RC飛行機お役立ち講座シリーズ@
重心位置を求めてみよう!
皆さんは飛行機の重心位置、どうやって測ってますか?
また、重心を調整するために重りを積むとき、その位置と量はどうやって決めていますか?「主翼の下を指で支えてだいたいこのあたり・・・」
ってそれでは結構誤差も多いもの。それに、全備重量10kgのジェット機だったらどうします? う〜ん指が折れちゃう(笑)
ここでは、実機の重心測定で使われる、「ステーションナンバー」「モーメント」という概念を説明します。これであなたの飛行機も重心位置はミリ単位でバッチリです!
まず用語の説明
「ステーションナンバー(STA)」とは、胴体の長さ方向の「位置」を表します。
機首前方の仮想の点、通常は機体の先端ををゼロとし、後方に行くほど数字が大きくなります。単位はありませんが、ストレートに長さの単位でいいでしょう。ここでは、mm を使いましょう。「モーメント(MOMENT)」とは、「曲げ力」の意味です。胴体を1本の棒と見立てたとき、棒のどの位置(STA) にどのぐらいの重量物を積むか(あるいはどのぐらいの重量がかかっているか)、で仮想の0点に対する曲げ力が計算できます。
例えば、STA 500mm に 1,000g の重量がかかっているとすれば、MOMENT は 500,000g・mm となります。数字が大きいので桁数を間違えないようにしましょう。重心位置の測定
それではこの「ステーションナンバー」「モーメント」を使って重心位置を測定してみましょう。例題機は、このタイガートレーナーです。
まず機体重量を測ります。と言っても、機体を吊るしてばねばかりで一気に測るわけではありません。ノーズギア、メインギアにかかる重量を別々に測ります。これをすべて合算すれば機体重量になるはずですね。
3つの車輪の下にそれぞれ台秤を置いて計測するのが望ましいのですが、そんなに何台もはかりを持っている方は少ない(いない?)でしょう。ですから、計測は3回に分けて行ってかまいません。ただし、計測中は常に機体が水平になるようにしなければなりません。
ちなみに、実機の場合は水準器で水平を確認しながら3台のジャッキで飛行機を持ち上げます。そして、それぞれのジャッキの面圧を測定します。計測結果は、ノーズ 150g 左メイン 1,200g 右メイン 1,150g でした。ちょっと左が重いですね(笑)
というわけで、機体重量は 2,500g次に各ギヤのSTAを測ります。基準点はスピンナーの後端にしましょう。すると、ノーズが100mm、メインが380mmとなります。
続いてそれぞれのモーメントを算出します。
ノーズは、150g×100mm=15,000g・mm、左右のメインは同時に考え、(1,200g+1,150g)×380mm=893,000g・mm 合計は、908,000g・mmとなります。この合算したモーメントは、胴体のある1点にかかる力と考えることが出来ます。その「ある点」これが重心位置です。
モーメントを機体重量で割ってみると、908,000g・mm/2,500g=363.2mmそうです、基準点後方363.2mmがこの飛行機の重心位置になるのです。
試しにこの位置を指で支えてみると、ちゃんと飛行機がつりあうのが分かります。
Position Wt(g) STA(mm) Moment(g・mm) Nose 150 100 15,000 Main 2,350 380 893,000 TOTAL 2,500 363.2 908,000 さて、ここまでは基本。重心位置を求めるだけなら何もこんなにややこしい計算をしなくたって実際に機体を持ち上げてみればよいのです。実はここからが「ステーションナンバー」「モーメント」の真価が発揮される場面なのです。
重心位置の調整
上記で算出された重心位置を主翼にあわせてみると、約35%MAC(MAC=空力平均翼弦)になります。トレーナー機でこんなに後方重心ではちょっと縦安定が心許ないでしょう。何とか10mm程度、重心を前に出せないでしょうか?
重心を前に出すには、1、重量物(電池など)を前方に移す
2、機首に重りを積むなどの手法があります。
でもいずれも簡単ではありません。いったん燃料タンクを外したり、カウリングの内側を加工したり、手間をかけた割に思ったほどの成果が得られないとがっかりです。工作をはじめる前に何を、どの程度やればどのぐらいの効果が出るか、計算できるとありがたいですね。
そこで登場するのが、「ステーションナンバー」と「モーメント」です。「例題1」 受信機バッテリーを燃料タンク下に移したらどの程度重心は移動するか?
現在搭載されているバッテリーの重量=80g、搭載ステーションは270mmです。新しく想定する搭載位置(ステーション)は150mm、よってモーメントの変化は、80g×(150mm-270mm)=-9,600g・mmとなります。モーメントは変化しても全体の機体重量は変わりませんから、これを機体重量で割ると、-9,600g・mm/2,500g=-3.84mm
・・・たった4mmしか重心位置は前進しないということです。
これでは完成機の燃料タンクを苦労して脱着するのは躊躇われますね。
Position Wt(g) STA(mm) Moment(g・mm) Battery (Remove) -80 270 -21,600 Battery (Install) 80 150 12,000 Wt/C.G Change 0 -3.84 -9,600 「例題2」 重心位置を10mm前進させるためには、機首に何グラムの重りが必要か?
さて、今度はちと難しいです。機体重量が増えますから、新しいモーメントとステーションを算出しなくてはなりません
重りの搭載位置をカウリング内最前方のステーション20mm、必要な重量をXgとします。
機体重量はXg増えて、(2,500+X)g、前進させたいのは-10mmですから、重心位置のステーションは、363.2mm-10mm=353.2mm、このときのモーメントは、353.2mm×(2,500+X)g これが現在のモーメントに重りを足したモーメントと一致すればいいわけですから、353.2mm×(2,500+X)g=20Xg・mm+908,000g・mmよって、X=75g となります。結構多いですね〜
Position Wt(g) STA(mm) Moment(g・mm) Origin Aircraft 2,500 363.2 908,000 Weight Add 75 20 1,500 New Aircraft 2,575 353.2 909,500 如何でしょうか?「ステーションナンバー」と「モーメント」
ちょっと難しいですが、これを使いこなせば機体の重量重心の変化が手に取るように分かってくるはずです。・水平尾翼の肉抜きはどのぐらい重心位置に影響するか?
・燃料を入れたときと抜いたとき、重心位置はどのぐらい変化する?
・脚を上げたら重心って前に出るの?後ろに下がるの?いろいろな重心位置変化を計算してみると面白いのではないでしょうか!