Mini Nimbus レストア日記

2004年9月28日スタート!
2006年4月16日 Update 


「まえがき」

2004年夏の霧ヶ峰遠征以来、スケールグライダー欲しい病にかかっていた私ですが、実は昨年某K氏から修理中の大きなグライダーを頂いたのを思い出しました。
片方170cmはあろうかと思われる細長い翼、ボリュームのある太い胴体、これってもしかして??

この飛行機って何?

機体の状態を見る 

キャノピーの製作

機首の成形

不安箇所の補強

塗装とマーキング

引き込み脚装着のために

キャノピーとコックピット

リンケージ等

初飛行!

引込脚をつける

トーイングに挑戦! 


「この飛行機って何?」

黄色く変色したビニールの覆いを剥がすと、機種は判らないなりにもそれはいかにもスケール機っぽい。しかしグライダーってみんな同じに見えるし・・・・
ここで、胴体側面に消えかかった「D−7469」の文字を発見!これがレジ(登録記号)なら機種が特定できるかも!

インターネットで検索すると、ありましたありました! D−7469、それは Mini-nimbus HS7、シリアルナンバー10に与えられたレジであることが判明しました。

そこで次にこの Mini-nimbus という機体について調べます。
初飛行は1976年9月18日、全幅15m、1人乗りのグラスファイバー製、そして豊富な実機写真。これらを総合して、間違いなく本機は Mini-nimbus であると確信するに至りました。

・・・ RCグライダー「Mini Nimbus」について ・・・

この記事を掲載した2日後、キットを譲ってくれた某K氏からお話を伺うことが出来ました。
この機体、Mini Nimbus は、過去4人ほどの手を渡って私の所にやって来た、怨念の・・・もとい! 長い歴史のある機体であると・・・
最後の所有者、K氏はちょうど大型機を飛ばす機会が無くなり、修理をせずにそのまま保管していたのだとか。それで、スケール機を欲しがっている私に譲ってくれたんだそうです。
本機は少々重いが浮きは良く、スケールクラスの滞空競技に良く出場していたそうです。
スロープでは良く走り爽快な飛びを見せますが、フルフライングテールに難があり、スピードを上げるとフラッターのような症状が出るそうです。エレベーターのリンケージは見直した方が良いというアドバイスを頂きました。
ある時電波の混信らしき症状で真っ逆様に墜落、残念ながら機首とキャノピー、両翼を破損してしまいました。


「機体の状態を見る」

さてここで、もらった機体の各部をチェックしてみます。

グラスファイバー製の胴体は垂直安定板と一体になっています。機首は壊れたのか、バルサブロックで綺麗に作り直されており、ヒビが入ったと思われる部分も内側からグラス布が当たっています。

大切なカンザシの受け部分もしっかりしておりこのまま使えそうです。
胴体内にはサーボベッドがそのまま残されており、エレベーター、ラダーのリンケージロッドも通っています。多少錆びが浮いていますが、必要なら交換すればよいでしょう。

キャノピーが無くなってしまっているのでこれを作らなければなりません。
しかし既にバルサブロックを組み合わせたオス型がほぼ完成しています。あとは表面処理をして、エンビ板を押し付けるだけ・・・かな?

「主翼」

発泡スチロールにバルサプランク、鋼鉄製のカンザシが埋め込まれています。


エルロンの付け根付近で折れた形跡があり、グラスを巻いて修理されています。これも捩れなくしっかり修理されているのでこのまま使えるでしょう。
エルロンは胴体内からワイヤーリンケージで作動させる方式。Salto と同じです。

また、ワイヤー作動のスポイラーユニットが装着されています。
実機に装備されているフラップは省略されています。

「ラダー、エルロン、エレベーター」

ちゃんと全部ありました(笑)
これもバルサ製です。多少潰れたり痛んでいるところもありますが、パテ埋めで何とかなりそうなレベルです。

ここで特徴的なのがエレベーターの取り付け。実機同様、フルフライングテール方式となっています。その取付ベースとなるプラスチックの部品も残っていますが、材質が脆くなっていないことを祈るのみです。

幸い殆どの部品が問題なく使えそうなことが判りました。
これを今までの経験も生かしつつレストアすることにします。


いきなり時間が開いてしまいました。直前になって尻に火がつかないとやらない私の悪い癖です。(笑)

「キャノピーの製作」

まず、紛失してしまっているキャノピーを作らなくてはなりません。
ほぼ完成している木型は実機よりもちょっとスリムな感じです。せっかくですから実機並に盛り上げてカッコいいものを作りましょう! 頂部を削り、バルサブロックを継ぎ足して成型します。パテ埋めをして成型し、熱を加えても大丈夫なようにエポキシでコーティングしました。
これに熱したエンビ板を押し付けるわけですが・・・

これがなかなかうまくいきません。0.5mmと1.0mmを準備し何度もチャレンジしましたが、1.0mmは全く形にならず、0.5mmでも何とか使えそうなものが出来たのは1回だけ・・・それも透明度が落ちてあまり綺麗ではありません。全体を一気に熱するオーブンのようなものがあれば良いのですが、満足な道具もない環境でワンオフでは仕方がないかも。
ちょっと薄くて透明度の悪いキャノピーですがこれを何とか使うことにします。

「機首の成型」

機首部はバルサブロックで綺麗に修理してありましたので、このまま使う予定でした。
全体を塗りなおして赤いストライプまで入れたのですが、どうもスマートすぎてイメージが違います。実機写真と比べてみても明白です。そこで思い切ってレザーソウでぶった切ってしまいました。当然バルサブロックを突き抜けて大穴が開きますが、これを埋めるついでにエアロ・トーイング用のフックを埋め込みます。これで少しは実機らしくなりました。

「不安個所の補強」

ラダー/エレベーター(フライングテール)のリンケージはかなりガッチリ作られているようですのでこのまま使うこととしました。しかし、不安なのはフライングテールを支えるプラスチックのパーツ。これが黄色く変色して強度も落ちているのではないかと思います。飛行中に破損したら大変ですので、表面をきれいに磨き、グラス布を貼って補強しました。
これで見た目は丈夫そうになりました。

 
「塗装とマーキング」

天候に左右される胴体の塗装仕上げを早く実施することにしました。
まず、機番号などのマーキングはフィルムの上に貼る分も含めて透明なカッティングシートでデカルを作ります。
ラッカーの銀色で下塗りし、発色を良くします。その後白と赤で彩色し、ウレタンのクリアを吹きました。耐燃料性が必要なわけではないのですが、藪の中に突っ込むことが多いグライダーはかなり傷がつきやすいので、ウレタンのような硬い塗料が最適です。
ついでに、かなり生傷の多くなってきたSaltoの胴体も磨いて塗っちゃいました。

「引込脚装着のために」

エアロ・トーイングをやるなら脚を付けなければいけません。
これは Top Model製、スケールグライダー用の引込脚ユニットです。高かった〜〜
ところがこれ、エルロンのサーボマウントに干渉して胴体内に入りません。さあ、困った!
いろいろ思案しましたがやはりエルロン・サーボは左右主翼に積み、胴体側のサーボマウントは削除することに・・・また手間がかかってしまいます。
ただし、引込脚そのものは今回はつけません。エアロ・トーイングの計画が具体化してきたら改めて作業することにしましょう。

しかし、エルロンサーボのためのリード線は今回通しておく必要があります。
現状あるエルロン作動用のワイヤーのスリーブを利用できないか、検討してみましたがさすがに無理。改めてプランク材を切ってリードを埋め込むのはとても勇気が要りました。
サーボは JR NES-3321 グライダーのウイング用サーボが大安売りしていましたのでこれを搭載。例によって Super-X で接着し完全に埋め込んでしまいました。
リード線を通した溝をバルサの端材で埋め成型します。潰れたりボロボロになっている角をスクラップバルサとパテで尖らせ、白のオラカバを貼って新品のように生まれ変わりました。

「キャノピーとコックピット」

透明度の悪い自作のキャノピーを使おうと思っていたら、「ホクセイのプライマスのキャノピーが合いそうだ」という情報を頂き取り寄せてもらいました。厚みは自作品よりは厚く、透明度が高いのはさすが製品版。アールは多少きつめですが上手に切り取れば何とか合いそうです。これを使うことにしました。

大きさの割には比較的薄手のキャノピーの剛性を上げるため、コックピットの枠を作ってそれに接着することとしました。3mmの固めのバルサ板で作り、グレーに塗装しておきます。計器板は実機写真からプリンターで打ち出したものを使いました。

キャノピー+計器板、前方はベニヤのダウエルで、後方はIMのキャノピーラッチを使ってワンタッチで着脱できるようにしました。 

「リンケージ等」

胴体のサーボベッドはだいぶボロボロになっていましたので、ベニヤ+カーボンシートで補強しました。サーボはエレベーター、ラダー、スポイラー用に標準型サーボを、引込脚兼トウフック用に引込型サーボ(今回は搭載しません)、さらに左右エルロンの合計6つとなります。
受信機は今回シンセサイザー方式のRD10DSを搭載しました。これらをなるべく前方に詰め込み、さらに重心位置調整のため機首に335gのバラストが必要となりました。スケール感重視で機首を短縮した結果、バラストの量は若干多目となりました。 

エレベーターはフル・フライングテールということで、中立位置がわかりません。不安に感じておりましたところ、幸い同型機を所有している人がおり、基準位置を丁寧に教えていただきました。 
今回はPCM−9XII のフライトモードを活用し、強風用のSPEEDモード、弱風用のTHARMALモード、そしてトーイング用にLAUNCHモードを設定します。
強風用はオーバーコントロールを防ぐために各舵角を弱く、
弱風用はエルロン→ラダー・ミキシングをいれて旋回をスムーズに、
そしてトーイング用にはミキシングをOFFにしてあります。
トリムはフライトモード別に設定できる機能がありますが、取り敢えず正しい中立位置を出すまで設定は COMMON(全モード共通)としておきます。

今回まだ搭載しておりませんが、引込脚とトウフックは連動させ、脚出し中はトウフックがロック、脚上げでリリースするようにする予定です。トウフック用のロッドはすでに装着してありますので、ブラブラしないようサーボベッドに縛りつけておきました。 


「初飛行」

 

初飛行は、 平成17年6月4日、霧ヶ峰遠征飛行会で行ないました。
この日はほぼ快晴でスロープの吹き上げ風も強く、スケール・グライダーの初飛行には絶好の条件に感じられました。入念に舵の動きをチェックした後、度胸を決めてベテラン三浦氏に投げてもらいました。

手投げ直後こそ強い風に煽られちょっとヒヤリする場面もありましたが、風に乗って高度が取れればしめたもの! 大型機の優雅な飛びを存分に味わいました。

インプレッションとしては、良くも悪くも鈍重です。
安定していると言えば安定しているし、運動性が悪いと言えばその通り。しかし元々スタントをやる機体ではありませんから・・・・
エレベーターは全くの無調整。中立位置もバッチリでした。効きも適切で問題ありません。
これに対してエルロンは鈍すぎます。効き始めがもっとも鈍く、効き始めるとグラッと傾きます。サーマルモードではラダーへのミキシングを20%入れていたのですがこれがまだ足りないのかもしれません。また、初飛行時は差動をつけておりませんでしたが、これも少し入れておいた方がいいかも・・・・

これらの調整を行った上でもう一度フライトをする予定でしたが、1回目の着陸がちょっとハードでエレベーターを破損。修理が必要となりました。

このような大型機が飛ばせる条件の良い日はなかなか無いと思いますが、1フライト1フライトを大切に、じっくり調整を続けていきたいと思います。

「引込脚をつける」

2006年春、いよいよエアロ・トーイングの計画が本格化してきたところで、本機のその準備をすることにしました。

胴体に引込脚装着に必要な穴の大きさをマーキングし、ドレメル・カッティングホイールで切ります。勇気いった〜〜(笑)
穴を開けてみた感じでは、脚に荷重がかかると胴体が多少撓むようでしたので脚ユニットの前後に胴枠を設け、胴体補強も兼ねて接着面積を増やすようにします。
脚ユニットは衝撃荷重で剥がれないように Super-X で FRP に接着します。

脚ドアは軽くて剛性が高いものが望ましいです。
胴体とほぼ同じ直径の空き缶に2mmのバルサ巻き、表面に薄い塩ビ板を貼って癖をつけます。これを必要な大きさに切ってヒンジと開閉用のホーンを埋め込みます。
接着はすべて瞬間接着剤を使用しました。
ヒンジの可動部に接着剤が回り込んで動きが渋くならないよう、あらかじめCRCを注しておきます。
塗装はあり合わせのアクリルで塗りました。

胴体側に脚ドアを取り付け、動きを調節します。
引込脚が出入りするのに必要な90°開が確保出来るよう、ヒンジの間隙を調整しました。

脚ドアの開はタイヤに押されて開き、閉は脚ユニットの一部に結びつけた紐に引っ張られて閉じるようにしました。これは結構調整が難しくて苦労しましたが、後で考えるとスプリングかゴムなどで閉まる方向に引っ張っておけば簡単だったですね・・・

サーボは標準型が4つになりました。
引込脚とトウフックは1サーボで連動しています。

  

「トーイングに挑戦!」

 

2006年4月15日、西三河フライングクラブ飛行場にて、エアロトーイングに挑戦しました。

曳航機は90−4Cエンジン搭載、翼長2.1mのパイパーカブです。
翼長3.6m、重量2.9kgの本機が上がるのかどうか、緊張の中トーイングはスタートしました。

パイパーカブに曳かれて走り出してわずか10m、Mini Nimbus はふわりと地面を離れ、ゆっくりと上昇してゆきました。
予想通り若干舵が鈍重で、曳航機について行くには早め早めの修正操舵が必要でした。

ラインを切り離し、曳航機のパイパーカブが着陸するとあたりには静寂が訪れます。
ここで本機が「ヒヨォォォーーン」という独特な風切音をあげながら飛行していることが分かりました。
スロープでも聞いたことがない、初めての経験です。

トラブルは2件、

まず、曳航フックの作動ストロークが合っていませんでした。
上手くリリースするように調整すると地上でラインが抜けてしまい、ラインが抜けないように合わせると空中で上手くラインが外れません。ATVでサーボの動作角を増やして何とかしましたが、やはり空中でラインが抜けにくくヒヤリとしました。

着陸前、スポイラーの動作チェックをしました。機体はかなりの角度で降下することが出来、これは合格!
ところがその後がいけません。一旦出したスポイラーが半分ほどしか収納せず機体は急降下、NMFC飛行場脇の立木に宙づりとなり、皆さんが協力して回収してくれました。(写真右)

帰ってから修正したトウフックのリンケージ
動作ストロークを増やし、引込脚と同一ストロークで動かすことにしました。両方のロッドはホイルキーパーを利用して接続しました。

あと、機体各部にフィルムのたるみやバルサの反り、ビスのゆるみなどが目立ちました。たまにしか飛ばさないグライダーだからこそ、飛行前には入念な整備・点検が必要ですね。

上手く動作しなかったスポイラーも潤滑不足であることが判明。CRCを注したら直っちゃいました(笑)

 

本ページの画像は、Canon IXY Digital 50 及び Vodafone 携帯電話 SH-010 で撮影し、
VIX Ver.2.11 で加工し、作成しました。  


  
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