カーチスP−40物語


このページは、R/Cスケール機、カーチスP−40Eウォーホークの制作・飛行に関わる苦難の道のりをつづった壮大な物語です。

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カーチスP−40との出会い
     

呪われた飛行機

キット制作の準備
スケール大会出場!
P−40改造!
発奮!スケールアップ
夏のある日の大事件です
トラブルがいっぱい!
花粉症じゃなかったの?
P−40その後
P−40ついに初飛行!
 

1,キット、カーチスP−40との出会い

 それは、今をさかのぼること3年前、アメリカ・カンサス州ウィチタという町に出張に行ったときのことです。
 ウィチタという町は、あの有名なセスナ社、パイパー社、ビーチクラフト社、リアジェット社など、殆どの小型航空機メーカーが集う航空機産業の町です。このような町はやはり模型航空も盛んで、小さな町に模型店が4つもあり、賑わっていました。

 私が、HOBBYTOWN USAという店を覗いていたとき、その箱を見つけたのです。それは...

P40箱絵
TOP-FLITE Cartiss P−40E Gold Edition Kit

 
 私は、その箱絵(写真)の素晴らしさにまず目を奪われ、箱を覗いてその正確な図面とバルサのカッティングにまたびっくり。一目惚れでした。
 しかし、仕事で大きな荷物を抱えていた私は、そこで躊躇しました。持って帰るにはさすがに大きすぎる。かといって別送にしたらキットの値段以上に送料がかかってしまう。結局私はそのキットを買わずに帰国しました。店のおっちゃんがくれたタワーホビーズのカタログだけを手に。

 それから2ヶ月後のことです。あのウィチタから、飛行機がやってきました。当社が整備し、自衛隊に納入するための飛行機が空輸されてきたのです。空輸パイロットは話好きで気さくな爺さんでした。私はウィチタにいたときの話をいたしました。

私、「カーチスP−40のキットがあってねー、ほしかったんだけど箱がおっきくて持って帰れなかったんだよ」
爺さん「ふーん、どれくらいあるの」
私、両手を軽く広げて、「こんなもん」
爺さん「なーんだ、そんぐらいなら買ってきてやるよ。どんなやつだ、どこに売ってた?」

 私は、地図とカタログを手に彼に説明しました。なんと彼は次の機体を空輸するとき、ちゃっかりそのキットを乗せてきてくれたのでした。(密輸です密輸!)

 そんなわけで、「TOP-FLITE Cartiss P−40E Gold Edition Kit」が私のものになりました。(160ドル+爺さんへのおみやげ代)
 早速制作にかかった私でしたが、さてさて、そうは簡単にいかなかったのです。

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2,キット制作の準備

<機体スペック>
Wingspan: 64 in (1625 mm)
Wing Area: 597 sq in (45 sq dm)
Weight: 8-10.5 lb (3630-4760 g)
Fuselage Length: 54.25 in (1376 mm)
Engine Required: 2-stroke .61-.90 cu in (10-15 cc) or 4-stroke .91-1.20 cu in (15-20 cc)
Radio Required: 4-7 channel w/4-8 servos
 さて、キット内容は、バルサ、ABSパーツのほかに、リンケージパーツ、原寸大図面、取説(もちろん英語)、フライング・タイガース仕様の綺麗なデカールが入っていて、とても親切な内容です。バルサの質やカッティングもきれいで、各部のねじれが出ないよう巧妙な構造になっています。(日本のテトラ並みかそれ以上)全体的には、フルスケールでありながら制作しやすく、「きっと良い飛びをする」ことを予感させてくれました。
 ちなみに、TOP-FLITE社からは、同じシリーズで、ムスタング、サンダーボルト、コルセアなど有名どころの飛行機が発売されています。

 制作に取りかかった私は、初めはP−40の雰囲気を楽しむだけのつもりでした。しかし、その素材の良さゆえに、若干のスケールアップを実行することにしました。主な改造点は以下の通りです。

  ・固定の尾輪を引き込み式に
  ・サーボスペースを移動させて、コックピットを再現する
  ・垂直尾翼の複雑なヒンジラインの再現
  ・エルロン、フラップホーンは内装とする

 エンジンはOSを使用するとして、脚関係のパーツをどうするか悩みました。取説には、ロバート社の引込脚が指定されています。確かにタイヤの大きさ・重量などから考えて、MKなど、機械式の引込脚では無理がありそうです。ここで役に立ったのがアメリカから持ち帰ったタワーホビーズのカタログです。

 ここでスケールマニアのみなさんにアドバイス、一度外国のカタログをチェックしてみてください。珍しい機体キットはもちろんのこと、日本では手に入らないと思っていたあこがれのパーツ、工具、接着剤に至るまで、それこそ膨大な量の便利グッズが載っているではありませんか。しかも送料を考えてもはるかに安い!
 いまや個人輸入は難しい時代ではありません。カタログを取り寄せ、付属しているオーダー用紙に、ほしい品物とカードの番号を書き込んでFAXすればよいのです。これを読んでいる貴方だったら、ここをクリックしてE-mailを送ってやればOKです。
 私も思い切ってオーダーを書きました。ロバートの引込脚、ストラット、タイヤ、P−40専用のスピンナー、等々。待つことたった10日間、それらの部品は空路はるばる私の手元に届きました。

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3,P−40改造!

 さてここで、制作記事のようなことを書いてもつまらないですが、私がいくつか行ったスケールアップについてだけお話ししましょう。

P40尾輪  まずは引き込み式の尾輪です。
 キットには固定式のパーツが入っていましたが、実機のP−40の尾輪は引き込み式で、クリーンな胴体下面になっています。これを再現するために、、ロバート社の Retractable Tail Gear No.122 を使用しました。ドアは、塩ビ板を熱で整形して同じくロバートの棒ヒンジを加工して取り付け、尾輪の上下に連動して開閉するよう機械的にリンクしてあります。写真ではわからないと思いますが、開閉用ロッドの取付位置を決めるためにいくつ余計な穴を開けたことか。おかげでこのように立派に作動し、現在までノートラブルです。

 次は主脚です。P−40の主脚は90度回転して後方へ引き込む形式になっています。これを自作するのはなかなか大変ですから、私はキットの指定通りロバート社の Pneumatic Rotating Retract No.615 とオレオ式脚柱 Straight Robostrut を使用しました。内方・外方の脚ドアは外方のみ再現し、作動機構を持たず、開閉ともただ脚柱に押されて動くよう工夫してあります。本当はもっと凝りたかったのですが、装飾品が脚の作動を妨げるようでは困るのでこのあたりで手を打ちました。

P40主脚

 このエア式引き込み脚は大変確実に作動しましたが、一つだけ問題点がありました。機体をローパスさせて脚を上げると、「おーい、ぱったんという音聞こえたぞー」などという声。そう、作動速度が速すぎるのです。通常はエアの量を絞って調節するのですが、この機体の場合、空気力に逆らって前方に脚ダウンしますので、エアの絞りすぎはダウンロックを不確実にする可能性があり、危険です。
脚制御系統  そこで採用したのが、Sonictronics 社の Hydra Lock なるシステム。これは、エア・バルブと脚シリンダーの間に装着し、シリンダーに送られるエア圧をハイドロ・オイルの流れに変換し、脚シリンダーを油圧で作動させようというものです。これを、ダウン・アップ両系統に装着。しかし、大きさ・重さも手のひらサイズで、写真のように全ての脚系統が主翼内に収まっています。
 このシステムが効果絶大、脚は5〜6秒かかってゆっくり且つ確実に上下します。このスケール・ライクな作動に、本人もギャラリーも大満足! しかし半年後、予想もしなかった重大なトラブルが待ち構えていようとは....

エンジン部  もうひとつ、エンジン回りの写真をお見せしましょう。P−40は機首下部にラジエーター、オイルクーラーなどがあるため、模型化してもかなりこの部分が大きく、エンジン搭載も余裕があります。写真は、ABS製のカウリングを外したところですが、この中にマフラー、給油口、プラグヒートのアダプタ、受信機のスイッチまで集中配置しています。カウリングをかぶせると殆ど見えません。が、その後部から手を突っ込めばどれも容易にアクセスできます。スケール機で、外から見える部分にスイッチが「でん」と装備されているのはいただけませんからね。

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4,夏のある日の大事件です

 冬が終わって、春が過ぎ、夏が来て、ゆっくりとしたペースながらも制作は順調に進んでいました。
 ところで、私は、夏は水上機を飛ばすことにしています。くそ暑い(失礼!)飛行場に行くよりは水辺の方がいくらか涼しいですから.... ある金曜日、翌日のフライトに備えて、機体の整備をしようと工作部屋のドアを開けたとき、私は信じられない光景を目にするのです。

壁に吊してあった水上機・シーライン60が無い!!

 いや、あるのです、ずーっと床に近いところに。そしてその下には、な、なんと、折れ曲がったバルサの固まりが.....

 1994年夏、その年は記録的な猛暑でありました。(庭の芝生が全て枯れてしまったぐらいです)
 シーラインは、切れないはずのビニール紐で吊り下げてありました。その紐がなんと暑さで伸びて切れてしまったのです。運の悪いことにその下には、やっと下塗りが終わったばかりのP−40の主翼が置いてありました。シーラインの立派な垂直尾翼は見事にP−40の主翼を貫通し、風穴を開けてしまいました。そればかりか、せっかく苦労して仕上げたスプリット・フラップのラインが反り返ってめちゃくちゃに.....
 さすがにこのときばかりは私も泣きそうになりました。ショックでこの後数ヶ月、制作はお休みになってしまいました。
 ちなみにシーラインの方は、P−40がクッション代わりとなったのか、全くの無傷。不幸中の幸いと言うべきか.....こちらは翌日予定通りフライトを行いました。

 さて、P−40はその後どうなったか? 何とか気を取り直して完成させました。
 ところで、私はこの機体を展示するときは必ずフラップを開いておきます。「実機も油圧が無くなると開くんだぜ」とかなんとかいって。 何故って? フラップを閉じてしまうと隙間ができ、後縁が反っているのがバレてしまうからですよ!

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5,花粉症じゃなかったの?

 さて、私はこのP−40を作り始めてから、実はずーっと体の具合が悪かったのです。鼻はグズグズ、目はショボショボ、ちょうど冬から春に向かっていたので、「これはきっと花粉症だ!」と思いこんでいました。
 パイロットにとってこれは大変なことなのですよ! 鼻から耳の通気が悪くなると、気圧の変化に対して極端に弱くなってしまい、無理をすると恐ろしい航空性中耳炎という病気になってしまうこともあります。実は、あまり症状がひどくてフライトを降ろしてもらったこともあったのです。しかし、花粉症では仕方ありません、気長に付き合って行くしかないなと思っていました。
 それがどうしたことでしょう、P−40の制作を中断して以来、全くこれらの症状が無くなったではありませんか。なぜ、なぜなんだ!
 やっと私は気がつきました。そう、

これは、瞬間接着剤アレルギーなんだ!

ということが.....

 そういえば、知り合いに聞いたことがあります。この臭いをかいだだけでショック症状を起こす人もいるそうです。皆さんも注意した方がいいですよ、風邪をひいたと思っていると、実は私と同じように瞬間アレルギーかもしれません。でも今や瞬間無しでR/C飛行機の制作など考えられないですね! いったいどうしたらよいのでしょう? 瞬間も種類によって刺激の少ないものがあるのでしょうか? 又、ほかに特殊マスクとかアレルギーを防ぐ方法はないのでしょうか?
 うーんこれは問題だ!

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6,P−40ついに初飛行!

 さて、制作を開始して2度目の冬が終わろうとしている頃、私はあの忌まわしい事件からも、瞬間アレルギーからも立ち直り、ついにP−40は一応の完成を見ることができました。

 初飛行は、岐阜ラジコンフライヤーズ(GRCF)飛行場にて行いました。
 エンジンは、以前EZバドライト・レーザーに搭載し、絶好調のOS FS91 Surpass 4サイクル、プロポは本機のために新調し十分に機能確認を行った、JR PCM10s(7サーボ使用)です。
 初飛行前にまずはタクシー試験。狭いトレッド、大きなタイヤで高い頭上げ姿勢のP−40は、いかにも離陸滑走が難しそうです。徐々に滑走速度を上げ、何回も飛行場を往復させているうち、意外な低速で「ふわり」と空中に浮かび上がってしまいました。私は一旦はパワーを絞ったものの、気を取り直してスロットル全開、機体は青空へ吸い込まれるように上昇していきました。
 意図していなかった浮揚で幕をあけた初飛行ですが、いつ飛行しても良い状態に調整してあったため、少しトリムをダウンに取っただけで全く安定した飛行でした。舵角も丁度良く操縦性も問題ありません。私は脚・フラップの作動を確かめた後、何回かローパスを行い、着陸。クラブ員の拍手と賞賛の声が聞こえてきました。
 その日は、機体に慣れるため3回の飛行を行いましたが、帰宅して整備点検を行った私は機体の状態を見て愕然とすることになるのです。やっと初飛行に成功したP−40の新たなる試練の始まりでした。
 時は1995年3月末、出場予定のスケール機大会のほぼ1ヶ月前のことでした。

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7,呪われた飛行機

 私は、初飛行に成功したP−40を持って、意気揚々と帰宅しました。ここしばらくはEZ機や人から譲ってもらった飛行機ばかりで、自分で作った飛行機の初飛行は本当に久しぶりだったのです。
 さて、初飛行の後は入念な整備点検を、という私の目に映ったものは、

  1. エルロン・サーボが外れかかっている!
     まったく、よく事故にならなかったものです。エルロン・サーボはテトラのL字金具を使って横置きに取り付けてありましたが、その金具が折り目で破断し、サーボがぶらぶらの状態でした。サーボを作動させてみると、円形運動するサーボホーンに対して、平行運動するプッシュロッドからサーボに無理な力が加わって、サーボが揺れていました。早速ロッドを調整し直しましたが、根本的な対策にならず、現在は下図のようにサーボ位置そのものを変更しています。


  2. マフラーがマウントから外れてぶらぶらに
     マフラーは、スタント機のチューンドパイプのように、スチールベルトで巻いてマウントにボルト止めしてありました。なんとこのベルトが切れてしまったのです。その辺に転がっていた柔らかい板を使っていたのがいけなかったのでしょう。ホームセンターでステンレス版を買ってきてベルトを作り直しました。しかしこの時、エキゾーストパイプにまでヒビが入っていたことをどうやら見逃してしまったらしいのです。
 これらの2点を修正するとともに各部の増し締めを行って、翌週再度のフライトに望みました。この時点では、まだまだ大会まで余裕と思っていました。

 翌週は、今にも雨が降り出しそうな空でした。P−40はその日も快調に離陸、ループ、ロール、スローフライトなど雰囲気たっぷりです。だんだん飛行機に慣れてきた私は、タッチ・アンド・ゴーを始めました。離着陸が決まらないとスケールフライトとは言えません。調子よく2回、3回、その時です、機体が浮揚直後に突然エンスト! 速度のなかったP−40はどうすることもできずに場内にハード・ランディング、脚を左右とも曲げてしまいました。
 これは調子に乗ってガス欠かと思ったのですが、なんとそうではありませんでした。フレキシブルのエキゾーストが根本でポッキリ折れて、マフラー・プレッシャーがかからない状態になっていました。ですから、エンコン・ハイで加速したとき、燃料が薄くなって止まったようです。マフラーも、脚も、家に帰らなければ修理できません。また、このエキゾーストのトラブルはこの後何度も再発する事になるのです。
 雨が降り出しました。これでは練習用のEZ機も飛ばすことができません。その日のフライトはP−40が1回で終わりとなりました。

 翌週はまた雨でした。ついに大会前日の土曜日になってしまいました。この日もまたまた雨です。止み間をぬって1度だけ飛ばすことができました。マフラーは大丈夫です。しかし、まだまだ調整不足の気がします。
 続くトラブル、回復しない天候。どうも呪われているような気がします。しかし、大会はいよいよ明日です。

 大会当日、雨も上がり、私は朝靄の中、仲間とともに会場に向かいました。調整不足の機体を抱えて大会に出場するのはどうも気が引けます。果たして.... 「大会は延期です」 という係員の声、聞けば、連日の雨でグランドコンディションが悪く、おまけに芝も刈れなかった、とのこと。大会は翌週に順延です。
 私は内心ほっとしました。そして、「これからうちの飛行場に行けば調整できる」と思い、その足で岐阜ラジコンフライヤーズ飛行場に向かいました。

 飛行場に着いた私は早速準備、燃料を入れ、引き込み脚のエアを入れ、エンジンをスタートして、いざ、TAKEOFF! さて、GEAR−UP!....と、なんと上がらないのです。右脚が! そんなはずはありません、先週まで一度もトラブルがなかったのです。
 機体を降ろして、よくよく考えました。どうも前日に行った整備が悪かったようです。私は、右脚が左に比べてわずかながら後方に傾いているのがずっと気になっていたのです。昨日はこれをなんとかしようと、脚を止めているビスにワッシャーを噛ませ、傾きを修正してきたのでした。どうやらこれにより、引き込み脚のボディーに無理な力が掛かり作動が渋くなっていたようです。昨日整備後の作動確認ではOKだったのにいったいどうしたことでしょう? ともかく大会直前には機体をいじらないことが鉄則です。今日、もし予定通り大会が行われていたら、きっと大恥をかくところだったのですから。

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8,スケール大会出場!

 第12回名古屋スタンドオフスケール大会、いよいよその大会当日になりました。
 悪天候で1週間延期された後の待ちに待った大会です。天候は風もなく快晴。4月にしては汗ばむほどの陽気でした。いつもの仲間や、年に1回、この大会でだけ顔を合わせる遠くの仲間。お互いの新作機の自慢話に花が咲きます。
 私は前年まで、機体審査のない「スポーツスケールの部」に出場していました。しかし今年は、このP−40を駆って「F4Cスケールの部」に挑戦です。まず午前中に地上審査、午後から飛行審査という順序です。
 地上審査は、FAI F4C競技規則にのっとり、厳密に行われました。 P−40は図面との比較ではかなり正確にそのプロポーションを再現していると高い評価を頂きましたが、その反面、表面処理・工作技術などの面で、厳しい指摘を頂きました。つまり....

「キットは良く出来てるけど、その作りがねぇー」
  ということです。ショック.... これはフライトの方で挽回しなくては!

午後になって、いよいよフライトの順番が回ってきました。先週、大会が順延になったおかげで、機体はいろいろな調整が滑り込みセーフ! 自信を持ってフライトに挑みました。本番ではこの自信が大切です。しかし、自信過剰になってはいけません。練習なり、調整なり、やるだけのことはやったんだという実績に裏打ちされた控えめな自信。これが本番での心の余裕を生むのです。さて、この「控えめな自信」をもって臨んだ飛行審査、うまくいくはずだったのですが、またもや予期しないことが起こってしまいました。
 スムーズに離陸したP−40は、90度右旋回、270度左旋回を行ってデッドパスへ、するとどうしたことでしょう、機体はどんどん右へ流れ、おまけにどんどん上昇を.... もうトリムをとっている暇もありません。なんとか手で押さえてスムーズな飛行を続けるのがやっとです。Pターン、水平8の字、.... なんとか飛行をやり終えました。しかし、私が望むところの、「低高度で背景を流しながらの華麗なフライト」とはほど遠いものとなってしまいました。その日の順位は.... まあ順位どころではありません。自分の納得のいくフライトが出来なかったのですから。
プッシュロッドの伸び  なぜこのようなことが起こったのでしょうか? 飛行前にトリムレバーは確認したはずです。誰かが送信機にいたずらしたのでしょうか? そうではありませんでした。後で判ったことですが、今までこの飛行機を飛ばしていたのは、曇りや小雨の涼しい日ばかりでした。しかし、大会当日は炎天下で、おまけに朝からの展示でしっかり飛行機は暖まっていました。この機体には、エレベーターとラダーに長いピアノ線のプッシュロッドが使ってありました。このロッドが暑さでだいぶ伸びていたのが原因でした。これではトリムも狂うわけです。普通は長いロッドは中間にバルサ棒を使うので伸びはあまり気になりませんが、珍しくキットの通り作った部分がこのような結果になろうとは。それ以来気温の変化には十分気を付けています。

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9,発奮!スケールアップ

 トラブル続きのP−40でしたが、なんとか無事に大会を終えることが出来ました。しかし何とも情けない結果です。自分の思うように飛ばせなかったばかりか、自分では結構良い出来と思っていた機体でしたが、審査員からはかなり手厳しい多くの指摘とともにアドバイスを頂きました。例えば、
  1. 全体の色合いが写真と全然違う。また、実機が飛んでいるときはもっとくすんで見えるはず。
  2. 表面がのっぺりして実機感がない。リベットが打ってない。
  3. 主尾翼端が実機より厚く、ナマクラである。実機はもっとシャープであるはず。
  4. 動翼のヒンジライン断面が再現されていない。

 などなど....
 これらは、普段の取り扱いを考慮して意図的に省略した部分もありますが、確かに出来の悪い部分があります。そこで次の3点に手を加えました。

  1. 全体の色合いを修正
     機体全体に薄い灰茶色を吹くという荒技に出ました。サラリーマンの宿命? 夜、部屋の蛍光灯の下で塗装した本機は、確かに昼間見ると全く色合いが違って見えました。これをオーバーコートすることで少しは修正しました。

  2. 錨打ちツール リベットを打つ
     本機には、パネルラインは引いてありましたが、リベットは再現していませんでした。(めんどくさかったのは事実)しかしこの際発奮! ン万個に及ぶリベットを打っていきました。別に重くなるわけでもないし。方法は、太字のボールペンのボールを抜き、その先をグラインダーで尖らせて、一つ一つ、コリコリと塗装表面にキズをつけていきました。1日にどのぐらい打ったでしょうか、機体全体にリベットを打ち終わるまで3ヶ月、我ながらよくやりました。塗装が柔らかい内なら簡単だったのでしょうが、すでに完成から2ヶ月以上たったウレタンの表面は結構堅く、つい力を入れすぎて穴がズボッと、ということが何度もありました。

  3. 脚の引き込み速度をゆっくりと!  これは自分でも当初から気になっていたことでした。前述のように、エア式の引き込み脚は、「ぱったん」と音が聞こえるほど激しく上下します。これを少しでも実機の作動速度に近づけるべく、良い方法がないか探した末採用したのがこの「Hydra Lock」なるシステムです。 Hydra Lock  
    図のように、エアのラインの途中にアキュムレータを入れ、エアの圧力をオイルの流れに変換します。オイルは粘性が高く、収縮しないので、ゆっくりとした作動でも確実に力が伝わる、というものです。UP側、DN側どちらか1方にこれを装備し、もう片方はエアでそのまま押す、というのが通常の使い方のようですが、どうしてもエア側からオイル側へ気泡が入ってしまうので、私はこれを両方のラインに装着しました。(エア抜きが大変でした。)
     このシステムにより、脚の上下は非常にゆっくりとなり、また、一旦UPした脚は少しぐらいGをかけても引き出されることはなくなりました。


 さて、がんばってスケールアップを施したP−40、スケール機でありながら扱い安さにも気を配り、トラブルフリーの良い飛行機! のはずだったのですが....

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10,トラブルがいっぱい!

 まったくあきれるほどです。このP−40は、過去連続3回まともに飛んだことがありません。いつも何かしらトラブルに見舞われるのです。出来の悪い息子ほど可愛いとはいうものの本当にこれはちょっと....
 それでは、これまで起こったいくつかのトラブルをまとめて紹介します。皆様のため、何かの参考になれば。

  1. フレキシブルのエキゾーストがたびたび折れる。
     初飛行直後に折れたフレキシブルエキゾースト(OS純正ですよ)、これは交換しても何度も折れてしまいました。その度にカウリング内は排気でベトベト。フレキの曲げかたを変えたり、マフラーの保持方法を変えてみても効果無く、途方に暮れていたところで、「はた」と思いついたのが右図の方法です。
     付属のマニホを2本組み合わせてマフラーを固定、その後ろにヘリ用のシリコン製サブマフラーをつけました。もっとも、このサブマフラーも排気の温度に耐えられず、2フライトで破れてしまい、現在は長い厚肉のシリコンパイプに付け替えています。

  2. プラグヒート用のコードが切れる。
     ある日突然、エンジンが始動しなくなる。何でかなーと思うと、プラグヒート用のコードが切れているのです。エキゾーストの割れといい、これといい、やはり振動の影響ですよね。地上で機体を保持している分には特に大きい振動とは感じないのですが。そう思っていたら、さらに大きなトラブルが待ちかまえていました。

  3. スピンナーが吹っ飛ぶ
     ある日エンジンを始動したらいやに振動が大きい。その直後、「バシッ」という音とともにスピンナーが前方に吹っ飛んできて腕を怪我してしまいました。プロペラがゆるんで飛んできたのではありません、スピンナーのみです。
     スピンナーは、トップフライトのP−40専用品で、4インチ(102mm)という大きなプラスチック製です。国産品と比べると、材質が非常に脆く、壊れたスピンナーにはバックプレート、プロペラの切り欠き部などいろいろな部分にクラックが入っていました。この時は、スピンナーをバックプレートにビス止めしている部分が壊れて飛び出してきたのでした。
     振動でクラックが入ったのか、はたまたクラックが入ってスピンナーが振れだし、振動が大きくなるのか、鶏と卵のようですが、いずれにしてもこのような大きなスピンナーは国産品にはありません。グラスクロスで補強し、だましだまし使っていましたが、効果が無く、ついにバックプレート裏全面にアルミ板(1mm)を貼ってしまいました。これでやっと心なしか振動が少なくなったような気がします。

  4. 脚が下がらない!
     HYDRA−LOCKなるシステムを使って、スケールライクな脚の作動を楽しんでいたP−40でしたが、思わぬトラブルに見舞われました。
     ある暑い日、飛行場へ着いた私はいつものように脚の作動点検をしました。すると、脚アップは良いのですが、ダウンにするとロックがかかる直前で止まってしまうのです。エアの圧力もよし、漏れもなし、これは暑さのせいでハイドロ油が膨張し、作動を妨げているのだろうと、私は配管を切り、少しだけハイドロ油を抜いてやりました。それでシステムは作動するようになったのです。が、
     着陸・接地したP−40は両足がふにゃっと後ろへ引き込み、顔面(サメの顔)制動!カウリング内は泥だらけとなってしまいました。
     さて、この原因が判明するにはしばらくかかりました。本機のエアのラインには、クイックディスコネクトという接続部品がありません。接続部からのエア漏れを懸念して、わざわざこれを使用しなくていいように設計したのです。当然、エアは抜けませんから、飛行後の本機の脚シリンダーには、常に圧力がかかり放しになっていました。ところで前述の通り、本機はハイドロ油でシリンダーを動かしていますが、なんと、このシリンダーはプラスティックで出来ていたのです!!。
    つまり、結論はこうです。オイルで変質し柔らかくなったシリンダーが、圧力でわずかに膨らんで変形し、脚ダウン操作時にオイルがUPライン側に漏れる。UP側ラインのオイル量はだんだん増えてついにはシリンダーの作動を妨げる、と。

     このトラブルは運悪く、クラブ飛行会の直前に起こりました。私はすぐにロバート社から新しい脚を送ってもらいましたが、残念ながら大会には間に合いませんでした。そして、送られてきた品物を見ると....
     例のプラスティックのシリンダーは、しっかりアルミ製に改良されていました。ああ、なんという....

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11,P−40その後

 私が初めて「まともに」作ったスケール機、カーチスP−40Eウォーホーク。本機は今までトラブルが多く、総飛行回数はせいぜい50回に達していないのではないかと思います。しかし、制作から2年半が経過し、そろそろ機体各部に反りや狂い、塗装の浮き、キズなどが目立ってきました。先日も、カウリングを止めているボルトのナットがポロポロと取れるのでエポキシで付けなおしてやりました。
 トラブル続きの....などと書いていますが、いくつもの難題を解決し、良い飛行機に仕上げていくのもなかなか楽しいものです。まさに、「出来の悪い息子ほどかわいい」状態です。また、本機で大会に出場すると、必ずと言っていいほどいろいろな方に質問責めに遭います。みんな、お互いの飛行機の自慢話や苦労話、情報交換が楽しいのです。

  
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