トラップ

by Balloon Taster

俺には顔を向けず、冷ややかな目でブーケを見て言う。
「今のあなたの心の中にはあの子しかいない。」
「・・・」
「あの子は、家の事情と言っていたけど1年で大学を辞め郷里に帰った。私たちがつきあい始め、私があなたに心を開いてからも、あなたはあの子の事を忘れられずに、風船をあの子に見立てて愛していると分かった時、これまでにない屈辱を感じたわ。あなたと、あなたに愛された風船が憎い。」
半分ほどに数が減ってしまった風船の中からさらに一つを引きずりおろすと、結び目のところを手に持ち俺に差し出して言う。
「これで・・・、どういうふうにあの子を愛していたのか、私の見ている前でやってみて?」
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カーテンを閉め、部屋の明かりを暗くし、ベッドに両膝をつき、足のつま先を立てて座る。16インチは丁度良いサイズだ。両手で抱き体に押しつけたあと、軽く上から覆い被さり、浮かぼうとする感触を腹で確かめる。そして、腿の間にはさみ、一番やわらかい部分・・・真ん中とネックの中間の部分・・・俺のものをグッ、と押しつけ、進めていくと、ある程度のところで中の圧力と押しつける力が釣り合う。数回繰り返し、力を緩め、表面の汚れを軽く拭き取り、今度は体全体・・・胸、腹、腿で押しつぶしていく。体が風船に透き通る。ゆっくりバウンドを繰り返すと、ギュイ、ギュイ、・・・と風船がつぶされ、ネックが伸びる音が聞こえる。目を閉じ、「この風船、私が割るのですか?」あの声、困ったような表情を脳裏に浮かべ、段々と激しくバウンドさせていく。ギュン、ギュン・・・さらにネックが伸び、沈みこみが大きくなる。最後に思い切り体を持ち上げて沈み込ませる。ボン!・・・体がベッドに落ち、脳裏の珠美が弾け、飛び散る。
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俺は頭を強く振って言う。
「・・・すまなかった。その通りだよ。謝る。もう止める。」
「いやに素直じゃない?でも、そんな簡単にあなたを許さないし、その言葉も信じられないわ。・・・こんな風船、あなたに愛された同じこの部屋で、私の手で一つ残らず割ってやるわ!」
酷薄な表情で、怜子は両手で風船をつかみ、ギュゥゥ・・・と強く爪を突き立てる。パープルに透き通った風船に指が食い込んでいき、醜く歪む。

「確かに君を裏切ったことをしてすまなかった。・・・でも、君と一緒にいると嬉しいのは確かだよ。」
「うそ・・・。」
「・・・これからは、君のことをもっともっと好きになるよう、一緒に居る時間を増やしたいと思うんだ。だから、許してほしい。」
「・・・本当に?」
強く曲がった怜子の指の力が段々と抜けてゆく。

「どうして私とつき合い始めたの?あの子が居なくなって寂しくなったの?」
「・・・それとは別だよ。」
「私はあの子の代わりなのじゃない?・・・」
「そんなことは絶対にないよ。」
「・・・じゃあこれからは、二度と私を裏切らないと約束して。」
「約束するよ。」
「・・・わかった。あなたを信じるわ。・・・あなたに私の醜いところを見せてしまって、ごめんなさい・・・。許してくれる?」
「もちろん。」
「よかった・・・。」

少し時間が経ってから、思いついたように、バックを手に
「ちょっと、バスルーム借りていいかしら?そして、風船はずしてくる・・・」
怜子はしばらくして出てくると、残った風船を手に、あの青い水着姿で俺の前に立つ。
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 ベッドに横になるが眠れず、何度も寝返りをうつ。体が暑く、タオルケットをはねのける。ジムで会った、あの青い水着姿の怜子がまだ脳裏から離れない。・・・俺はたまらず体を起こし、膨らませて床に転がしておいた16インチの風船を拾い上げる。いつものように上から何度も押しつぶす。ボン!俺の体が落ちる。腰骨の周りに高まる快感。24インチをベッドの上に置く。その大きさと内圧を感じながら上に乗ってみて数回バウンドする。それを繰り返しているうちに更に気持ちがたかぶっていく。バスルームに持って入り、壁のタイルと体の間に挟み、水着姿の怜子を脳裏に浮かべてバウンドしていると、体の中で圧が高まってゆく。激しくバウンドを繰り返しているうち、もう耐えられなくり体を離す。風船はゆっくり床に落ち、小さくバウンドする。「バッ、ドッ、ドド・・・」雨粒が屋根を叩くような音や太鼓のような音が響く。サファイアブルーの風船に白い体液が飛び散り、粘度の高い液体は表面を伝い、流れ落ちる。その重みで風船はゆっくり向きをかえる。怜子の目の覚めるようなブルーの水着を汚す快感。
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怜子は俺の手を引いてベッドに誘い、もう片方の手に持った風船の束を天井に解き放つ。

「もし仲直りできたら、あなたに聞いてみたいこともあったの。風船って、あなたにとって特別なもののようだから。」
「・・・何?」
「ジムのプールで会った時、私を見て海坊主、なんて言ったけど、あの時、私を見て・・・」
ゆっくりと俺を寝かせ、切れ長の目で俺の顔をのぞき込む。長身の躰を俺に沿わせ、張りのある胸を俺に押しつけると、耳元でささやく。
「・・・青い大きな風船、汚したり割ったりしてみたい・・・って、思ってくれた?」

・・・体の中が熱くなってくるのを感じる。
「競泳水着って、水を撥く繊維でできているの。触るとゴムみたいな感じがするものもあるの。」
怜子は俺の手をとり水着の胸に押しつける。怜子の躰に張り付く薄い布地の感触と、胸の膨らみの弾力を感じる。
「・・・今なら、この風船、あなたの好きなようにできるわよ?」
言葉で俺を弄び、ベッドの上に浮かぶ風船を見上げ、
「・・・あれを全部カラダで割ったら、ご褒美に私を割ってくれるのかしら?」
やはり聞いていたのか・・・。その一言で今日のすべての出来事が一つに結びついた。
「・・・あの教室での一件から、デリバリー、何かの筋書き通り、とうとうここまで来てしまったような気がするな。・・・」
「でも、あなたが今日まで私を裏切ってきたことも間違いないし、自業自得かも知れないわね。」
身を起こし怜子を押さえ俺の下に組み伏せる。

俺達は激しく愛し合い、濡れている水着をずらし、怜子の躰の中に深く入っていく。怜子を下に据え、引き締まったウエストの下を両手で押さえ、グングン突き上げる。親指が怜子の腹に食い込む。水着の胸の膨らみに突起が二つ透けて浮かび、突き上げるたびに胸が大きく上下に揺れる。浮き上がった突起を指で弄ぶと、怜子は首を激しく左右に振る。

体を入れかえ、俺の上で腰を振る怜子を見上げる。束ねられた風船が、エアコンの風でそれぞれ勝手に小さく左右に揺れる。激しくバウンドを繰り返しながら、怜子は乱暴に風船の束を引き下ろし、手当たり次第に自分の胸や俺の腹に押しつけ、ボン・・・、ボン・・・、次々と割っていく。水滴型で透明感の強いさまざまな色の風船が、彼女の餌食となって一瞬のうちにゴム片と化し、飛び散っていく。破片のぶら下がったリボンが腕にからみつく。怜子は動きを止め、風船を二人の間に挟み躰をもたせかける。俺の体に怜子の圧力が伝わり、つぶれた胸の脹らみがゴムに透ける。俺は両手で水着の上から二つの突起を刺激してやる。怜子は躰をよじって激しく反応し、「割って!あなたの青い大きな風船、粉々にして!」と叫ぶ。俺は一つになったまま怜子の躰に腕を廻し、強く抱きしめる。挟まった風船が極限まで歪んでいき、ボン!・・・支えるものがなくなった怜子が俺の体に倒れかかる。

再び体位を入れ替え、リズムを更に早めていく。部屋一面に、怜子の手で大小の縮みねじ曲がった破片と化したゴム風船の残骸が散っている。まわりのゴム片をつかみ、怜子の上に放り捨てる。激しく突き上げながら親指を差し入れ、怜子のもう一つの突起を刺激する。さらなる高みへと誘われ、
「ああん、あおいおっきいフーセン、ぶち割って!」
怜子が叫ぶ。野卑な言葉と、怜子の水着の上に散らばる、無惨に引き裂かれた赤、緑、紫、のゴム片が更に俺を昂ぶらせる。ほどなく絶頂へと上り詰め、そしてその瞬間、ド、ド、ドド・・・白い体液が何度も青い水着の上を走り、飛び散り、表面を流れ落ちる。俺は何かに絞り出されるようにすべてを出しつくし、仰向けになる。怜子の荒い呼吸が聞こえる。

深い余韻に浸っていた怜子は、目を閉じたまま、水着の腹から胸、首筋まで飛び散った白い体液を指でなぞると、深く息を吸い、
「割れちゃった・・・。」
小さくつぶやくと、細く開いた目の下を火照らせ、天井に一つ残った青い風船を見つめた。

(補記) 「それから」へ続く