幽霊のお話
2004年12月13日掲載
2005年11月12日加筆・修正
残念ながら、空中分解〜墜落してしまった GHOST
輸送上の問題からすでに生産が中止され、もう手に入れることが出来ないこの機体をなんとか復活させるべく、新しいプロジェクトをスタートさせました。その名は、 ゾンビ・プロジェクト(幽霊復活計画)
GHOST 散る
私のGHOSTは、去る5月14日に開催された「中部電動機の集い」においてフラッターによる空中分解〜墜落に至りました。
約200m上空からモーターオフでスプリットS機動、それほどのスピードとは思いませんでしたが、小鳥のように翼が羽ばたき根本から折れるまでたったの1秒でした。これはスロープグライダーとしてあまりにも弱い。デモフライトなどで観客席上空に降ってきたらどうする!
そう思った私は、Art Hobby 社にメールで質問してみることにしました。待つこと2週間、やっと同社からの回答が届きましたので要約して掲載します。
「貴殿のGHOSTが失われたということに遺憾の意を表明します。
GHOSTはスロープグライダーとして設計されており、モーターを搭載して様々なテストを行いました。テストの間には素材やモールド方法の改善も行い、量産機のGHOSTはとても満足のいく製品に仕上がっております。
貴殿のメールと写真から、貴殿のGHOSTは胴体上下のモールドが剥離していることから、量産前のテスト機であった可能性があります。しかしこれは実際に機体を見ないことには断定出来ません。
残念ながらGHOSTには輸送上の問題が発生しました。
GHOSTはその形態から大変大きな箱が必要で、輸送中の破損のクレームも多く、我々は2004年末からGHOSTの出荷を停止しております。
現在、翼を取り外すことの出来る新しいGHOSTをテストしております。
完成した暁にはご連絡しますので楽しみにお待ちください。」・・・・だそうであります。
もうこの型のGHOSTは手に入れることすら出来ないのですね。それから、もしすでにGHOSTをお持ちの方、本機は、翼の強度不足の可能性があります。
胴体と一体成形されている関係上、後から補強を入れるのは困難と考えられますが、決して無理な飛行はせず、墜落などでヒビが入ったような場合には十分その影響範囲を考えて修理をするようにお勧めします。このページでは、GHOSTを入手した当時の製作記事を掲載しています。
復活を目指して修理に取りかかった記事はこちら→ ゾンビ・プロジェクト(幽霊復活計画)
選んだ製品は、 ・アウトランナー型ブラシレスモーター、Model Motors AXI-2212/26
・バッテリーは当然リポで、Thunder Power TP2100/3S
・アンプは豊富なプログラミング機能が評判の、キャッスルクリエーションズ Phenix25
・高級感あふれるカーボン折ペラ、RFM10×6
・真中に穴があいて冷却が良さそうな、MP-JET 35mmアルミ・ターボスピンナー
・受信機はノイズで誤作動しないようにPCMを選択、JR R770S
そして、エレボン用サーボに、OK のサブスリムサーボ S1809×2個です本機はメカ積みのみで飛行可能な完成機ですが、綺麗に作ろうと思うとなかなかの作業量です。
まず、大物のモーター搭載からスタート。スピンナーの直径35mmになるところをノギスで測り、レザーソウで機首をカットします。
切り過ぎると修正が効きませんので控えめに、あとは現物合わせでヤスリで削ります。この胴体は真円で、スピンナーのカーブにもぴったり合いました。モーターマウントは3mmベニヤにカーボンキュアシートを貼ってみました。なかなか精悍?
冷却を考え、四方に穴を開けてあります。
ボディへの接着は Super-X が良いと聞きますが、私はまだ使い慣れていませんのでエポキシとしました。サーボのリード線はあらかじめ必要な長さに延長しておきます。
最近、OKのコネクターキットが流行っていますが、これはなかなか確実に作ることは難しいようです。私は延長コードをハンダ付けしました。
サーボはヒシチューブで包んで翼内に直接接着します。ここでは Super-X を使ってみました。
接着完了後ぐっと手でひねるように力を加えてみましたがビクともしません。また、わずかな弾力が衝撃を吸収してくれるようです。なかなか使いでがありそうです。垂直尾翼はカーボンのカンザシで胴体に固定されるようになっています。
これは接着しても良いのですが、取り外せた方が持ち運びに便利と思い、3mmのナットを埋め込んでビス止めすることにしました。ドライバーを突っ込む穴は大きめに開けておき、胴体内の冷却空気の出口としての役目も期待します。さてここでバッテリーや受信機を仮付けして重心を調整します。
長い機首に重量物のモーターを積んでいるため、かなりの前方重心となります。
動力バッテリーを胴体最後方まで押し込んで、追加ウエイトなしで何とか指定位置より10mm前まで押さえ込みました。無尾翼機は重心位置がシビアと思いますがこれで試してみたいと思います。動力バッテリーが胴体奥に入ってしまいコネクターに手が届きませんので、メカ全体を1枚のメカトレイに載せ前方に引き出せるようにしました。トレイ後方はクッションで、前方(下方)をベルクロで胴体に固定するようにし、簡単に着脱できるようにしています。
受信機のアンテナ線は、ノイズレス・チューブに通し翼内を這わせました。本機の翼は中央部以外リブが1本もありません。翼端までスカッとパイプが通りました。
エレボンの舵角・・・
ASKY HOBBY さんのデータでは、上げ=12mm、下げ=3mmと、かなり極端なセッティングを推奨しています。翼端失速を考慮すると舵面の下げ側を制限しなければならないという考え方は頷けるのですがこれはあまりにも極端。直感的には上げ=10mm、下げ5mmというところではないかと思い、私はこれでいくことにしました。セッティングも終わり、地上でモーターを回してみました。
RFM 10×6 のペラで約 6500rpm で回っています。
電流計がないので正確なところはわかりませんが、バッテリーも殆ど発熱しないことから、電流は余裕で20A以下と思われます。引きも上々、まず問題ないでしょう。
2004年12月18日
よく晴れた冬の早朝、風もなく絶好の日和でした。
親友の Viper佐藤氏にお付き合い願って、GHOSTの初飛行を敢行しました。
モーターオフで目の前をローパスここで機体のセッティングをおさらいしておきます。
モーター AXI-2212/26
プロペラ RFM 10×6
バッテリ Thunder Power TP2100/3CELL 6500rpm MAX / 15A
舵面は左右のエレボンのみです。
エルロン 上げ 10mm、下げ 5mm
エレベーター 上げ 8mm、下げ 6mm重心位置 キット指定より 10mm前方
佐藤氏の手を放れたGHOSTは暴れることもなく上空へ吸い込まれていきました。
まず第一印象は、とても安定しています。
しかし、見慣れない形態と朝の逆光も影響して姿勢が判別しづらく飛ばしにくいです。
エルロンはシャープで良く効きますが、エレベーターが鈍く、バランスが良くありません。これは前方重心であることが影響している可能性があります。
モーターオフでのグライドはかなり速く、伸びていく印象です。
エルロンロールはクイックですが全く軸が通らずバレルロールになります。これはエルロンの大きな差動が原因でしょう。
もう少し低速での効き具合を見ながら差動を減らす方向で検討します。さて、いちばんの問題は着陸でした。
なかなかスピードの落ちない本機はご覧のような素晴らしい芝生のグラウンドに滑り込ませればいいや、と思っていましたが、接地した途端に大きくバウンド、失速してもんどり打って墜落・・・・垂直尾翼を破損してしまいました。
考えてみれば当然の話で、本機では重心よりかなり前方の胴体が最初に地面に接地します。
スピードがあれば当然機首は叩き上げられポーポイズに入ります。
そこで迎角が大きくなれば当然失速すると。
かえって藪の中などに突っ込ませた方が安全だったかもしれませんね。「強風でなくては飛ばないらしい」「とても操縦が難しいそうだ」などといろいろ言われていた無尾翼機「GHOST」、取り敢えず飛びました。
確かにちょっとデリケートな面もあり、今後セッティングを詰める必要がありますが、飛行場で、スロープでまたひとつ楽しめる機体が増えました。
2004年12月26日
「GHOST」の初飛行を聞きつけ、早速いろいろな方からお祝いのメールやご質問、アドバイスなどを頂きました。
どうもありがとうございました。さて、現在の本機には大きく3つの問題点があります。
「その1」 着陸特性の不良
本機は着陸スピードが速いせいか、接地の瞬間に大きくバウンドして不安定になる傾向があります。
これは、重心より前方の胴体が膨らんでおり、ここが最初に接地するためで、スピードがあれば当然機首は叩き上げられポーポイズに入ります。(写真左:矢印が重心位置)そこで、重心位置付近が最初に接地すればバウンドしないだろうと、ここにスキッドを兼ねたフィンを設けてみました。(右図) これで、がが〜っと機首を下げて芝生を滑りすぐに停止する、と。そんなうまい訳にいきますかどうか・・・
ま、藪の中に突っ込ませれば全然問題ないのですけどね。
「その2」 視認性不良
初飛行時は朝日が正面から当たり見にくかったこと、機体が白一色であったこと、また、特殊な形状で見慣れないこと、などで、姿勢の判別にかなり苦労しました。そのためあまり遠くを飛ばせず残念な思いをしましたので、ちょっと派手に塗ってやることにしました。
裏は機体全面赤、翼端に黄色を配することによりかなり見やすくなるのでは?と期待しています。実は下写真は、塗装前にデザインの検討用にフォトショップで色づけしてみたもの。
これと全く同じように塗装を完了しました。
「その3」 舵のバランス不良
本機は、エレベーターが鈍く、また、エルロンロールは軸が通らずバレルというよりスナップ気味に回ってしまいます。これらを修正するために舵角のセッティングを変えました。
エレベーターが鈍いのは重心位置が10mm前方であることが一因とも考えられますが、あまり重りは積みたくないのでまず舵角調整で少し増やしてみます。
エルロンはやはり差動が大きすぎると感じます。
本機のようなエレボン形式ではエルロンの差動が必要な高迎角時はエレベーターを引いているはずであり、舵面の位置はすでにニュートラルから上がっているはず。従って、自然にエルロン差動と同様の効果が出るはずと考えました。したがって、送信機のプログラム上のセッティングはゼロとしました。ただし、本機のリンケージは元々ホーン位置をずらして機械的に少し差動をつけてありますので、それは残しました。これらを総合して最終的なセッティングは下表の通り
ART Hobby 図面指示 ASKYホビーテスト機 本機初飛行時 修正後 エルロン 上げ8mm、下げ6mm 上げ12-15mm、下げ2mm 上げ10mm、下げ5mm 上げ8mm、下げ6mm EXP
− − 30% 30% エレベーター 上げ10mm、下げ9mm ?????
上げ8mm、下げ6mm 上げ10mm、下げ9mm EXP
− − 20% 20% なんだ、結局図面指示通りですね(笑)
2005年1月2日
GHOST2回目のテストフライトは、年も押し迫った12月30日に行いました。
この日の目標はこの特殊な形状の機体に慣れることと、前3項の問題点が改善されているかどうかを確認することです。塗装で若干重くなった(670g→690g)本機ですが、そんなことは微塵も感じさせずに上空に駆け上がります。さすがに機体自体が小さいので、いくら派手に塗ったところであまり視認性は良くありません。まあ、これは慣れるより仕方がないでしょうね〜
舵効きは改善されました。
まだ若干エレベーターが弱いような気がしますが低速から高速まで非常に素直でよく手についてきます。ロールもスムーズで、ほぼ軸も通ってきました。エルロンは低速時においても問題なく効きます。さあ、いよいよ着陸です。
胴体下に設けたフィンの効果をみるため、わざわざ岐阜ラジコンフライヤーズの平坦な草地の滑走路に接地させます。
前回ポーポイズに入った時と同じように比較的高速で地面にこすりつけると・・・・フィンが付いたGHOSTは「がが〜っ」と制動して一気に減速。バウンドすることもありません。フィンの効果は絶大です。機体後方には一直線にフィンの跡が残りました。
下写真は地面に食い込んだフィンの汚れ。これは塗装がすぐに落ちてしまいそうですが・・・・まあ、しょうがないでしょうね。
機体裏面はこのように真っ赤です。、さて、私のGHOSTはほぼメーカー指定のセッティングで満足いく性能を発揮しましたが、まだ平地で風のない条件でしかフライトしていません。
乱流の多いスロープではどうなるか? また電動機ではなく純スロープ機として製作したらどうなるか? それは未知数です。本機は日本ではまだあまり飛んでいないと聞きますが、本機をお持ちのマニアの皆さん、ぜひいろいろ情報交換しあって楽しいフライトをしようではありませんか!
本ページの画像は、Canon IXY
Digital 200a で撮影し、
Photoshop 7.0 で加工し、作成しました。