R/Cスケールモデルの話(機体制作編)

飛行調整編  飛行技術編

R/Cスケールモデルとは?
どのような機体が良いか?
重量超過には要注意!
重心位置は正確に!
デフォルメしていい所、いけない所
主翼翼型・形状について
尾翼の大きさとその形
操縦舵面の制作
機体の可動部分について
機体の突起物
エンジンの選択と搭載

1,R/Cスケールモデルとは?

 ラジコンで「飛ぶ」スケールモデルのことです。(あたりまえ?)
 ここでは、FAI F4C競技規定(1997年1月1日改訂)に合致するものを前提にお話しします。何事にもルールは必要。スケール機も大きければ大きい程見栄えがしますから、競技としては、ある程度の大きさの制限は必要です。
尚、この競技規定は、1997年1月より重量制限等が緩和されました。
 最大重量:エンジン数により7〜9kg → 10kg
 翼面荷重:最大250g/平方dm → 制限撤廃
 エンジン:80cc以下 → 制限撤廃
「液化ガス燃料を使うターボジェットエンジン」も可です。これも時代の流れでしょうか?
 さて、このような新しい規定を踏まえて、どのような機体を作れば良いのか考えていきましょう。

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2,どのような機体が良いか?

 ここで、競技に勝つためにどのような機体を選べばよいか?などとという話をする気はありません。「スケールモデルを作りたい」という人には、きっと大好きな飛行機、思い入れのある飛行機のひとつやふたつ、あると思います。(ちなみに私は、P−40、P−51など、第2次大戦中のアメリカ機が大好きです。)
 自分の一番好きな飛行機を作りましょう。それが一番楽しいし、一生懸命になれるからです。

 先日、このページをご覧になったあるマニアの方からお便りをいただきました。曰く、

「スケール機は忠実に実機の縮小版でなければならぬ。デフォルメなどしなくてもちゃんと飛行機は飛ばすことができる。まずは実機のディテールを再現すべく、制作技術を磨くべきだ。」

というものです。確かにその通りで反論は致しません。ただ、自分の制作技術の無さを棚上げにしてあえて言わせていただけるなら、私は、

「よたよた安定しない純スケール機より、ダイナミックに、優雅に飛ぶセミスケール機の方がよほど実機らしい。」

と思うのです。そして、お話ししたいのは、機体を作る場合、どのように作ったらより飛ばしやすく、より実機らしく飛ばせるようになるか、ということです。

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3,重量超過には要注意!

 重量制限も緩和されたことだし、モノがスケール機ですから、「さあ、細部にわたって凝りに凝るぞっ!」と思う気持ちは分かります。但し、飛行機は軽ければ軽い方がよい のです。スケール機が落ちるのは、加速の悪い、重い飛行機を無理に離陸させようとする場合が殆どです。飛行速度も速くなってしまいます。いや、速度をつけないと安定して飛行できなくなるのです。セスナが戦闘機のように、戦闘機はロケットのようになってしまいます。

 重量を削るこつは、

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4,重心位置は正確に!

 当たり前のことなのですが、以外と守られていないのが重心位置です。スケール機はテール・ヘビーになりがちですが、重心が後方すぎると縦安定・方向安定が悪くなり、非常に飛ばしづらくなります。
 では反対に、重心位置が前過ぎるのは良いのでしょうか? 答えは否です。
重心が前過ぎると、飛行するために必要な上げ舵(水平尾翼の下向きの力)の量が大きくなり、エネルギーの無駄が生じます。よって主翼はより大きな揚力を発生させねばならなくなり、機体重量が増えたのと同じになってしまいます。また、首輪式の機体では離陸時の機首上げが困難となり、尾輪式の機体では鼻付きが起こりやすくなります。

 一般に、主翼の空力中心は、約25%MAC付近です。重心位置は、20〜25%MACにあればよいでしょう。極論すれば、飛行安定が保たれる範囲でなるべく後方重心であるほうが性能が向上します。貴方の機体が初飛行に成功したならば、徐々に重心を後方に移して試験してみても良いでしょう。
 ちなみに、MAC(Mean Aerodinamic Chord=空力平均弦)の求め方を右図に示します。

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5,デフォルメしていい所、いけない所

 スケール機ですから、なるべく実機に忠実にスケールダウンしたいところです。しかしながら、性能面で、或いは工作技術、重量制限など、様々な理由で形状に変更を加えたり、省略をしたりすることになります。さてどのように手を加えるのが良いのでしょうか?
 前述のように、R/Cスケールモデルは、フライング・スケールモデルです。実機らしく飛ばなければ意味がありません。

 第1に必ず飛ぶよう、できるだけ飛ばしやすくなるように機体形状を考えること。
 第2に、エンジン、脚・フラップなどの作動の信頼性を確保すること。
 第3に、性能や信頼性に影響を与えない範囲で、ディテール・アップを施す。

このような観点で以下の項目を考えていきたいと思います。

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6,主翼翼型・形状について

 模型として安定した飛行を行うには、主翼面積を拡大して翼面荷重を下げたいところです。しかし、これはモロにスケール感に影響してしまいますのでやめた方がいいでしょう。前述のように、機体重量を抑える方向で検討したいところです。
 それに対し、翼型の変更はあまり目立ちません。浮きが良く、風にも強い半対称の厚翼がよいでしょう。(スケール機キットは殆ど半対称類似翼を使用している)スタント機の翼を参考にしてはいけません!スタント機はスケール機に比して極端に軽く、一気にスナップロールにいれるため非常に失速しやすい翼型を使用しています。スケール機では極低速飛行を狙うため、失速に強い翼型を選びます。また、逆宙返りは行わないので対称翼にする必要はありません。
 ちなみに、実機では決して「ダウンを打つ」飛行はありません。パイロットの頭に血が昇ってしまうからです。(もちろん一部の曲技専用機は除きます)
 スケール機の飛行のノウハウについてはまた別の項目で述べたいと思います。

 もう一つ、翼端ねじり下げ(Washout)のついている飛行機があります。これは省略せず再現した方がよいでしょう。ねじり下げの目的は、「翼端失速を防止する」ことです。つまり、翼の付け根より翼端の迎角を下げることによって、翼端が先に失速することを防いでいるのです。

 スケール機が落ちる時のことを思い出してみてください。旋回中にコロッとひっくり返って墜落することが多くありませんか? これが翼端失速です。翼端失速は必ず旋回内側の翼に起こります。これは、飛行機が旋回時、内側に横滑りすることで翼端の迎角が大きくなり過ぎることによります。翼端失速が起こると、揚力が左右非対称となるため急激にロールして操縦不能になります。

 ねじり下げのついた機体は、翼の付け根付近より失速が始まるのでひっくり返らずまっすぐ機首を下げます。よって大抵回復が可能です。
 私のP−40はねじり下げがついているばかりでなく、翼端部の翼型がより失速しにくいクラークY類似になっています。これにより、離着陸時、かなり低速で旋回しても翼端失速の兆候は見られません。

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7,尾翼の大きさとその形

 実機の図面を見て、「うーん、尾翼が小さいな」と思うことは少なくありません。垂直尾翼は経験上、スケールサイズでもほぼ問題ありません。しかし、できれば水平尾翼は主翼面積の15〜20%ぐらい欲しいものです。
 水平尾翼の役割を判りやすく言えば、大きく分けて2つあります。
 一つは縦の安定を確保すること。もう一つは低速時の引き起こしを可能にするのに十分な下向きの揚力を発生させることです。
 水平尾翼の大きさ・形は前述の重心位置と大きな関係があります。水平尾翼面積が小さい場合、重心が後方だと非常に縦安定が悪くなります。しかし、重心を前方に出すと低速時に機首を十分引き起こすことができず、結果的に着陸速度を下げることが出来なくなります。このような場合は、スケール感を損なわない程度に若干、水平尾翼面積を拡大してやるとともに、その翼型も揚力の大きいものにするのが良いと思います。おっと、この場合の揚力は下向きに発生させるのだということをお忘れなく。

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8,操縦舵面の制作

 ここでは、エルロン・エレベーター・ラダー・フラップなどすべての舵面について考えます。
 操縦舵面でまず一番に考えなければならないことは「フラッター」です。実機の舵面は、その形状やヒンジラインなど結構複雑で、これを正確に再現すればかなりの好印象になります。しかし、凝れば凝るほど舵面は大きく、ねじれやすく、重くなりがちで、フラッターの可能性が大きくなります。フラッターは怖いですよ。私が初飛行を頼まれた飛行機で、離陸直後にフラッターと思われる音が聞こえ、緊急着陸したらなんとエルロンが両方とも無かった!ということがありました。工作に自信のない場合はあっさりとデフォルメしましょう。安全第一です。

 ここで、私がよく使う「ピン・ヒンジ」を紹介します。これはロバート社の製品で、強度的にも満足で、用途に応じていろいろな大きさのものがあります。右図のように工夫次第で手軽にヒンジラインのスケール感を出すことができます。
 また、実機に空力バランス、マスバランスがある場合はこれを再現すべきです。どちらも適切に工作することによってフラッターの可能性を大きく低下させます。特に、フル・フライングテール方式の水平尾翼ではマスバランスは必至です。

 もう一つ大事なことは、舵面に設けるコントロール・ホーンのことです。最近、MK製の金属ホーンの破損が話題になっていますが、ホーンはなるべくアームを大きく取り、強度を持たせてたわみやリンケージのガタを最小にする努力が必要です。但し、これでは舵面の外に大きくホーンが張り出すことになり、著しくスケール感を損ないます。その機種ごとの工夫が必要な箇所といえるでしょう。(特にエルロン・ホーンは飛行中でも結構目立ちます)

 フラップはこれを再現するだけでなく、実際に確実に使用できるようにすべきです。その理由は、着陸速度を下げられること、エアブレーキ効果で容易に減速できること、そして一番大切なのは、前述の翼端失速が起こりにくくなることです。これは、フラップを下げると機首が下がり、相対的に翼端部分の迎え角が小さくなるからです。つまり、ねじり下げをつけたのと同じ効果が得られます。
 「一応フラップは付いてるんだけど、面倒くさいから使わない!」という人がいますがもったいない話です。脚・フラップを降ろしてのローパスこそ、スケール機の最高の醍醐味ではないですか!

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9,機体の可動部分について

 さて、実機には操縦系統以外にも動く部分が沢山あります。引き込み脚を初めとして、スポイラー(これは操縦系統ですが)、キャノピー、カウルフラップ、乗降扉、爆弾投下装置、等々。これらは懲りだしたら切りがありません。私は以下の条件を満たすように工作をしています。

 ここで、引き込み脚についてのみ特記しておきましょう。
 引き込み脚は離陸後まず第一に作動させるものであり、このスムーズな作動によって飛行全体の印象が違ってきます。なのに、現実には脚の上がらないまま飛行する機体のなんと多いことか。また、「尾輪は省略して固定式」という機体も多いのですが、これはぜひ引き込みにしましょう。ローパスしたときの綺麗さが全く違います。なにそれほど難しいことはありません。前述のロバート社から軽くて確実作動の引き込み式尾輪のセットが発売されています。私のP−40はこれを使用しています。
 実機では非常に複雑な作動機構を持つものがありますが、模型ではなるべくシンプルに、強度にも留意して、「確実動作する」ことを主眼に制作しましょう。模型の脚機構に対して受ける振動・衝撃・空気力などは、実機のそれと較べものにならないほど過酷なものです。

 私のP−40の主脚をお見せします。

P40主脚

 かなり省略していますが、重量増加を嫌ったのと、飾り類が作動を妨げることを危惧したためです。これでも飛行中は結構それらしく見えます。脚ドアには作動機構がなく、開閉ともただ脚柱に押されて動くよう工夫してあります。
 引き込み脚本体はロバート社のエア式90度回転型615、オレオ式脚柱に同じく Straight Robostrut を使用しています。

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10,機体の突起物

 さあ、だいぶ飛行機も形になってきたと思います。最後に目立つのは、アンテナ、ピトー管などの突起物だと思います。しかしこれが厄介者で、一度でもスケール機を手がけた人ならわかると思いますが、ほんとにすぐ引っかけて折ってしまいますね。丈夫に作っておくと機体自体が壊れるし....。
 そこで私は、すべての突起物は着脱可能に作り、飛行場に行ってから取り付けます。また、予備のアンテナ、ピトー管なども作っておき、破損したときはすぐに交換できるようにしてあります。これにより気楽に飛行機を持ち運び、またフライトすることが出来ます。テスト飛行の時などは外しておけば良いのです。
 但し、注意! 競技会前に必ず1回は「フル装備で」飛ばしてみるべきです。突起物が風圧や振動に耐えられるか確認する必要があります。私のP−40では、飛ばす度にピトー管が折れて無くなるということがありました。もし競技会だったら落下物で失格です。Oh No!

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11,エンジンの選択と搭載

 さて、ここでは機体の性格別にどのようなエンジンを選択し、搭載したらよいかを考えます。まずすべてに言えることは、「パワーよりも信頼性・取り扱い易さ」ということです。スケール機はエンジンをフルカウルしてしまうことが多く、飛行の度に細かい調整をするのは大変です。 また、パワーは中スロー以下を多用しますので、一部の競技用エンジンに見られるような、スロー付近の調整が極端に難しいものや、しばらく使用しないと調子が全く変わってしまうものなどはお勧めできません。チューンド・パイプも出来れば避けた方がよいでしょう。使用する場合は、明確にパイプイン・アウトするものは避け、最近のスタント用のマイルドでトルク重視のものを選択しましょう。というわけで、絶対に積んではいけないエンジンは、「YSの2サイクル」(YSさんごめんなさい、地元なのに....)

 最後に、エンジンの冷却について触れておきます。スケール機の場合、オーバーヒートで悩む場合が非常に多いと思いますが、これは設計段階で冷却に配慮することでかなり緩和することが出来ます。基本は「シリンダーヘッドと排気管の付近に重点的にエアを流す」ことです。エンジンの回りが大きく空いていれば大丈夫と考えるのは早計です。
 下図を見てください。左は、エアの出口が小さいために過熱したエアが流れない状態です。一方右は、エア入り口より出口が大きく、且つエンジン回りでエアが加速されるように流路を絞ってあります。このようにすればまずオーバーヒートする事はありません。最低限、入り口より出口を大きく作りましょう。カウル・フラップがあるような飛行機は、これを全開状態に再現しておくのがよいと思います。

 (機体制作編)は、とりあえずここまで。また気がついたことがあれば項目を追加していきたいと思います。
 引き続き、(飛行調整編)、(飛行技術編)を作成中です。こちらの方も宜しくお願いします。

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