ローハセル・スキンの修理手順
by シゲちゃん 2009.4.6
バルサリブ組や発泡コアと違い、シャーレ構造の主翼はいざ破損したときはどうやって直そうか悩みますね。 ましてや、極限まで軽く作られているハンドランチグライダーなどではなおさら・・・・・ 重量を増さず、元の翼型をなるべく正確に再現するために、シゲちゃんがテクニックを公開してくれました。 この機体はローハセル・シャーレ構造の主翼を持つハンドランチ・グライダー、ブラスター2です。 やっとこぎつけた初飛行のその日、サーマルを狙って集中した他機と空中衝突させ破損してしまいました。 前縁から主翼のスパーまで上下の主翼の表面;スキン(ローハセル・シャーレでできています)が共に大きく裂けました。 スキンの構造は、表面は薄いFRPで出来ていて着色されています。そのすぐ内側が1mm以下の厚さの発泡プラスチック(この素材をローハセルと呼ぶと聞きました)一番内側にプラスチック製?の薄い不織布が貼ってあります。 で、考え抜いた挙句、段取りは、主翼下面のスキンを大きく切り取って、主翼上面のスキンを極力精度良く再生し、その後に前縁を補修して、最後に主翼下面のスキンを被せることに決めました。 まず主翼上面の再生ですが、用意したものは、5×10角材、セロテープ、30分硬化型エポキシ接着剤、割り箸の先を平らに尖らせた手製のヘラ、とPET製のカードケース(B5サイズ、硬質タイプ、KOKUYO製);このプラスチックシートの選択が、今回の補修の肝です。 PETシートは、接着剤から容易に剥がれます。 この製品を切り出して得たPETシートは、厚さが適当でほどほどに剛性があります。 主翼上面の裂けたスキンの双方を根気良く突合せし直し、写真のようにPETシートの四隅をセロテープで密着させました。その上からPETシートの巾にセロテープで押さえられる長さのを3本の角材を当てます。 次に主翼上面のスキンの内側の作業として、必要最小限のエポキシ接着剤で裂け目の突き合せ部分に塗り込み、その上から10×15程度に切ったマイクログラスを少し重ねながら裂け目全体を被って行きます。この時に接着剤はマイクログラス全体に浸透させません。裂け目を再生する必要最小限としマイクログラスの面積の約5割以上は接着剤が浸透していません。ごてごてと塗りつけるのを避けるためです。後で塗り足します。その上から必要な大きさに切り取ったPETシートを当て、さらに角材を当てて、スキンの表、裏からシャコ万で押さえておきます。 硬化後にセロテープ、PETシートを外した状態の写真です。 主翼上面のスキン表面の仕上がりです。接着剤が塗ってないので裂け目が残っています。 そこで主翼上面の仕上げに、裂け目に必要最小限のエポキシ接着剤をヘラで塗ったのち、セロテープで上から押さえ、接着剤が柔らかいうちに極力平面を出すようにセロテープの上から爪、ヘラなどで伸ばして置き、あとは放置します。 主翼上面のスキンの内側は、先の説明の通りエポキシ接着剤は塗り足りない状況なので、次に行う前縁の補修とともに塗り足します。 前縁は、砕けたローハセルを出来る限り上手く突きあわせた状態として外側からセロテープを密着させます。このセロテープが新たな前縁のカーブを作ります。新たに作る前縁のカーブは、両サイドにある元の前縁のカーブに合わせるために、角材を当てて押えておきます。 前縁の補修が終わって、最後に主翼下面のスキンの貼り付けで完了します。 最初に切り取った主翼下面をそのまま蓋しようとしても、作業時に陥没するのが目に見えています。 そこで、以下のような段取りをしました。ポイントは、蓋が内側に陥没しないように内側に桁を渡すアイデアです。2×3×必要な長さ、のバルサ材を今回は3本用意しました。 当然、これらも中に陥没して接着されては役立たずなので、バルサの桁材は接着剤が硬化の最中は外から引っ張りあげた状態に保つように工夫しました。 さらに、ただ桁を内側から通しただけで蓋を接着しては、蓋の周囲の突合せ面だけでは十分な強度がないので、主翼上面と同様にマイクログラスで裏打ちすることとして、以下順に説明します。 まず、マイクログラスを先に主翼下面のスキン内側に貼りますが、マイクログラスを貼り終えたときに、スキンの裂け目にまで接着剤が及んで硬化してしまっては後で蓋をする際に削り取って形を整えるという余分な作業が増えてしまいます。 そこで、接着剤を塗る専用のスティック・ヘラを考えました。 針金を曲げて作ってあります。 これでスキンの裂け目よりも奥の裏側だけ接着剤が塗れて、蓋をするときに、蓋と主翼本体のそれぞれの裂け目が素材の柔らかさが保ててしっくりと接着できます。 マイクログラスを内側から接着剤で塗り付けた状態です。まだ接着剤は硬化していません。 次に、バルサの桁を中に入れて裂け目に渡し、外から引っ張って固定します。セロテープが活躍しました。←これ、結構賢いかも。 バルサの桁は予め、それぞれセロテープが巻きつけておきます。 セロテープは、桁を中に入れたのち割り箸に残った端を引っ張りながら巻きつけます。 割り箸は、修理している開口部の両端にセロテープで留めた2本の角材の上に置く形になります。 引っ張り具合の調整は、2本の角材と割り箸の間に、桁用として切り出した残りのバルサ端材を指で適当に潰して差込みテンションを調整しました。 硬化後の様子です。スパーに近い1本がゆがんでしまっています。外から見えないからまあいいっか、って、後で太陽に透かしてみたらしっかりと見えていました。 これで、蓋をする準備が整いました。 蓋の周囲、バルサ桁材の部分にエポキシ接着剤を薄くぬって蓋をします。 蓋をした後、ヘラを使って主翼上面の仕上げの時と同じように作業をします。ただ、今回は、事前に裂け目の癖で盛り上がっている部分を整えてありません。盛り上がりの部分は、接着剤を裂け目の窪みに塗ったあと、セロテープを使って平面を出す努力をします。爪、ヘラで極力平面となるようにしごいて、妥協?ができたら上から角材を充てセロテープを使って主翼下面に押さえておきます。 硬化後、セロテープを剥がして完成です。
前縁から主翼のスパーまで上下の主翼の表面;スキン(ローハセル・シャーレでできています)が共に大きく裂けました。 スキンの構造は、表面は薄いFRPで出来ていて着色されています。そのすぐ内側が1mm以下の厚さの発泡プラスチック(この素材をローハセルと呼ぶと聞きました)一番内側にプラスチック製?の薄い不織布が貼ってあります。
で、考え抜いた挙句、段取りは、主翼下面のスキンを大きく切り取って、主翼上面のスキンを極力精度良く再生し、その後に前縁を補修して、最後に主翼下面のスキンを被せることに決めました。
主翼上面の裂けたスキンの双方を根気良く突合せし直し、写真のようにPETシートの四隅をセロテープで密着させました。その上からPETシートの巾にセロテープで押さえられる長さのを3本の角材を当てます。
硬化後にセロテープ、PETシートを外した状態の写真です。 主翼上面のスキン表面の仕上がりです。接着剤が塗ってないので裂け目が残っています。
ポイントは、蓋が内側に陥没しないように内側に桁を渡すアイデアです。2×3×必要な長さ、のバルサ材を今回は3本用意しました。 当然、これらも中に陥没して接着されては役立たずなので、バルサの桁材は接着剤が硬化の最中は外から引っ張りあげた状態に保つように工夫しました。 さらに、ただ桁を内側から通しただけで蓋を接着しては、蓋の周囲の突合せ面だけでは十分な強度がないので、主翼上面と同様にマイクログラスで裏打ちすることとして、以下順に説明します。
引っ張り具合の調整は、2本の角材と割り箸の間に、桁用として切り出した残りのバルサ端材を指で適当に潰して差込みテンションを調整しました。
これで、蓋をする準備が整いました。
硬化後、セロテープを剥がして完成です。
本ページの記事は画像も含め、シゲちゃんにご提供いただきました。