Lancair Model360 Mk.2

2006年3月3日スタート
3月26日初飛行!


「まえがき」

実機ランスエアー360は、米国ランスエアー社で販売されるホームビルドのキットプレーンです。
ホームビルドといっても侮るなかれ、フルコンポジットの流線型の胴体に最新の翼型を採用した本機は、18000ftの高高度まで上昇し、276mphという高速で巡航することが出来る高性能機です。
本機、ランスエアー360及びその後継機であるレガシィは、リノ・エアレースのスポーツマンクラスに何度も出場し、特に往年の名パイロット、ダリル・グリーネマイヤーが駆るレガシィ2000は水噴射装置を装備してチューンアップし、2002年以来何度も優勝を飾っています。

Lancair 社のホームページ http://www.lancair.com/

リノ・エアレースの公式ホームページ http://www.airrace.org/indexJS.php

さて、そんな名機ランスエアーのARFキットがChina Model Products 社から発売になりましたので、早速購入しました。


「キットを見る」

胴体、カウリングはFRP完成です。
実機の流麗なスタイルが見事に再現されているだけでなく、その塗装仕上げも見事。
私が入手したのは、カタログには無い日本特別仕様、白地に赤、そしてGOLDのストライプが施された高級感あふれるものです。

 

主・尾翼はバルサリブ組み、フィルム張り。若干フィルムが薄くて骨組みが透けて見えますがまあまあの出来です。
主翼端には小さなウイングレットがFRPで再現されています。
水平、垂直尾翼のマスバランス部もしっかり再現されているのは嬉しい点です。
脚は固定。高速で有名な実機では引込脚仕様が多いのですが・・・
FRP製のスパッツが同梱されています。
その他、エンジンマウント、燃料タンクやリンケージ関係のパーツがぎっしり。足りないのはスピンナーとパイロット人形ぐらい。充実した内容です。
これが僅か20Kで販売されているのですから驚きです。
粗悪な中国製品を想像し、かなりの改造や修正が必要だろうと思っていましたが、それは良い意味で裏切られました。
しかしながら、これがスケール機として通用するかというとこれはまた別の話です。
本機のようにウイングレット装備で固定脚という形態の実機ランスエアー360は私が調べた限りでは存在しません。塗装されているレジ(登録記号)も最新モデル「レガシィ」のもの。
まあ、実機が元々キットプレーンで、ユーザーによっていろいろな仕様に改造されていることでしょうから、こういう機体も「あり」かもしれませんね。

「製作開始」

まず、主翼の接合からはじめます。

作業前にカンザシ回りの接着の状態をチェック。
モーターグライダー Omei のような目にあっては大変ですから・・・・。
主翼中央部は直径20mmのアルミパイプで接合されるようになっており、パイプの受けはFRPです。周辺はきっちり接着剤が廻っているように見えますが、同じリブに接着されているメインギヤのマウントはちょっと不安。今のうちにドライヤーでエポキシを流し込んで補強しておいたほうが良さそうです。
これ以上の追加補強はまあ、必要ないでしょう。

あとでエルロンサーボのリード線を通すため、先にビニール紐を通しておき、左右の主翼を接着します。
説明書には上半角の目安さえ記載されていませんが、カンザシのアルミパイプはきっちりと嵌り、左右の中央リブには隙間も出来ません。このへんの精度は高そうです。

これで自動的に適切な上半角が設定されたようです。

胴体はエンジン+エンジンマウントの取り付けからです。
私は、手持ちの OS FS-52S を搭載することにしました。

樹脂製のユニバーサルマウントと防火壁に自分で穴明けをしないといけません。
ところがこのキット、そのための正確な寸法が説明書に書いてありません。
カウリングの長さを定規で計り、必要な寸法を割り出しました。

半ばハッタリで位置決めをし、ブラインド・ナットでマウントを防火壁に取り付けます。
マウントにワッシャーを噛ませてサイド、ダウン・スラストを調整します。説明書の指示ではどちらも2度となっています。

ここで、純正のマフラーがつかえて取り付かないことが分かりました。
あとで対策を検討する必要があります。
大きなカウリングですが、エンジンのヘッドカバーは残念ながらカウリングに当たってしまいます。この部分はカウリングに穴を開ける必要があります。

部品箱をひっくり返していたら、使用していないK&Sの52用マフラーを発見!何とか収まりそうなのでこれに合わせてカウリングを切り取ります。
何とかあまりカウリングからはみ出さないようにマフラーを配置出来そうです。

カウリングの取り付けには、2.6×12mm の木ネジを使用するようになっていますが、相手が薄いグラス胴なのですぐにネジがバカになってしまいそうです。
位置決め・穴開け後、内側から15mm角ほどのベニア板を貼っておきました。

ノーズギアのマウントはすでに胴枠に取り付け済みでした。
可動式のノーズギアはこのマウントの上下からカラーで挟むように取り付けるような図面指示になっておりますが、上部のカラーがエンジンマウントに当たってしまって入りません。
仕方なく、中央のステアリング・アームと下方のカラーで挟むようにして取り付けますが、まあ、大丈夫でしょう!
主翼取り付け用のダウエルは、直径6mmのアルミ製のものが用意されています。
主翼前縁に穴を開けてこのダウエルを差し込み接着しますが、位置決めが大変難しいです。

また、胴体側にあるダウエルを差し込む穴ですが、どう見てもダウエルより二回り以上太いです。これは、接着したダウエルがピッタリ入るようにあとで穴を埋める、というのが正解のようですが、面倒くさかったので、「ダウエルが穴の下端にきっちり当たるように位置決めして接着する」という方法で切り抜けました。

主翼の仮付けが出来ましたので、これに合わせて水平尾翼を取り付けます。
本機は長さ20cm、直径5mmのアルミパイプを胴体に貫通させ、左右の水平尾翼を接着するようになっています。何もしなくても主翼との平行度はぴったりでした。

このように非常に精度良く出来ている部分と、とてもアバウトな部分が同居している不思議なキットです。

リンケージパーツはそれほど精度は高くないものの問題となるレベルではないと判断。特に交換することなくそのまま使うことにしました。
エレベーター・ホーンの取り付け部にはキチンとベニヤ板が埋め込まれているので、ホーンの取り付けビスは貫通させず、長さ12mmの木ネジでホーンを取り付けます。
ラダーはワイヤーの両引きです。 
エレベーター/ラダーのサーボはJRの標準型ES539を使用。非常に動作音が静かでシャープな動きは好感が持てます。

この時点でまだ燃料タンク、カウリングなどを取り付けていませんが、すでにかなり前方重心であることが気になります。図面指定=主翼前縁から72〜78mmに対し、約55mmの位置です。エンコンサーボ、バッテリー、受信機など、移動できるものはなるべく後方に積むよう改造にかかりました。

綺麗なカウリングにはこれ以上穴を開けたくないので、リモートのプラグヒート・ケーブルを付けることにしました。
K&Sの製品を使用し、マフラーとノーズギアの間に端子が出るように配置してみました。
大きなキャノピー内部は本当は何とかしたい部分です。しかし、本機は極端に胴体の背が低く、コックピットの床を切り取ると強度的にかなり問題になりそうな気がします。よって、本格的にコックピットを作るのは諦め、キャノピー内部全体をグレー塗装しました。
このあと、計器板と半身のパイロットを乗せて誤魔化すことにします。
本機、ランスエアーはホームビルト機です。
計器板にもそれぞれのオーナーの個性が表れており、小型機といえども最新型のCRTディスプレイを装備している機体が少なくありません。
WEBページから最新型のアビオニクスを搭載した計器板の写真をコピーしてきてプリンターで印刷、貼り付けることにします。
主翼の仕上げにかかります。

エルロンサーボは樹脂製のサーボマウントに搭載し、主翼にビス止めするようになっていますが、サーボホーンを覆う大きな膨らみにセンスがありません。私はロッドの取付方向を変更し、この膨らみを全て切り取りました。サーボマウントに開いた大穴はフィルムを貼ってカバーしておきます。

エルロンのリンケージはこんな感じです。

メインギヤも装着しました。
ただ、キットに入っているべき木ネジの数が足りません。
小さな部品ですが、不足があるとそのために買いに走らなければなりませんので困ります。
私は手持ちのパーツで何とか間に合わせました。

ここで重量重心をチェック

重量はこの時点で2720g、あとキャノピーとパイロットを装着すると2850gぐらいになる予定です。別に特別なことは何もしておりませんが、キット標準2500〜2600gよりもちょっと重いじゃあ〜りませんか!

重心位置もキット指定の「前縁から72〜78mm」に対し、60mmの位置にしかなりませんでした。これは大体、22%MACに相当しますのでまあ、許容範囲内と判断。
何が重いの?エンジン?? 2サイクルなら重量重心もキット通りになったのかもしれませんね〜

計器板を取り付け、パイロットに搭乗してもらいます。
本機は2人乗りのスポーツ機ですので、仲の良いミッキーとミニーを乗せてあげました。
ただし、色付きのキャノピーを閉めるとせっかくのコックピット内部がよく見えません。

計器板の覆い(グレア・シールド)は、本来、反射防止のため黒色をしているのですが、それでは夏場の熱でキャノピーが変形してしまうのは目に見えています。本機ではあえてグレーに塗装しています。

 

「点検・調整〜完成」

キャノピーを装着し、各部の点検をします。
胴体内には、バルサやFRPの屑がいっぱい入っていますのでこれらを掃除しておきます。
受信機やサーボの取付・配線、ロッドの接続などを確認したら再度機体を組んで動作確認です。

最近はコンピュータ・プロポを使われる方がほとんどと思いますが、新しい機体のプリセットをする場合、形態が似ている他の機体のデータコピーして使うと簡単です。
ただし、気をつけないと、ATVやサブトリムを大きく動かしてあったり、癖取りの変なミキシングがかけてあったりします。
面倒でも、何もない素の状態からセットアップする方が間違いがないかもしれません。

本機の舵角は図面上に何も指示がありませんので、今までの経験を元に設定しました。
エルロンには上下の舵角に若干の差動を設けました。
初飛行後にそれぞれの舵角を再調整し、最終的には以下の通りとなりました。

初飛行後 Normal キックダウン ランディング・モード
エルロン 上げ14mm、下げ10mm
EXP 35%
上げ12mm、下げ9mm
EXP 35%
上げ16mm
エレベーター 上下12mm
EXP 20%
上下9mm
EXP 20%
下げ 1mm
ラダー 左右25mm
EXP LIN
左右18mm
EXP LIN
 

重量は結局、2840g 重いぞ〜、プロペラはヨシオカの11×7.7です。

 

「初飛行」

  

初飛行は、岐阜ラジコンフライヤーズ飛行場にて行いました。

エンジンはー昨年からプラウドバードに搭載していたもので、今回も快調で何の問題もありませんでした。
離陸は、重心位置が若干前方であることと、メインギヤ位置が重心から離れた後方にあることで、十分な速度を得ないと頭上げが出来ません。エレベーターの舵角も若干足りなかったかも。
一旦浮揚してしまえば安定していて飛行に不安はありません。
重量超過のハンデは感じさせません。若干前目の重心も大正解のようです。

飛行速度は結構速く、実機同様、パイロンレースも出来るかもしれません。
エルロンを2クリック左、エレベーターを5クリックダウンにトリムし、操縦性を確認します。

エルロンはシャープに効き、胸のすくようなロールを見せます。エルロン上下の差動は正解のようです。
それに対し、エレベーターは若干弱いようです。ロールとピッチの操舵感が合わないので、取り敢えずエルロンをキックダウンにして飛行を継続しました。

低速性能は良好です。
上空でパワーオフにして失速させてみますが、エレベーターがフルアップに達するまでおかしな挙動は見せません。エルロンも効いています。ほぼ停止するような速度になるとクルリとスピンに入りますが、エレベーターを弛めるだけですぐに回復します。

ナイフエッジは不可です。まあ、この胴体形状ですから(笑)
45度ナイフエッジ(サイドスリップ)では若干の起き癖がありますが、エルロンを容易に当てることが出来ます。
まあこれも実機らしくて良いでしょう。

着陸進入は、その重量の割りに意外と速度を落として進入することが出来ます。
低速になるにつれだんだんとエレベーターの引き量が大きくなってくるので、失速余裕が分かりやすくて良いです。
減速も良いので設定していたランディングモード(スポイラー)は使わずにすみました。

結果、大きな問題もなく初飛行は成功です!

飛行に協力してくれた後輩たちと

 

「まとめ」

本機、ランスエアー360は、非常に満足のいくものでした。
塗装仕上げは大変美しく、機体の精度も申し分なし! 常識的な注意さえ払えばほぼ無改造で満足いく仕上がりと飛行性能が得られます。
強いて言えば機体重量が指定を若干超過すること、重心が合わせにくいこと、ぐらいでしょうか?
このARFの素晴らしい機体が僅か20K強の値段で手に入るのですから、驚異と言わざるを得ません。

飛行は、素晴らしいスケール感を楽しみながらハーフスロットルでゆっくり飛ばすのも良し、
スケールパイロンレーサーとしてフルスロットルでかっ飛ばすのも良し、
また、対称翼を採用しているので、正逆のアクロバット飛行も難なくこなせるでしょう。

またひとつ、楽しいおもちゃが増えてしまいました。

本ページの画像は、IXY Digital50 及び Vodafone V402SH で撮影し、
VIX Ver.2.11 及び Paintshop PRO 8 で加工し、作成しました。  


  
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