CIVILのRC飛行機工房

Fly Model Super Scooper CL-415

2009年6月6日初飛行
7月27日追記

時々覗かせてもらっているKK HOBBY のホームページで、CL-415消防飛行艇のスケール機を見つけてしまいました。
4サイクル50クラス双発、2m超えの堂々たるサイズ、実用一点張りのごついスタイルと派手はカラーリングは強烈なインパクトを放っています。
CL-415は、筆者も少しだけ仕事で携わったことがあり、懐かしさと共にスケール熱がムラムラと・・・・
気がついたら、いつの間にか「購入する」ボタンが押されていました。 イカンですね〜、ネット販売は(笑)

「はじめに」

予約販売ということで、品物の入荷を待つ間に、あらためて実機CL-415について調べてみました。

 

本機は、カナダの広大な森林を火災から守るために、同国カナディア社(現:ボンバルディア社)で開発された。
カナダ森林の各所に点在する湖に着水して水を汲み上げ、火災箇所に散布する、その目的のためだけに作られた消防飛行艇で、胴体内には6トンの水タンクを備え、これを水上を滑走しながら約12秒で満水にすることが出来る。
本機はいわゆる「Amphibian」、水陸両用機。引き込み式の車輪を装備しており、陸上でも離着陸することが出来る。
レシプロ双発のCL-215というモデルがベースで、これをターボプロップに換装したのがCL-415である。エンジンのパワーアップに対応するため、水平尾翼に縦のフィンを追加、翼端にもフェンスを追加して迫力のある独特のスタイルとなっている。
このような用途の航空機はほかに例がなく、カナダ以外にヨーロッパ諸国にも輸出され、製造機数は60機を超えている。
日本にも、東京消防庁向けにデモ飛行に来たことがある。

さて、予約販売の中国製品の常、長く待たされることを覚悟していたのだが、たまたまタイミングが良かったのか、CL-415は注文から約半月で私の手元に届きました。
その箱を見て軽い眩暈を感じました。2m超えの大きな段ボール箱は迫力満点!
我が工作室には収容しきれず、廊下に置いたその箱は嫁さんに大顰蹙を買いました。
これは早く作ってしまわなければ!早速、中身のチェックです。


梱包は万全です。
胴体、ナセルカバーはグラス製、綺麗に塗装が終わっています。
主・尾翼はバルサ組、フィルム貼り。赤と黒のストライプはすべてフィルムの貼り分けで表現されています。良く出来ています。
キャノピー、サーボ・カバーなどはエンビ板にウレタン塗装が施してありますが、この塗装がちょっとはがれやすいようです。
エンジンナセルはベニヤを組んだもの。これを4本のボルトで主翼に取り付けるようになっています。実はこれがあとで大問題に・・・
製作はデカル貼りからはじめます(笑)
組み上げてしまうとデカルが貼りにくくなる位置もありますから、この工程でいいんです。
後から付くナセルや翼端フロートなどでデカルが隠れないように注意する必要がありますね。
これが付属のデカルシート。でも・・・どう見ても、C-GDKY と C-GOKY 登録記号に間違いがあるんですよね。
以前にも、別の機体で「G」が逆さまに貼ってあったものがありました。
中国製はこれだからもう・・・

ちなみに、正しいのはC-GDKYの方です。はい!

まず、すべてのパーツを取り出して重量測定をします。
実は、KK HOBBY のホームページに書いてある「飛行重量4500g」がちょっと信じられなくて。翼長2.05mの双発機が到底そんな数字で納まるわけがないと。
で、キット重量が4500gであることが判明!そりゃそうだろ・・・
この時点で、全備重量は6kgに迫ることがほぼ確実になりました。飛ぶかな〜

ナセルにエンジンマウントを固定します。
エンジンは奮発して新品のFS−56αを2台! 双発機はエンジンのバランスが取れていないと大変ですから。
ここで、2つのエンジンナセルの寸法が違うことが判明。片方のナセルには真っ直ぐマウントが付き、もう片方のは2度ほどサイドスラストが付くようになっています。
取説にはこのあたりの記述はまるでなし!
で、常識的には左エンジンを真っ直ぐ(サイドスラストなし)、右エンジンを右サイドスラスト2度、となるようにナセルの左右を決めました。

まず、ナセルには燃料・水の浸み込み止めに、薄くエポキシレジンを塗っておきました。
次に、主翼に固定する前にタンクの搭載、エンコンサーボの搭載を済ませ、リンケージの調整もしておきます。左右のエンコンのストロークはきっちり同じに合わせるように!

(PCM-12Xを使用したフラップや2スロットルの調整については別記事で解説予定)

また、双発機ということで特に配慮したパーツがこれ、BELLWOOD のバブレスタンクウエイトです。(右は付属していたウエイト)
これはめちゃくちゃ優れもの! 燃料タンク最後の1滴まで綺麗に吸い上げ、それまでエンジンの調子も変わることがありません。
元々ヘリ用の軽量タイプということで姿勢変化による追従性が気になりましたが、そんな心配は皆無でした。
ARFなので、あとは基本的には舵面を固定して、サーボを搭載するだけ。
本機購入と同時に、KK HOBBY から TowerPROの廉価版サーボを6つ、購入してみました。
すべてを受信機につないで搭載前にテスト。すると、どれも明らかに動きが悪いです。
分解能が低いというか、動作がスムーズではありません。PCM-12Xの SERVO TEST SLOW で動かすと一目瞭然です。特に困るほどではありませんが、一応、主操縦装置(Primary Control Surfaces)に搭載するのを避け、左右のフラップとエンコンに使用しました。

主翼は左右をカンザシでつなぎ、前部はカンザシで、後部は2本のナイロンボルトで止めるシンプルな構造です。主翼側のダウエル穴、ウイングボルトの穴、ウイングボルトの受け、全て加工が終わっています。またちゃんと精度が出ています。すごいです。
胴体側のダウエルを受ける穴のみ自分で開けることになりますが、主翼が胴体に噛み合うようにはまるので、穴あけ位置は簡単に特定できます。

主翼を仮付けしてから、これに平行、垂直になるよう、尾翼を取り付けます。
水平尾翼は、胴体に罫書かれているカンザシの下穴のとおりに穴を開ければぴったり平行度が出ました。すごいです!
尾翼をエポキシで接着しますが、接着前に表面の塗装を落としておくと後から剥がれることなくガッチリと取り付きます。

  

ラダーを装着する前に水中舵を仕込みますが、この水中舵、どう見ても角度が変です。(左:取説写真)
これでは藻が大量に引っかかってしまいそうなので、写真中央のように曲げ直して使用・・・しようと思って作業していると、ポロリと舵面が取れてしまいました。
なんと、ロー付けと思っていたものは半田付けのイモ付けでした。こりゃダメです。
バルサとマイクログラスでこのように作り直して使用しました。(右)

各舵面のリンケージを行います。
付属のリンケージパーツは大体そのまま使えますが、エレベーター、ラダーなどのホーンは取付穴径が若干大きく、ボルトが利かないものがあります。取り付けた後で瞬間を流しておいたほうが安心でしょう。

翼端の整流板、フロートなどを取り付けます
中にナットが仕込んであるため、取り付けは至極簡単・・・な筈ですが、中には接着が悪くて剥がれてしまうナットがありました。せっかく綺麗に出来た主翼を切開手術して、ナットを接着しなおします。
私は8箇所中、2箇所を再接着しました。

ナセルカバーをエンジンに合わせて切り抜きます。
はじめはドリルで穴を開けてリューターで削っていたのですが、身体に悪い粉が大量に部屋に舞います。常にエアを吸い込み外に排出するような機能を持ったむサンディング・スペースをお持ちの方以外はお勧めできません。
グラス素材のカバーですが、ホットナイフを使用すると切粉も出ず綺麗に切れます。

プロペラは、実機と同じ4枚ペラを選択してみました。
スピンナーは通常のナイロンスピンナーが使えないので、センター固定のアルミスピンナーです。あと2枚分の切り欠きを追加加工し、バランスを確認してから使用します。
結構それらしいでしょう? カッコイイ〜〜!

ここまできたらあと少し
全てのサーボを配線し、機首に受信機、バッテリーを仮固定して重心測定をします。
例によって、適当な位置を秤に乗せ、モーメントを算出します。
今回はステップ位置と水中舵の位置で測定しました。キット指定、前縁から90mmの位置に重心を置こうとすると、なんと! 機首に450gもの錘が!
釣具屋で鉛の錘を大量に買い込み、450g分をシリコン接着剤で機首内側に貼り付けます。受信機、バッテリーはその後ろに押し込みました。
この錘の重量を加え、全備重量は約6.3kgになりました。重っ・・・

ここで主要諸元を

機体名

Canadair CL-415

全長 1476mm 受信機 JR RS-12DA
全幅 2050mm エルロン JR ES539 ×2
全備重量 6300g エレベーター JR ES539
エンジン OS FS-56α×2 ラダー  JR ES539
プロペラ APC 11×6 4ブレード フラップ TowerPRO SG5010 ×2
PROPO JR PCM-12X(72MHz) エンジン TowerPRO SG5010 ×2

「初飛行に向けて」

初飛行に先立ち、ナセルカバーなしの状態でエンジン調整を行います。
普段ならすぐに飛ばしながらランニングインを行うところですが、今回は双発機なのでエンジン調整には慎重を喫します。
燃料タンク位置が高いので、エンジンへの流れ込み注意!
2,3回空回ししてスターターで一発始動、さすがOS!
ところが、タンクキャップ付近から盛大な燃料漏れが・・・
キャップゴムの材質が硬く、細めの燃料パイプとのなじみが悪いようです。
ゴムを増し締めしても止まらず、結局タンクはテトラ製に交換することに。

おまけに、エンジンバックプレートを止めているボルトが1本、弛んで抜けてしまいました

また、ブレークイン時に感じたことで、どうも左エンジンの振動が大きい。
プロペラやスピンナーを左右入れ替えてみても状況は変わらず、どうやら樹脂製のエンジンマウントの強度にばらつきがあるようです。
エンジンを持って上下に揺すってみると明らかに左のほうが右よりも大きく動きます。
すぐに壊れることはないと思いますが、気持ち悪いのでマウント材の外側に3mmベニヤを当て、弾性エポキシ接着とボルト締めで補強しました。

翌週のリベンジ
エンジンナセルカバーは装着で行います。
あわよくばこの日初飛行まで持ち込もうかと・・・・
まず1タンク甘めで回して、ハイとスローを確認します。
ところが、ハイでたったの8500rpm、ニードルがかなり開いているにもかかわらずエンジンはヒート気味でスローがまったく安定しません。プロペラがオーバーロードのようです。
どうも4枚ペラはマッチングがわかりません。
さらに2タンク回してみましたが状況は変わらず、初飛行は諦めました。
ここでクラブの仲間にいくつかのプロペラを借りて確認。
APC12×7(2ブレード)で10,000rpm、スローも安定、このあたりがベストマッチのようです。このセッティングで初飛行の準備をしました。

しかし、せっかく実機同様の4ブレード・プロペラで計画したのに、2ブレードに戻すのも悔しいことです。改めて製品情報を検索すると、同じAPCの4ブレードで11×6というのがあることがわかりました。(それまで付いていたのが11×9)早速取り寄せてみます。

天候等の都合もあり、もうすでに出場予定の琵琶湖水上機大会の前日になってしまいました。この日に飛行が成功しなければぶっつけ本番の出場になってしまいます。
交換した11×6 4ブレードは快調! ハイで10,500rpm、スローも調整の末、何とか安定しました。
ちなみに、双発機では2つのエンジンを完璧に同調を取ろうとする傾向がありますが、これは不可能です。どうしてもエンジンにはばらつきがあり、悪いほうをいいエンジンに合わせようとするため無理が出ます。更に2つのエンジンが回っているので音の変化が聞き取りづらく、焼けてきているのに気がつかず空中でエンスト、という事例が多いような気がします。それぞれのエンジンをそれぞれのベストに調整するのが良い、とされています。
本機も地上では右が10,500rpm、左が10,200rpm、でも気にしません。スローも吹き上がりも大体あってます。


「いよいよ初飛行」

木曽川のホームグラウンドで行いましたが、この日は風もなく、クラブ員2人がかりで穏やかな水面に降ろしてもらいます。
離水開始位置までしばらくタキシングさせますがエンジンは安定しており不安はありません。
徐々にパワーを上げ走らせます。
トルクの影響か、若干左に傾き、スラストラインが上方にあるためノーズを突込み気味になります。
エレベーターを目いっぱい引き、エルロンで傾きを修正しながら走らせると、ほとんどプレーニングに入らないうちにふわっと浮き上がりました。

飛行性は重厚そのもの
その形状からは想像できないほど安定しており、まったく不安はありません。各舵は穏やかに効き、大型機の飛びを満喫できます。
飛行速度が遅いのはプロペラピッチが浅いことと、抵抗の多い機体形状によるものでしょう。特にパワー不足というわけではありません。
低速になると頭下げが強く、エレベーターがフルアップに達するまで失速には入りません。
フラップを降ろしてもこの傾向は変わらず、安心して飛行できる反面、エレベーター・アップの余裕がないため、着水時には「パワーで吊ってくる」コツが必要です。

この日は2回の飛行を行い、若干エレベーターの舵角とエクスポネンシャルを修正しましたが、そのほかの調整は行いませんでした。大会前に機体をいじるのは禁物です。

翌、琵琶湖水上機大会の日は横風が強く波も高い大荒れの日でした。
CL-415はうねりに乗り上げかなりの機首高姿勢で離水しましたが失速の傾向はありません。
クラークYの厚翼が十分な揚力を発生しているのでしょう。
機首を若干押さえて加速し、反転してローパス。
かなりの乱気流の中でしたが、姿勢の乱れも少なく操縦性はそれほどシビアではありません。水面すれすれの8字旋回、初めて挑戦するループ、ロールなども綺麗に決まりました。
いい飛行機です。

湖面、風などの条件の悪さから、本機以外に飛行を完遂できた機体が少なかったこと、他の大型多発機が参加していなかったことなどで、CL-415は初挑戦で初優勝を頂きました。

しかし、飛行を終えて整備をしているとき、ある重大なトラブルが発生していることに気がつき、愕然とするのです。

ナセルを持って機体を傾けようとすると、なんと!ナセルがグラグラに弛んでいるではありませんか、それも左右とも。
早速分解してみると、ナセルを主翼に止めている4本のボルトがすべて弛み、そのうち1本はすでに脱落しているではありませんか!
ナセルを外してみると、ボルトを受けるマウントは曲がり、一部割れてしまっているところもあります。強い力で締め付けたこと、また、水分を含んで木が弱ったことが原因でしょう。飛行中にエンジンだけ飛んでいかなくて良かったです。

 

マウント材にエポキシを染み込ませて修理、横にベニヤ板を当てて曲がらないように補強します。
本当はマウント材を交換してしまうのが良いのでしょうが、このぐらいでも十分でしょう。(左)

今度は馬鹿みたいに締め付けるのは止め、ボルトの頭にエポキシを塗って弛み止めをしておきます。(右)

低速時の機首下げが大きくエレベーターをいっぱいに引かなければならないので、重心は前過ぎると感じました。
そこで、機首の錘を2個(約80g)抜き、重心を後ろに下げるように修正しました。

受信機、バッテリーも錘とともに機首に押し込んでありました。
しかしこれは若干の浸水による濡れもあって良くありません。
コックピット後あたりにベニヤでメカベッドを設け、ベルクロで縛って搭載し直しました。

この2点の修正で、重心は約10mm後退、30%MACから33%MACになりました。
さて、重心位置修正の成果は?

テスト飛行は、翌7月26日、岐阜県某ダム湖にて行いました。

重心位置を後退させた効果ははっきりと表れました。
エレベーターのトリム位置がかなり変化し、再トリムが必要になりました。
効きは良くなり、低速でもエレベーター引き代に余裕があります。かなり普通の飛行機に近くなり、飛ばしやすくなりました。
縦の安定性は問題ありませんが、方向静安定が若干悪くなったようです。しかし、これは上空の乱気流のせいかもしれません。もう少し様子を見る必要があります。


  
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