆ど風がないので、ベースターンはやや遠目。
パス角は約15度ぐらいか? 滑走路端の100メートルぐらい手前を狙って進入。必要に応じてスポイラーを出し入れして降下率を調整するが、姿勢を変えずに保つことで、速度をほぼ一定に保つことが出来る。

目標に近づいたところでやや機首を上げ、減速しながら滑走路に進入。わりと高速で接地します。

スポイラー・レバーは車輪ブレーキも兼ねており、これを調整しながら元の駐機場所までカーブで進入、停止。なんともハイ・テクニックというか、適当というか・・・
次のお客さんのために、機体を手押しして出発方向に向け、終了。
もちろん私もお手伝いします。
今回の体験飛行でお世話になった、L-19曳航機のブライアンさん(左)、グライダー教官の松元裕子さん(中央)と記念写真。
ほんの短い時間でしたが、グライダーの飛びを味わうことが出来て大変為になりました。
もし次回があれば、もう少し長い時間でサーマルやスロープ(実機では、リッジ・ソアリングというらしい)も味わいたいな。
温暖で風光明媚な場所で、のんびりグライダーにでも乗って過ごすのもいいなぁとチョッピリ思ってしまいました。

本レポート中の画像は、FUJI FILM XA2 およびCanon IXY Digital D930S で撮影しました。


  
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