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早く飛ばしたい気持ちはちょっと抑えて、これからスケール機の調整方法についてお話しします。
燃料は15%ニトロで十分!
皆さんはどのくらいのニトロの燃料を使っていますか? 20%?
30%? 最近はどんどん高い燃料を使うようになって、パワーは出るし、冷却は良くなる... しかしこれがスケール機にとっては大敵なのです。
高ニトロの燃料はニードルセットに鈍感で、最適なセッティングがわかりづらいのです。少し辛めでも、甘めでもそこそこ回ってしまいます。これはエンジンにとって良いことではありません。最適なセッティングを覚えるため、ニトロは少な目にしましょう。また、高ニトロの燃料はエンジンが冷えすぎる傾向にあり、スローを多用するスケール機ではエンストの危険性が増大します。
そんなにパワーを絞り出す必要はありません。低ニトロの燃料を使って、エンジンをしっかり調整する。これがコツです。私はエンジンが錆びにくいと評判のMG500FAを使用しています。
ニードル甘めは厳禁
「ニードルは甘めのほうが調子が良いよ」という人、それは違います。これは多分、オーバーヒートを懸念してのことと思いますが、オーバーヒートをニードルセットでカバーしようとするのは邪道です。慣らしの終わったエンジンのニードルは、最高出力の位置よりほんの少し戻すぐらいがよいのです。決して「甘め」にしてはいけません。エンジンのレスポンスが悪くなったり、スローが安定しなくなったりします。飛行中にスローの時間が長いとエンジンが吹き上がらなくなったり止まったりするのは「甘め」のせいでエンジンが冷えてきた場合に多いのです。
これらを守ってもオーバーヒートの兆候がある場合は、本当の原因を探して修正しなければいけません。もっとも、私の経験では、エンジンのほうがだんだんとその搭載された環境になれてきて、調整を繰り返す間に、いつの間にか調子が良くなってきた、ということのほうが多いのです。
上手なニードルの調整
大切なことではあるが、なかなかきちんと行うのが難しいのがニードルの調整です。ニードルの調整は、必ずプラグヒートを外して行わねばなりません。まず、ハイ(メイン)・ニードルの調整を先に行い、それが決まった後、必要に応じてスロー・ニードルを調整します。多くの皆さんはニードルを回すのが早すぎます。「ニードルセットがよくわからない」という理由はここにあります。混合気の変化に対してエンジンはそんなに早く追従しません。ニードルを少し動かしたらハイで数十秒、スローで数十秒、それから吹き上がりの様子を見て、再度、ゆっくり調整を繰り返すのがコツです。
かなり昔から言い古されていることではありますが、以下に燃料が薄い場合/濃い場合の症状を表にしてみます
燃料の濃さ | ||
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う す い | 濃 い | |
フルハイ時 | 排気が殆ど出ない 力のない乾いた音がする 回転が次第に低下する 機種を上に向けると症状は悪化する |
排気が非常に多い 濁った音で回転が不安定 プラグヒ−トを外すと回転が下がる |
スロー時 | スローに絞った瞬間にストンと止まる 回転が次第に上がって後に低下する (止まった後)非常に始動性が悪い |
プラグヒートを外すと止まる ブスブスといった音で次第に回転が下がる/ついには止まる |
スロー〜ハイ への吹き上がり |
力のない音で回転が上がらない、または下がる 排気ガスが薄い |
ブスブスいってなかなか回転が上がらない 生ガスを大量に排気する |
プラグヒートは使わない
ここでいう「プラグヒート」とは、インフライト・プラグヒートのことです。(プラグをヒートしなければエンジン掛からないじゃないですか!)
さて、プラグヒートは飛行中のエンスト防止に絶大な効果を発揮するのですが、なぜこれを嫌うかというと、スロー調整がわかりにくくなるからです。プラグヒートを使うと、スロー調整(燃料の濃さ)がでたらめでも結構止まらず回ってしまいます。よって、調整に非常に苦労したり、全体の調整バランスを崩してしまうことがあります。
私は倒立エンジンの場合でもプラグヒートを使ったことがありません。前述の調整をきちんとやれば十分満足のいく結果が得られます。このとき、プラグヒート装置などは余計なウエイト以外の何者でもありません。どうしてもプラグヒートが必要だと判断したときでも、エンジン調整だけはヒートをOFFにして十二分に実施してください。
チューンド・パイプは要注意!
スケール機で、「2サイクルエンジン+チューンド・パイプ」という組み合わせは滅多にないと思いますが、それだけに調整が難しいところでもあります。何故なら、スタント機の場合と違って、「とりあえず他人と同じセッティングにすればいい」ということが出来ないからです。スケール機で選択するプロペラはその目的によって千差万別、機体重量も、多用する回転域もスタント機とは比べものにならないでしょう。
パイプの調整が不確実な場合、回転が上がらないとか、エンジンが焼ける以外にも、「スローからの吹き上がりが悪い」という症状が出ることがあります。私はこの症状を32クラスのヘリと60クラスの水上機で経験したことがあります。いずれの場合も、それがパイプのせいであると気づくまで相当な時間を要しました。
この組み合わせの場合、できればスケール機に積む前に、同じセッティングで他のスポーツ機などに搭載し、パイプの長さなどを調整した方が良いでしょう。私もXF−2支援戦闘機に積む予定のエンジン(OS46SF-ABC-P+スズキ模研製パイプ)はフラッシュ45に搭載し、いろいろ条件を変えて試験しています。
プロペラの種類と性格 | ||
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大径・低ピッチ | 小径・高ピッチ | |
離陸時の加速 | 良い。ダッシュが効く トルクによる癖は大きく出る |
悪い。ゆっくりとした加速 癖はあまり気にならない |
水平速度 | すぐに最高速度に達する ピッチに応じたそこそこの速度となる |
最高速度に達するのが遅い トップスピードは速い |
上昇時 | 速度は遅いが上昇力はある 速度は急には落ちない |
速度の余勢を駆って上昇する 上昇は長続きせず、速度が落ちる |
着陸進入時 | 強力なエアブレーキとなる パワーで速度をコントロールしやすい |
パワーを絞ってもなかなか速度が落ちず、 一旦落ちた速度は回復しにくい |
90・4サイクルクラスでは、 | 14×7、14×8など | 12×11、12×12など |
以上ですが、日本の模型店ではあまりピッチの小さいプロペラは置いていないのが現状のようです。(パターン一辺倒のような気がして残念です)米国製品を探せば、ダイナスラスト、マスターエアスクリュー(ウィンザープロペラ社)、ジンガーなどいろいろなものが豊富にあります。タワーホビーズなどの模型屋さんで簡単に個人輸入できます。
もう一つ、特に4サイクルエンジンではあまり負荷の小さいプロペラは選択しないようにしましょう。負荷が小さいと運転温度が下がり、エンストの原因となります。エンジンは十分に調整し、大きなプロペラをブン回してやるのが良いのです。
最近は、デュアルレートを装備している送信機が殆どで、私が使用している、JR−PCM10Sなどは、舵角、エクスポネンシャル共、3ポジションの設定が出来ます。初飛行時はそれぞれのポジションに少しづつ異なった値を入力しておき、上空で切り替えてどれが適切か実験するのも良いでしょう。但し、一旦調整を決めたら、すべてのスイッチポジションに対して同じ入力としておきます。これは、飛行前にもし違うスイッチポジションになっていても同様に飛ばせるようにするためです。
翼端失速でひっくり返る!
というわけです。恐いですねー、それでは早速、防止策について考えます。
アドバース・ヨーの防止策は大きく分けて2つあります。ヨーを発生しにくくする方法と、発生したヨーを打ち消す方法です。
まず1つ目は、
エルロンに上下への差動をつける
先に、「上げ側のエルロンは抵抗が小さく、下げ側のエルロンは抵抗が大きい」と書きました。ですから、
「エルロンは、上げ舵角を大きく、下げ舵角を小さく」
なるようリンケージします。エルロンが2サーボ使用している場合は、最近のコンピュータ・プロポの、「エルロン・ディファレンシャル」という機能で実現できます。また、エルロンが1サーボ使用、或いはコンピュータプロポがない場合でも、機械的に差動を付けることが出来ます。具体的には下図を見て下さい。
次に、ヨーを打ち消す方法ですが、
エルロンからラダーへ10−20%程ミキシングをかける
つまり、エルロンと同方向にラダーも動かすことによって、ヨーを打ち消し、スムーズにバンクさせる方法です。ラダーの動作量はそれほど要りません。前述のヨーを打ち消すため必要な量は、フルストロークの20%も動けば十分です。
ちなみに実機でも多くの飛行機でこのシステムが採用されており、これを
ARI= Aileron-Rudder Interconnect
といいます。ちなみに、間違っても「あり」とは読みません....
F−4ファントム戦闘機などは、ARIが無いと、着陸進入時にひっくり返って墜落します。