オレは考えた、奴と彼女をどうしたら引き離す事ができるのか?殴り込む?
いやいや、そんな事をしても意味はない、ガキどうしの女の取り合いじゃないんだ。
それにあの佐藤とか言う男、奴には唯ならない物を感じる・・・・・・
しばらくして考えて、オレは彼女に言った。

「この街を出よう。」

「おう川崎、どうだった?何か分かったか?」

オレは彼女を連れて橋本の事務所に来ていた。

「あらあら、今朝のお嬢さんまで・・・。」 

オレは話し出した。

「おまえの言うとおり、少々ややこしい事になってる。」 
「それで?」と橋本。
「どうやら例の盗聴機、あれを仕掛けたのはオレの依頼人で、彼女がその調査対象だ。」 
「と言うと、浮気調査かなんかの依頼で、お前がその浮気相手になっちまったってわけか?」
 「まあ、簡単に言えばそう言う事だ。」オレは答えた。
「で、依頼人ってのはどんな奴だ?」

オレは最初に依頼人の屋敷を訪れた時に撮影しておいた写真を橋本の前に置いた。

「こいつだ、成田栄一、62歳、山の手の屋敷にはっきりといつからかは分からないが住ん
でる。」
「ふ―ん、スマンなぁ、俺は山の手には縁がねぇから、知らねえわ・・・でも一体どうした
んだよ川崎ぃ、お前が調査対象に手ぇ出すなんてなぁ・・おっとゴメンよ、お嬢さん。」

橋本は彼女の方を向きニコっと笑って続けた、

「で、どうすんだよ、話でも付けに行くのか?」 
「いや、逃げる・・・。」 
「おいおい、相手は唯の金持ちのおっさんだろうが、なにもそこまでしなくても。」 
「いや、オレもそう思ったんだがちょっと裏がありそうなんだ、この依頼人、それにこいつ、
依頼人のボディガードなんだが・・・。」

橋本はオレの手から写真を一枚もぎ取るようにして言った。

「おい!!こいつは・・・・。」
"えっ?"「佐藤を知ってるのか?」 
「知ってるもなにも、こいつは佐藤なんて名前じゃねえよ、まあ、最も本名なんて知らねえ
けどよ、まあ国籍だって何処か分からんぜ、こいつは。」 

オレは橋本にくらい付きながら

「一体何者なんだ、こいつは!なんでお前が知ってるんだ?」

と捲くし立てた。

「まあまあ落ち着けよ、川崎ぃ・・・・お前、オレの噂知ってるよなぁ・・・"自作自演"
の話じゃないぜ、オレが"どっかの国のエージェント"って言う噂だが・・・。」 
「ああ、あの噂な・・・・・まさか、本当だったのか?」 
「そんなに驚くなよ、この国って平和ボケしてるだろ、オレみたいなイリーガルはいくらで
もいるぜ、ただの情報屋からヤバイ仕事をこなす奴まで・・・ほら、あのTVに出てる
デーヴなんとかって奴、クダラナイ駄洒落ばっかり飛ばしてる奴よ、あいつもそうだって
話だぜ。」

橋本は続ける、

「その中でも、お前が佐藤って思ってるそいつな、飛び切りヤバイ仕事をこなす輩だ。」

オレは気分を落ち着かせながら聞いた、

「で、そいつは一体どんな仕事を?」 
「まあ、オレみたいなのは単純な情報屋だ、餅は餅屋って奴よ、まあ多少非合法的に情報を
入手したりはしているがな・・・・・それでオレ達の情報から色々作戦が立てられる
、そしていくつかの段階を経て奴ら、その"佐藤"な、そいつらが実行部隊として動くの
さ、で、普通は始まりと終りだ、仕事がオーバーラップする事はない、でもな、数年前、
緊急を要する仕事が舞い込んだ、そのときに出くわしたんだ。」 
「で、奴は何をしたんだ?」 
「おいおい、国家機密だぜ・・・・まあいい、お前なら心配はいらねぇよな、実際に奴がど
んな仕事をしたのかは分からない、まあその仕事のターゲットは"とある"社会主義国家
のトップだったんだがな・・・・」 
「えっ!?でもまだ生きてるぜ??」

オレは何が何だか分からなくなって聞いた。

「だから分からないって言ってるのさ、まあ、生きてるってのも表向きなのか、本当の事
なのか分からんが、あの国のリーダー、ポーっとしてるだろ、そのおかげで戦争、まあ他
の国を巻き込んだ自滅劇だが、回避できたって話さ・・・・・・、まあ、お前の出した結
論は正しいって事になるわな・・・・・で、逃げるったってお前・・・・」 
「いや、できれば車を借りたいと思ってね。」
「そうだな、お前の117じゃしばらく逃げるって訳にはいかないわな、この車を使え、
オレの車だ、もちろん盗聴機無しだ。」

橋本は笑いながらキーを差し出した。

「裏に停めてあるランドローバーだ、この車なら寝泊りもできるしな、でもヘンな事には
使わんでくれよ、な?お嬢さん♪」

車を借りて、オレは事務所に戻った。身支度をしに・・・・・しかしよくよく考えてみれ
ばこの先必要になりそうなものは着替えぐらいなもんだった。
オレは手に取った写真立てを机にふせた・・・・・・・・・・。

"さあ出発だ。"

「支度にはどれくらい掛かる?」彼は私に聞いた。
「今すぐにでも」

そう、橋本って人から聞いた佐藤の話・・・確かにあの男、奇妙だった、心が全く"無"
なのだ、全く見えないのだ・・・・・とにかくこの街から私達は早く立ち去りたかった。

「よし、じゃあ行こう。」

私達は深緑色の4輪駆動車に乗った。

車が街外れに差し掛かった時、ふと思いついたように彼女は言った。

「ねェ、どこまで行くの?」 
「うん、とりあえず西に向う。」 
「ふ―ん、そこにも、ねぇ、ふ・う・せ・ん、売ってるかなぁ?」
「えっ?売ってるんじゃないかな・・・多分。」
「多分じゃぁダメ、ねェ、停めて。」

彼女は車を降りると小さな店に走って行った、閉店間際のBalloonShopだった。

「ごめんなさい、まだいいかしら?」
「ああ、昨日の、どうぞお入りください」

"パァン!!"

「キャッ!!」
「あっ、ごめんなさいビックリさせて、実は明日からディスプレイを変えるので、片付けて
いるところなんです。」
「全部割っちゃうの?かわいそう・・」

店の女の子はニコッと微笑み

「宜しかったら差し上げますよ♪
明日からクリスマス用の風船と取り替えないといけないんです、お車ですか?」
「うん!」

私は子供のように喜んでいた。

なかなか彼女は店に入ったきり出てこない、どうしたんだろうと店の方を見ると、店のドアが開き、色とりどりの風船を持った女の子が出てきてこちらに向ってくる。

「この車なら全部入るわね♪ケイちゃ―ん!みんな持ってきて!!」
「はーい」

店の中から声がした、さっき来た女の子はニコッと微笑むと

「失礼します♪」

と言って車の後部座席に持ってきた風船を詰め込み始めた。
その後、店の中からまた女の子(ケイちゃん?)がまた風船を積め込む、程なくランドローバーの中は風船でぎっしりになった。
彼女が戻ってきた、嬉しそうに昨日持っていた紙袋の何倍もある袋を胸に抱えて。

「一体どうしたの?この風船。」

オレは後ろを振り返りながら聞いた。

「うん、いいでしょ?助けてあげたの♪」

「なんかね、明日からディスプレイを変えるって、全部割っちゃうなんて言ってたから、
助けてあげたの♪」

こんな説明、普通の人が聞いたら"何言ってるの?"ってなっちゃうんだろうけど、元々こんな考えは、私が彼の心に触れたから生まれた感情だ、すぐに彼は理解してくれた。

「でもね、あの店の女の子、可愛かったでしょう?それでね、あんな女の子2人がお店の中
で風船、割ってたんだよ、あなたが見てたらきっと興奮してたに違いないわ♪」

私はいじわるに言ってみた。

「ばか言え!!」

彼はアクセルを強く踏みこんだ。

街を出て一次間ほど走ると人通りの全くない田舎道に差し掛かった。
私は後ろから、さっき貰った風船を一つ前に出した。

「キュゥウ」

シートに擦れて風船が鳴く、昨日ふくらませたばかりだと言っていたけど心なしか、あまりいっぱいまでは膨らんでいなかった。
私は風船の口を解いて

「こんなんじゃ嫌でしょ?もっと大きくしてあげるね♪」

と言って、風船をもっと大きくする為に、息を吹き込んだ、
昨日遊んだどの風船よりも大きくなって、透明度の増した風船は今にも割れそうなくらい張り詰めていた。
"運転してると危ないな"

「ねえ、停めて。」と彼に言った。

"ちょっとこの風船、大きすぎるな"

私は風船で彼を攻めながら考えた、

"だってこんなに大きいとシテる時に2人で挟めないわ"

私は彼の興奮を持続させる為に風船を彼自身に擦り付けながら、さっき買ってきたちょっと小さめの風船を袋から取り出した、その風船は彼が大好きな風船に比べたらかなり小ぶりだったけど、ぎりぎりまで膨らませると結構な大きさになった。そしてもう一つ……。
彼はもう準備が出来ていた、もちろん私も言うまでもなく……。
大きな風船はもうベタベタになっていた、その風船を彼の目をじっと見つめながら舐め、そして彼自身へと唇を移した。
(この仕草が彼を一層興奮させるようだった)
例によって、彼はもうはちきれんばかりになっていて、私も我慢できなくなって、自ら私の中に彼を導き入れた。
小さ目の風船を二つ間に挟んで、ゆっくりと腰をグラインドさせた。
彼の動きとちょうどカウンターになるように…より深くストロークする。
二人の間の風船が"キュゥー"と鳴く、その鳴き声を聞くたびにどんどんと上り詰めて行く、この風船が割れそうなスリルがたまらなかった。
だんだんと動きが速くなる

「あぁん!われちゃう!!」

もっと動きが速くなる。

"パァン!!"

一つ割れてしまった、私は大きい風船を手繰り寄せようとして風船に手を掛けたが、その時の突き上げに絶えられなくなって、風船に爪を立ててしまい、割ると同時にイってしまった。
頭の中が真っ白になり、からだが自分の意思とは関係無しに"ビクビク"っと痙攣する。
力が抜け、彼の身体に自分の身体を任せる、その時残っていた風船が割れてしまったが何も感じなかった。
感じる事が出来たのは私の鼓動と彼の鼓動、それと私の髪を撫でる彼の優しい手だけだった。

彼女はまるで感電でもしたかのように身体をビクビクと痙攣させて力尽きた、余韻を楽しんでいるのか、しばらく何も喋らない、このまましばらくそっとしておいてやろう。
"男は損だな"ふとそんな考えがよぎる、その時彼女が現実に戻ってきたようだった、

「あふん、どうしたの?よくなかった?」

目がまだ虚ろだ、ボーっとしているみたいだった。
「すごくよかったよ」

オレは彼女にキスをする。

「ウソ、だって今"損だな"って思ったでしょう。」
「ああ、それはね、男ってのは終っちまうと即現実に引き戻されるんだよ、どんなに興奮し
ていても、ス―っと冷めてしまうんだ、だから余韻を楽しめない。
オレだけかもしれないけどね。」
「ふ―ン、そうなんだ。」

彼女はちょっと残念そうな顔をしたが、すぐに

「でも終った後、髪を撫でていてくれたでしょう、あれ、わたしすごくスキ…ありがとう。」
「どういたしまして。」オレは答えた。
「でも大変だよ。」
「何が?」とオレ。
「だって今遊んだのみっつだけだよ、こんなにいっぱい…だいじょうぶ?」
「えっ!?」

まいった、確かに"だいじょうぶじゃない"

オレ達は何度も互いを求め合い、最後の風船が割れたときには辺りはすっかり明るくなっていた。
彼女はとなりで眠りにつこうとしている、オレも眠たかったがあんまりここにじっとしていても仕方が無い。
とにかくオレは車を西へと走らせた。

目が覚めると太陽が高い所にあった
"太陽が黄色く見えるなんて聞いた事があるけど、ウソだな…でもひょっとしたら私の体力の回復って早いのかな?…"

「どこに行くの?」
「ああ、起きたかい、おはよう、って言ってももうお昼だけどね、お腹はすいてない?」
「うん、ペコペコ♪」
「よし、じゃあメシにしよう。」

私達は通りに面したドライヴインに入った、食事が運ばれ、私は恥じらいもなくパク付いた。
"性欲の後は食欲よね♪"自分でもおかしかった。

「で、さっきの話なんだけど…。」
「さっきの話?なんだったかな?」
「うん、私達これからどこへ行くの?」

あえて"これからどうなるの?"とは聞かなかった。

続く