彼のSEXは、ひょっとしたらそれほど上手いものではなかったかもしれない。
でも私にとって今までのどのSEXよりも良かった、最も今までの私は人形でしかなかったから感じる事なんて無かったのだけれども・・・。
今度も彼が果てる前に一人イッてしまった・・・・彼は私がイク時、ずっと手を握ってくれていてイッた後も優しく抱いてくれていた・・・・
私は彼に"愛を与えてあげよう"なんて思っていたけど、今は違う、私は彼のことを愛してしまった。そして彼から愛されたいと思っている…そう、それも狂おしいほどに

"愛されたいのだ"・・・・長い間忘れていた感情だった・・・。
"私は彼を失いたくない!!明日、目が覚めたら全てを話そう"

ガンガンガン!!ドアを誰かが激しく叩いている・・・・

「開いてるよ!!」と叫ぶ、

しかしすぐに気が付いた"オレは2階のベッドで寝ていて隣りには彼女がいる。
そう、昨夜はちゃんとカギを掛けたんだっけ"

「開いてないぞ!!」客が怒鳴る・・・・

"どッかで聞いた声だ"ボーッとした頭でオレはジーンズを履きながら1階に降りた。
ドアを開けると眼光の鋭いひょろっとした男が立っていた、橋本眞治、この男同業者なのだが、メインの仕事は企業等に仕掛けられた盗聴機を発見して除去する仕事を請け負っている。どんなプロでも見付けられない物を易々と見付けるもんだから、仲間内からは"どうせ自分で仕掛けて自分で見付けているのさ"なんて、やっかみとも付かない噂が絶えない男だが、ひょっとしたらこいつも何か特別な能力を持ってるんじゃぁないか?
と、彼女を知ったオレは思った。

「どうしたんだ、まだ…えーと、6時だぜ?」 
「おい、川崎、オマエちょっと表に出ろ!!」

"なにぃ!?"
オレは奴のむなぐらを掴みかけたが、奴の真剣な眼差しを見て奴に従った。
事務所から50メートルほど歩いただろうか、橋本は足を止め、オレに向き返った

「これぐらいでいいだろう、ところで川崎よぉ、オマエなんか厄介な事に足突っ込んでねえだろうなぁ?」
「何の事だ、いきなり?」 
「実はオマエの事務所から電波が出てる。」

"はぁ???"オレが喋る前に奴は続けた、

「すごく微弱な電波だ、それもあまり一般の無線では使われない周波数帯を使っている、
こんなの使うなんて相手はプロだぜ・・・・心当たりはねぇのか?おい川崎、何か厄介事
に心当たりはねぇのかって聞いてんだよ!」

オレはまだ完全に覚醒していない頭の中で考えを巡らせる、"誰が?一体何の為に?"すると後ろで声がした・・・・・

「奴よ、あなたの依頼人・・・・。」

"そうか、あいつ自分が女を抱く事が出来ないから・・・"下世話な考えが頭に浮かんだ、
だが彼女の顔を見るとどうもそうじゃないらしい。

「話があるの、大事な…。」
「おっと、どうしたの?川崎ちゃん、こんなキレイなお嬢さん、彼女?一体どうしちゃった
の?まあ、お邪魔してもなんだし・・・・失礼するわ、じゃあね、お嬢さん!」

橋本は自分の車に戻りかけて、振り返って言った

「川崎ぃ、用心しろよ。」
「ありがとう」オレは答えた、

橋本は向こうに向って歩きながら手だけをふって返事をした。

"で、大事な話ってのはなんだ?"

私は彼に全てを話した。私には人の心を読む能力があるということ(もちろん彼は気付いていた)、その能力のおかげで両親が私に対して愛情を注がなくなった事、誰からも気味悪がられ愛される事無く育った事、そして仕事を転々として1年前に成田と繋がりを持ったこと・・・・・・・でも本当に話さないといけないのはここからだった。

「ところで、なんで成田なんかと?奴が風俗に通うなんて考えられないんだが・・・。」

オレはずっと引っ掛かっていた事を聞いてみた。

「奴は私と同じなの・・・・・それでなぜかお互い、引き合ったんだと思う・・・。」

彼女はゆっくりと奴との出会いから語り始めた。

「・・・・で、奴と私は同じだから、わたしは初めて私を受け入れてくれる人だって、とて
も嬉しかったわ、やっと自分がいてもいい場所が見付かった、って、でも彼は私にとんで
もない物を求めだしたの・・・・。」 
「それは一体なんだったんだい?」

オレは出来るだけ優しく、聞き役に回った。

「私、猫を飼っていたのよ、子猫・・・公園に捨てられていたのを拾ってきたんだけど、
その子猫がね、何か分からないけど病気を持ってたらしいの・・・・・」

彼女は子供のように語っていた、悲しみが彼女の言葉に滲み出ていた。

「で、その子猫が死ぬ時、奴は私を屋敷に呼びつけて、もちろん子猫も一緒によ、そして
私と奴の目の前で子猫は死んだの・・・・・最初は奴が私を慰めてくれる為に呼んだんだ
と思っていたわ、でも違ったの・・・・・・・奴は悲しんで、苦しんでいる私の心を味わ
ったの・・・そして、その恍惚とした心を読みとって怯える私の心も・・・・それはきっ
と奴がそれまで経験した事のどれよりもエクスタシーを奴に与える経験だったみたいな
の・・・そしてそれはもっと酷い事にエスカレートしたの・・・・。」
「一体どんな事をされたんだい?」

オレはだんだんと湧きあがってくる怒りを押さえて聞いた。

「それで、彼は私に色々な物、感情を移入できるような物を与えて私の目の前でそれを壊す
の、そしてその時の私の心の嗚咽を食らい続けて・・・・・」

彼女の声は震えていた、でも、彼女は話さなきゃならないし、オレは聞かなきゃならない。

「奴は私に、ついには男を与えたわ、別に好きじゃなくてもしばらく一緒にいて優しくされ
れば情ぐらい湧く、そしてその頃合を見て奴は・・・・男を捕らえるの・・・・・」

????なんだ?このなんとも言えない感じは?
彼女は続けた。

「そしてその男を私の目の前で痛めつけるの・・・・」
"なに!?"
「おい、それじゃぁ・・・・なんで今までそんな事が明るみに出なかったんだ?」

だんだんオレの怒りは押さえられなくなって来ていた。

「奴が私に与えるのは天蓋孤独な男、いなくなっても誰も不思議に思わないし、
最後には喋る事なんて出来なくなるから・・・・・」

最後の方は消え入るような声だった。

「殺すんだな、君の目の前で。」

オレは念を押した、彼女は黙ってうなづく・・・・
そして

「痛めつけられているとね、私を罵るでしょう、心の底から。そして私に恨みを投げつけて
苦しんで・・死んでいくの・・・・その感覚が私の心に入ってきて・・・・苦しんでいる
私の心を食らうようになったの・・・。」
「クソッ!!」

オレは毒づいていた、もう感情を押さえる事は出来なかった。

続く