R/Cスケールモデルの話(飛行技術編)

機体制作編  飛行調整編


スケールライクに飛ばす
飛行機を見に行こう!
実機と模型の違い
実機の飛びを知ろう
  ラジコン機の飛びは?(離陸)
   〃      (デッドパス)
  〃  (水平直進・水平8字)
   〃  (360度降下旋回)
   〃  (オプショナル演技)
   〃  (場周飛行〜着陸)

1,スケールライクに飛ばす

 RCスケールモデル、それは他のプラモデルやソリッドモデルと違い、空を飛ぶことを前提とした模型です。
飛ぶことを考えなければ、いくらでも綺麗に、複雑に制作することが出来ます。
(もちろん制作技術にもよりますが....)
 そして、「飛ぶ」といっても、ただ飛べばいいと言うものではありません。スケール機と言うからには、その「飛び」もスケールライクでありたいものです。

これから、どのようなことに気をつければ、あなたの飛行機が本物らしく飛ぶか? 観客の皆さんに「おおっ」と言わせる飛行が出来るか? 考えていきたいと思います。

ページの先頭へ戻る

2,飛行機を見に行こう!

 さて、まずあなたの飛行機の飛びを云々する前に、質問です。

本物の飛行機をよく見たことがありますか?

 ちょっと失礼だったでしょうか? 本物の飛行機をよく観察すると、RC機とはかなり違った飛びをしていることが分かるはずです。ゆったりと、安定していて、重量感があり、かなりの高速機でも「急」のつく操作は少ないはずです。
 私は、一度(「見たことあるわい!」という方も再度、)飛行場に行って、1日飛行機を眺めてみることをお勧めします。きっとなにかを掴まれること請け合いです。以下に、私がお勧めする実機観察のスポットを纏めてみます。

飛行場又は場所 主な飛行機 お勧めのポイント
名古屋空港 ジェット旅客機、軽飛行機、戦闘機、実験機、大型プロペラ機、ヘリコプタ 国際空港でありながら、軽飛行機のの常駐が多く、ジャンボからセスナまで幅広い航空機が見られる。
三菱重工の工場があり、最新鋭の航空機が見られるのもお勧め。
岐阜基地 自衛隊の戦闘機、練習機、輸送機、ヘリコプタなど 航空自衛隊の飛行開発実験団と川崎重工の工場があり、いろいろな航空機・ミサイルなどの試験を行っている。
基地祭での、異機種大編隊飛行が見もの。
小松基地 F−15戦闘機 F−15戦闘機の実戦部隊。
基地祭では一番迫力ある飛行をすると有名
松島基地 T−2、T−4練習機 曲技飛行チーム、ブルーインパルスのホームベース。本番さながらの練習飛行が見られるかも。
練習機の基地なので、頻繁に離着陸が見られる。
但馬空港 プロペラ曲技機(イベント時) 曲技飛行の世界選手権を毎年誘致して実施している。
いちばんRC機に近いこれらの機体も、実機の飛びはちょっと違う、かな?
調布飛行場
八尾空港
軽飛行機、ヘリコプタ 軽飛行機がかなり頻繁に飛行する両飛行場、
ついでにセスナ機に乗せてもらって操縦の極意を盗んでくる、なんてのはどうでしょうか?
岩国基地 米軍戦闘機、飛行艇PS−1 私は行ったことがないので強くお勧めできませんが、日本が誇る飛行艇PS−1が見られるのはここだけ?かな

ページの先頭へ戻る

3,実機と模型の違い

 さて、皆さんは飛行場に行って実機の飛びを見てきたでしょうか? それでは質問です。

「実機と模型の一番大きな違いはなあに?」

 大きさ? 速度? レイノルズ数の違いにより....ええ、ごもっとも。でも一番の違いといえば、
「パイロットが乗っているかどうか」です。

 人間の強度は、機械である飛行機に比べてとてつもなく弱いものです。「Story in the Sky:じいの話」

 現代の高性能の戦闘機では、パイロットのG耐性によってその性能が制限されています。逆に言えば、性能を上げるために、いかにパイロットをGから保護するかという研究が盛んなほどです。
 話が脱線してしまいました。つまり、実機では、パイロットが失神してしまうような急激な旋回や、頭に血が上るような背面飛行の連続などは通常ありえないのです。(もちろん、一部の曲技専用機や航空ショーでは違いますが)
 ほらほら、そこの貴方、貴方の飛ばす飛行機は「常に」そのような操縦をしていませんか?

ページの先頭へ戻る

4,実機の飛びを知ろう

 ここで、実機の飛びを具体的に研究してみましょう。
 
「離陸」
 
 離陸の時のピッチ角度は、セスナ機では約5から8度、ジェット旅客機では、10から15度です。
以外と小さいでしょう。上昇角度は見えなくなるまでほぼ一定です。離陸直後に旋回する場合は、速度が小さいので失速しないよう、バンクは20度程度です。
 離陸直後に60−70度の角度で引き起こし、急上昇していく戦闘機がありますが、これは普段からやることではありません。また、水平飛行に戻る際は、ダウンを打ってピッチを下げるのではなく、一旦飛行機を背面にし、アップを引いて機首を水平にして再度半ロールし、水平飛行に戻るという操縦をします。(これをバーチカル・リカバリといいます→右図)
 
「巡航と旋回」
 
 巡航は、どんな飛行機でもあくまで水平に、一定高度で飛行します。高度がふらついては、エレベーターに乗っているようなもので、お客さんがみんな酔っぱらってしまいます。それに高速で飛ぶ実機では、進行方向で高度を決め、正確にこれを守る事により衝突を避けています。東行きは奇数高度(3000ft, 5000ft, 7000ft...) 西行きは偶数高度(4000ft, 6000ft...) というように。
 旅客機、小型機の旋回は、通常バンク30度以内で行います。オートパイロットの基準バンクは約25度が一般的です。
 
「進入と着陸」
 
 最終進入時の降下角度は、どのような飛行機でも約3度です。これは、ILS(計器着陸装置)の誘導電波の角度でもあります。場周飛行から着陸する場合、バンクは30度以内で旋回し、最終旋回を終わったら約3度の一定の降下角度で進入します。エンジンは絞りきった状態ではありません。ラジコン機で言えば、「パワーで吊って」持ってくる感じです。そうでないと、パスが高くなったときの修正が出来ません。接地直前にはじめてパワーをアイドルにし、緩やかに引き起こして着陸します。
 戦闘機は、360度オーバーヘッド・アプローチというのを行います。(左図)
 着陸進入方向で飛行場上空を通過し、60−70度バンク(約2−3G)で180度旋回して減速しながらダウンウインド・レグに向かいます。ダウンウインド・レグで、脚・フラップを降ろし、ファイナル・レグへ連続した180度旋回で進入します。輸送機・小型機の場周飛行と大きく違うところは、クロスウインド・レグ、ベース・レグの直線部分がないことです。
ページの先頭へ戻る

 

5,さて、ラジコン機の飛び方は?

 これらを踏まえ、どうしたら実機らしく上手に飛ばせるか、飛行の順を追って、よく見かける「間違えだらけの飛行」を正していきましょう。これで貴方も観客をうならせること請け合いです!
 
「離陸」
 
 離陸は全ての飛行の始まりです。これが決まるかどうかで飛行に対する印象が全く違ってきます。
 
 地上滑走は、パワーをなめらかに加え、あくまで真っ直ぐ走らせましょう。尾輪式の飛行機は、トルクなどの影響で左に行こうとする癖が強いので、あらかじめラダーを右に打ってこれに備えておきます。尾輪の走向に頼ってはいけません。エレベーターを水平にし、機体が滑走を初めて尾輪が浮き上がれば比較的真っ直ぐ走行させるのは楽になります。
 
 十分な速度を付けてからなめらかに引き起こし、浮揚させましょう。強くアップをひいて早く離陸させようとすると、離陸直後に失速し操縦不能になります。浮揚できる速度は、操縦できる速度より小さいのです。
 さて、重要なのは、離陸直後です。一定の上昇率でなめらかに上昇させるのはもちろん、機体の進行方向にも注意して下さい。地面から離れて気がゆるみ、ついでに右ラダーも緩んでしまって、左へ水平旋回していく飛行機が実に多いのです。(この傾向は、かなり上級のスタントフライヤーの中にも見られます。)
機体が十分加速するまでは、ラダーから気を抜かないように、真っ直ぐ上昇させて下さい。
 最初の90度旋回が終わったら、「FINISH」をコールして離陸は終了です。
 
ページの先頭へ戻る
 
「デッドパス〜コース取りのための旋回」
 
 最初のデッドパスでトリムを修正します。離陸が終わり、水平飛行に移ったら、パワーは中スローまで絞ります。
これは、次の演技、「水平直進飛行」のパワーです。トリムもこの速度に合わせて取ります。デッドパス中もなるべくふらつかないように真っ直ぐ飛びましょう。コース取りも考えて。
 さてここで問題です。水平直線飛行のコース取りが一番正確に出来る旋回方法は?  そう、ハーフ・リバース・キューバン・エイトですね。ちょっとスタントをやっている人なら必ずそうするでしょう。でも、スケール機ではやっちゃダメ!アクロ専用機が演技としてやるならいいですけど。ふつうの飛行機は、必ず水平旋回でコース取りをして下さい。
ページの先頭へ戻る
「水平直進飛行」
 
 デッドパスと同じです。
 あくまで水平に、翼を振らないで飛行しましょう。もし高度の修正をする場合でも、急激なダウンは避けるべきです。
 高度は、高からず低からず。ジャッジから見やすい高度は5m位が良いと思います。また、この高度は、後に続く水平8字飛行の開始高度と同一です。
 また、飛行速度が速すぎる機体が実に多いです。機体にもよりますが、中スロー程度のパワーで十分ではないでしょうか? 低速になると、安定性が悪くなる機体が多いのですが、そうならないギリギリの線で飛行させてください。
「水平8字飛行」
 
 高度、速度は水平直線飛行の場合と同じです。
 旋回にはいると抵抗が増えますから、パワーをちょっと増し、微妙なエレベーター操舵が要るでしょう。
 また、特に気をつけたいのは、開始時と切り返し時、ロールレート(バンクをとる速さ)とバンク角です。
 多くの場合、皆さんのロールレートは速すぎ、バンク角は深すぎます。実機の場合を下表に示します。
 
  小型機・輸送機 戦闘機 ジェット戦闘機
基準バンク角  約30度 約45度 約60度
ロールレート(通常) 3−5度/秒 10度/秒 30度/秒

 お客さんを乗せる飛行機、大型機ほどロールレートは遅く、バンク角は小さくなります。逆にジェット戦闘機は比較的RC機に近いと思います。

 旋回中は、なるだけ一定バンク角でスムーズに回ります。きれいな8の字を描けるように、風に流されるのを考慮してバンク角を調整します。
進入したのと同一の経路、高度で審査員の目前を通過できれば、GOODです。

ページの先頭へ戻る

「360度降下旋回」

 この演技に入る前には、高度をとらねばなりません。
 ただし、いつの間にか高度が上がったという風でなく、パワーを増し、上昇姿勢として、必要な高度まで上昇しました、という姿勢が必要と思います。(飛行のメリハリ)
 飛行経路は、水平直線飛行で進入したと同じ経路です。高度が高いと、その分遠くを飛行させる人が結構いますので注意してください。
 演技開始と同時にパワーを絞り、「これから降下するぞ」という姿勢を見せます。ダウンを打つのではありません。バンクをとり、自然に降下を開始してください。8字飛行と同様、風に流されないよう、バンク角を調整して正確な360度の真円を描きます。ロールアウトと同時に水平直線飛行に戻し、演技は終了です。

ページの先頭へ戻る

「オプショナル演技」

 オプショナル演技をすべて解説するのは困難です。
 しかし、共通する考え方はあります。

 まず、曲技系の演技(ロール、ループ、インメルマンなど)を、巡航状態からあっさり始められるほどパワーのある実機は少ない、ということです。
 これらの演技を始めるときは、いかにも「加速しましたよ」というふりをします。(実際に加速します)軽飛行機タイプや古典機なら、軽くダイブするのがよいでしょう。ただし、シャンデルは違います。これは水平飛行の巡航状態から行う演技です。よって、非曲技機が行ってもかまいません。
 当たり前のことですが、旅客機や輸送機でこれら曲技系の演技を行ってはなりません。(観客には受けるかもしれませんが) 実機の旅客機の[G]制限はたったの2.5Gです。もし、旅客機がループを行ったら多分、空中分解でしょう。

 水平系の演技(3角形/4辺形サーキット、ローパスなど)は「水平直線飛行」と同じ。あくまで一定高度で、ロールレート、バンク角などに気をつけて飛行します。演技が単調になりやすいので、あくまで直線は直線に、旋回の入りと抜けはぴたりとバンクを止めるよう、メリハリをつけましょう。

 着陸進入系の演技(オーバーシュート、タッチアンドゴー)では、離陸、着陸(後述)両方の注意点が適用されます。フラップ、脚などを操作する場合、スイッチ操作で機体が揺れないように気をつけてください。私はタッチアンドゴーの最中にフラップのスイッチを触る自信はありません。よって、触らなくても良いように、オートランディング・モードをセットし、スロットルと連動させています。

飛行調整編:フラップの作動調整

 余計なことですが、「オーバーシュート」の演技で接地しないようにしてください。この演技の最低高度は3mです。以前、私が「オーバーシュート」をコールして不用意に接地してしまい。「これは違う演技をしたんだから0点だわなー」と言われたことがあります。あたりまえですよね、皆さんはこんなミスをしないように....

 そのほか、オプショナル演技としては、爆弾やパラシュートの投下、脚・フラップの引き出し・引き込みなどがあります。これらは、その演技が主題実機の特徴を良く表しており、かつ、システムがそれを再現できるように作られていることが前提でしょう。実機では10数秒かけて動作する脚のシステムが、ほんの1−2秒でぱったんと動いてはこの演技も興ざめです。選択に注意しましょう。
 
 さて、オプショナルで一つ忘れていました。それは、「タキシ」です。
当然ながら、これだけは離陸前に演技するわけですが。この「タキシ」の見栄えがする飛行機は少ないのです。まず、地面の状態はあまり良くないと考えねばなりません。脚が堅く、軽い飛行機の場合、翼ががたがたと揺れるようでは実機感も何もありません。それから、よくあるピアノ線の捻れでショックを吸収する脚、これもいただけません。タキシ中に脚が前後に揺れるからです。もちろん実機ではこんな動きはありません。自分の飛行機の状態をよく考え、「タキシ」を演技に選ぶかどうか検討しましょう。

ページの先頭へ戻る

「場周飛行〜着陸」

 さて、いよいよ着陸です。演技の最後を締めくくる、華麗な着陸を演じたいものです。では、どのような進入・着陸が良いのでしょうか。

 まずは場周飛行、何度も言うようにあくまで一定高度でスムーズに飛行します。高度は水平直線飛行と同じ5m程度がよいでしょう。飛行速度は水平直ある程度落としておかないと、あとの速度処理が難しいでしょう。ダウンウインド・レグ(風下に向いたとき)脚やフラップを下げます。飛行経路が変化しないよう、十分注意してください。

 脚が降りたらいよいよ着陸です。ベースレグからは一定の角度で進入します。角度は前述のように、どんな飛行機も約3度です。かなり浅い角度です。高い高度から突っ込んでこないよう気をつけてください。速度はだいぶ落として、パワーで吊ってくる感じです。でないと、パスが高くなった場合の修正ができません。このため、普段から自分の飛行機の失速速度、エレベーターの引き具合を良く把握しておく必要があります。失速速度に近いので、操舵は十分気をつけて、スムーズに行います。

 一般的に、失速を懸念するあまり、大変速い速度で、パワー・アイドルで1発勝負! という着陸が多いようです。これではいい着陸が出来るはずがありません。スムーズで、急激な操舵をしなければ恐いことはありません。速度を十分落とし、接地直前までパワーを残しておくのが理想です。一定の角度で接地点に向けて降下させ、接地直前に滑らかにパワーをアイドルまで絞りながら引き起こします。
 引き起こしは、沈下率を止め、ソフトに着陸するために行います。決して、着陸の姿勢を作るためではありません。速度が多いのに、無理に3点着陸をしようと思っても、波状飛行となったり、フローティングして、いつまでも接地させることが出来ません。

 接地後も、飛行機が止まるまで気を抜いてはいけません。横風で煽られないよう、エルロンとラダーで方向保持をし、行き足が落ちてきたら、鼻つき防止のためエレベーターはフルアップにしましょう。
 滑走路に飛行機をまっすぐ停止させ、「フィニッシュ」と高らかにコールするのを、お忘れ無く。

ページの先頭へ戻る

 

 「実機らしい飛び」について、離陸から着陸まで順を追って説明してみましたが、如何だったでしょうか?
 自分ではわかっていても、なかなか上手に出来ないことばかりですよね。
 飛行機を綺麗に作ることはとても大切です。ただ、もう少し、ほんの少しこれを飛ばし込んで機体特有の癖をつかみ、自信を持って飛ばせるようになりたいものです。


機体制作編  飛行調整編  飛行技術編  


     
BACK TOP MENU