CIVILのRC飛行機工房

OK模型 DJ-3

2004年3月17日 更新


秋のクラブ飛行会でオリゾンを操縦ミスで墜落させ、ついに私にはグライダーと水上機のほかに飛ばせる飛行機がなくなってしまいました。
制作中のF−2やスピットファイヤの完成はまだまだ先、そんなわけで、何か手軽に飛ばせる飛行機を、と、ちょっと浮気をすることになりました。

買ってきたのはこれ、OK模型のダクテッド・ファン・モデル、DJ−3です。どう考えても手軽じゃない?? 私、どうしても普通の飛行機ではダメみたいですね・・・・
では、制作記のスタートです。

キットにはレーザーカットを駆使して細かく肉抜きされたバルサシートがぎっしり。原寸大図面が2枚。
フレキシブル・ロッド、ホーン、ヒンジなどのいわゆるリンケージパーツは入っていません。好みのものを使えということでしょうか・・・それらと引込脚のセット、それに肝心のダクトファン・ユニットを購入すると結構高いものにつきます。ちょっと誤算。

図面の余白には、ステップ・バイ・ステップで制作の説明が書いてありますが、一部ポイントのみの表現で、ある程度の経験者でないと迷ってしまうでしょう。

本機はその大きさ、スタイル、プラスチックを多用した内容から、とてもシンプルな構造を想像していましたが、どっこいこれは大きく裏切られました。

写真のようにかなり凝った構造で、微妙に湾曲した胴体側板など、ねじれや狂いが出やすく、瞬間接着剤を多用して作るそのやり方は一度生じた狂いがなかなか修正できません。慎重な作業が求められます。

胴体後部は肉抜きされたベニヤの1枚板です。ファンユニットから後になるべく障害物を作らないという思い切った構造ですが、肝心のこのベニヤが大きく反っているのがショック! ちょっと湿らせて平らな床に重しを乗せて放置してみましたが効果なし・・・フィルムを貼って無理やり曲げ直しました。
制作途中の本機。

スパスパとレーザーカットの部品を組み合わせるこのへんまではペースが速いのですが、このあと面倒な主翼の接合、ファンユニットの搭載、細い胴体内のリンケージ、プラスチックカバーの装着など、面倒な作業がいっぱいです。
どのような順番で進めればよいか悩んでしまいます。

本機は機首におもりを積むことが前提となっており、そのための鉛の固まりも付属しています。しかしなるべく重量物は機首に集中させ、おもりを少なくしたいもの。ところがその機首部はとても狭く、受信機用のバッテリーさえ載りません。7つもサーボを積むのに、小型の350mAH っていうわけにもいかないし・・・そこでこんなもの作ってみました。単3サイズ 2000mAH のニッケル水素電池をハンダ付けて作ったオリジナル・バッテリーパックです。スリムだし、容量も多くて一石二鳥!

 

リコイル・スターターのついたファン専用18エンジン。ちいせぇ〜、これで約2kgの本機が飛ぶのでしょうか?(左)

ジェット機ですから当然引込脚です。専用のノーズ・ギアーには残念ながらステアリングがありません。(右)

やっと左右の主翼が接合され、胴体と組み合わせてみました。
まだ、プラスチック部品は装着していません。

水平尾翼にはファントムみたいに下半角がついています。カッコイイでしょ?
とても薄いので捻れないように注意してフィルム貼りを行いました。

そのプラスチック部品です。
複雑な形状をはさみとカッターナイフで切り出すのは結構大変!
そしてこれがなかなか胴体と合わないんだなぁ・・・・・

このキットにはデカールの類もついていません。
しかし、OK模型のホームページからロゴデータをダウンロードし、カラープリンタで印刷して作ることが出来ます。PILOT の他の機種のデータもあるので、セダクションのロゴを貼っちゃうことだって可能!
ところで、このロゴデータ、透明のデカルシートに印字するわけですが、プリンタとデカルシートの組み合わせによってはインクが滲んだり、うまく乾かずいつまでも手に付く、ということもあります。

デカルシート用紙が2種類あったので比べてみました。
色合いも鮮明さも、左の、KOKUYO 「インクジェットプリンタ用ラベルシート」が勝っています。
薄くてインクの食いつきも良く使いやすいようです。
さて、本機はABSプラスチックが多用されていることもあり、仕上げはフィルム貼りの上に塗装を施してみることにしました。
ちょうど、RC Air World 誌の記事にEZ機の塗装の要領が掲載されていたので、これを参考に行います。
露出する木部を手持ちのモノコーテ(チタンシルバー)及びオラカバ(白)で貼り上げた後、プライマーを塗って色塗装を行います。
プライマーは車のバンパー用が良いということでしたので、ホルツのバンパー・プライマー及びボディーペイントで塗料を統一しました。
まず機体全体を軽く磨き、アルコールで油分を落としてプライマーを吹きます。記事ではそのあとサンディングも不要で簡単、ということだったのですが・・・・

これは思いがけず難しい点が多いことがわかりました。まず、

・乾燥したプライマー表面はベタベタして埃がいっぱい着く
・色塗装を行うまでは素材への食いつきは非常に悪い

埃が着かない場所でプライマーを乾燥させ、すぐに色塗装をする必要があります。
プライマーだけで色を塗らない部分をマスキングして・・・などという考えはもってのほか。
マスキングテープを貼るとその部分のプライマーがきれいに剥がれてしまいます。特にモノコーテとは相性が悪いようです。それに、作業中埃やごみが着いてしまったらもう取れません。無理にサンディングするとプライマー自体がボロボロと剥がれて、ベタベタな表面にくっついてしまいます。こうなるともう最悪。「サンディング不要」ではなく、「サンディングが出来ない」と書いたほうが正しいです。
主翼のフィルムの白はそのままに、ストライプを入れるだけにしようと思っていたのですが、結局全面に白を塗る羽目になりました。そしてその白が乾燥したあとで、塗り込められた埃などを軽くサンディングして落としてやります。そろそろ泣きが入ってます。(T_T)

フィルムに穴を開けないように注意しながらサンディングし、何とか機体表面が平滑になりました。やっとマスキングをして色塗装に進むことが出来ます。
冬場で気温が低いので、塗料が乾燥不良気味。ストライプを重ねるのに時間がかかります。悪戦苦闘しつつも、何とか丸1日かかって色塗装を終わりました。

塗装仕上げをしたときは、マスキングを剥がすのが楽しいやら怖いやら・・・・

作成しておいたデカルを貼ります。
このデカル(KOKUYO製ラベルシート)はインクの定着が良く、少々こすったぐらいでは滲みません。指先でぎゅっと押しつけてやりました。ちょっと皮脂が付いちゃったかな・・・・

単調な塗装も、マーキングが入るとぐっと引き締まりますね。

キャノピー付近には、戦闘機でよく見られるネームを入れてみました。
通常これは機付長(その機体の整備責任者)の名前なんですが、私が貼るのはもちろんパイロット・ネームです。
あ、考えてみたら機付長も私なんですね。
製造、整備、品質管理、飛行試験、すべて一人で行えるのがラジコン機の面白いところです。その代わりうまくいかなくても誰にも文句は言えませんが。

このあと機体表面を綺麗にしてウレタンのクリアを吹きます。

晴れた日曜日、一気にウレタンを吹いてしまいました。
ところが冬の寒い日、ノズルから吹き出た塗料がすぐに冷えて固まってしまうのか、いくら塗っても機体表面は梨地のようにザラザラなままです。どんどん厚塗りになってしまうので、適当なところで妥協。最後にコンパウンドで磨けばいいや!ってな軽い気持ちで進めることにしました。
ところが今度は何日経ってもウレタンが硬化しません。
ほぼ0℃の寒い部屋に放置してあるのがいけなかったようで、暖房のある部屋に移して3日間、やっとリンケージが出来る状態になりました。

ここで、機体重量を測定(推測)してみました。
実は家には1kg以上計れる秤がありません。(泣) そこでまず各パーツに分けて重量を測定しておきます。
あとはこれに機首に入れるウエイトが加わります。

パーツ 重量(g) TOTAL(g)
主翼 270  
胴体、エンジン+ファン 740  
受信機、サーボ、バッテリー 370  
脚、タイヤ 120  
チューンドパイプ 100  
トップデッキ 80  
リンケージ・パーツ 100 1780

メカ積み、リンケージは、元々スペースがないのでかなり苦労させられます。
特に、引込脚、エルロンのサーボはマイクロ型でないと入りません。OK模型から発売されているマイクロリトラクトサーボを2個、追加購入してしまいました。またお金がかかってしまいます。
その他のサーボは手持ちのフタバのミニサーボを流用しましたが、ご覧のように隣のサーボと干渉してしまいあまり良くありません。

主翼のサーボも注意する必要があります。
まず、メインギヤのサーボは十分下方に下げて取り付けないと、ホーンが燃料タンクに当たってしまいます。また、サーボリードもそのままサーボルームから出したのではこの胴枠に当たってしまいますので、わざわざカンザシぎりぎりのところに穴を開けてサーボリードを出してやりました。長さ的にもギリギリです。

さてリンケージが終わったら最後にバランス測定をして、機首の重りの量を決めます。結果は110gと、意外と少ないのにホッとしました。
これで全備重量は、1890gとなります。

苦労して仕上げた本機をいよいよ飛行場に持ち出して記念写真。
後方は愛車のエアトレックです。

これからエンジンの慣らしをやるのですがこれがまた一苦労。
プルスターターをいくら引っ張ってもウンともスンともいわず、みんなが寄ってたかって、やれプラグだ、燃料だと・・・結果的には、スロットルの開きが足りなかったというお粗末。
地上で2タンク慣らしたあとはかなりエンジンもこなれて、素直になってきたようです。

初 飛 行

まだまだ慣らしが不足のようですが、曇天無風と条件が良いので初飛行を決行しました。

1回目は滑走中にエンジンがパイプインからはずれ、スピードが乗らずに失敗。本機は燃料タンクが前方にあるので、加速中は燃料が濃くなる傾向にあります。
2回目、ニードルを絞り込んでパワーを確認後、再スタート。芝生の滑走路を約50m走って機体はふわりと空へ浮かび上がりました。

まず言われていたようにパワーは不足気味。地上でも空中でも、なかなか速度がつきません。
しかし、機体自体はかなりの低速でも安定して飛んでいます。とりあえず失速や墜落の不安はありません。ジェット機らしくないと言えばジェット機らしくありませんが・・・・

そのうち、だんだんとパワーが安定しなくなりました。どうやらオーバーヒートのようです。
用心のため早めに降ろすことにしました。アプローチもかなりの浮きの良さ。ちょっと接地が速くて大きくバウンドしてしまいました。接地速度は低翼スポーツ機並みで良いようですが、プロペラ機と違って、エレベーターが後流の中にないので効きが悪い点は注意しなければなりません。

さてこのDJ−3、「電動にしなさい」との悪魔の誘いもあるのですが、もう少しエンジンの調整(パイプの微調整もしなくてはなりません)をして、スピードの乗りが良くなれば、機体重量の軽さと相まって、低速から高速まで、メリハリの利くフライトが出来るのではないかと期待しています。


初飛行も無事終わり、大体エンジンの調整も出来たので、DJ−3のインプレッションを一通りまとめてみたいと思います。

キットについて

 スタイル

抵抗の小さい細い胴体に、十分な翼面積を持たせながら適度なボリューム感を持たせたジェット機スタイルはなかなか良!エンジン&ファンを胴体中央部に置きながら、吸排気をうまく通して効率を落とさないような処理はさすがと言えます。

 価 格

キット+専用ダクトファンユニットの価格は安い(実売30K)ですが、リンケージパーツ、専用引込脚、マイクロサーボが合計7個など、専用品を購入せざるをえず、かなり高いものについてしまいますので要注意!

 品 質

レーザーカットの正確性はすばらしく、組み立てるのに何も修正は必要ないほど。
但しバルサの材質には少しばらつきがあるように感じました。
多用されているプラスチックパーツもケガキ線どおりに切り離せばスパッと合います。
残念なのはベニヤの反り。組み立て前に良く修正しておかないと、胴体がねじれる原因になります。

制作上の注意

 組み立て

非常に精細な設計です。
これ以上ないぐらいに肉抜きがされており、部材の強度も必要最小限です。製作中に壊さないよう細心の注意を払う必要があります。
部品が大変正確に出来ているので、ついサクサクと組んでしまいそうですが、直線・直角部分が殆ど無いのと、微妙にカーブしている胴側板など狂いの出やすい要素は多々あります。図面と良く照らし合わせて正確に組む必要があります。
説明書では殆どの部分を瞬間接着剤で組むように指定してありますが、胴体左右側板の合わせ、前後胴体結合、主翼左右結合など、特に重要な部分はエポキシを使って狂いを修正しながら固定すると良いと思います。

 リンケージ

機体サイズの割には非常にスリムなのでマイクロサーボが必須です。特に引込脚周りのリンケージは図面どおりに行わないとロッドが通りません。重量物である受信機バッテリーも機首最前方には入るスペースがありません。私は、単三型電池4本を平らに並べて搭載しました。
ラダー、エレベーターは長いフレキシブル・ロッドを使用しますが、温度変化での伸縮が心配です。若干の重量増に目をつぶってピアノ線入りを使用するか、伸縮に対応して調整代を多く取っておく必要があります。
どうしても上手くないのはエンコンロッド。どのように工夫してもスロットル側のアジャスターがABSのカバーに当たってしまいます。あまり使用しない中速位置だけであるということで無視することにしましたが・・・

エンジン/パイプ調整

 

エンジンにはブランドの刻印が一切無いのでメーカー等は分かりません。
しかし国産エンジンほど精度は高くないようで、初回の始動はかなり固く、運転温度も上がりやすいように感じました。
(アイドル位置で)一般のエンジンよりはかなりスロットルを開く必要がある点は注意したほうがいいかもしれません。
地上で2タンク程回すとかなりアタリが取れた感じで回転も安定してきます。地上でオーバーヒート傾向があるうちはまだ飛ばすべきではないでしょう。
パイプはエンジンが十分安定してから調整します。私はパイプインから抜けやすい傾向にあったので基準位置から2mmほど伸ばしました。燃料は20%ニトロ/20%オイルのいわゆるローオイル燃料ですが特に問題は無いようです。

フライト

 

芝生の滑走路でも平坦であれば50m程度の滑走で離陸できます。
但し離陸後はスピードの乗りは悪く、無理せず真っ直ぐに加速させることが重要です。
翼端失速の傾向は無さそうですが、いわゆる「バックサイド」に入って大きな頭上げのまま加速できない、高度も取れない状況に陥ることがあります。この場合はラダーを使って障害物のない方向に旋回し、機首を押さえて水平加速させます。
いったん加速してしまえばフライトに特に問題はありません。飛行速度は低翼スポーツ機並で、ジェット機らしい「胸のすくような」速度ではありませんが、機体重量が軽いのでループやロールなどの軽快な運動が可能です。急旋回するとすぐに速度が落ちてしまう点は注意が必要です。(OKのホームページhttp://www.okmodel.co.jp/video.htmにもデモ映像があります)
また、キット指定の重心位置ではやや縦安定が弱い感じはあります。
進入着陸はハーフスロットル(殆ど推力を発生していない)で行います。
機体自体はかなり低速で持ってこれますが、旋回時に減速しやすいので注意。また、離陸時同様いざというときの加速が遅いことは肝に銘じておかなければいけません。

総 評

「小型ダクトは飛ばない」というような考え(思い込み?)もあるようですが、このDJ−3は十分ダクトの面白さを味わえる飛行機だと思います。
確かに小型機としてはコストがかかったり、調整やフライトにデリケートな一面も持ち合わせていますが、それはそれで挑戦しがいがあると考えれば良いのではないでしょうか?
ダクトの入門機として、華麗なジェット機スタイルのDJ−3は注目を浴びること間違いなしですよ!

本ページの画像は、カメラ付き携帯電話 J-PHONE SH-010で撮影、
VIX Ver. 2.21で加工し、作成しました。  


  
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