R/Cスケールモデルの話(飛行調整編)

機体制作編  飛行技術編


完成検査
エンジンの搭載と調整
プロペラの選定
重量重心
機体各部のねじれ
  操縦系統調整の考え方
舵角とエクスポネンシャル
アドバース・ヨーに備えて
フラップの作動調整
初飛行の前に

1,完成検査

 さて、いよいよエンジンやメカの搭載も終わり、飛行機が飛ばせる状態になりました。いや、ちょっと待ってください。本当に貴方の飛行機、ちゃんと出来ていますか? 重量重心、サーボの動作方向、舵角、エンジン調整、etc.... これら全てが十分確認されていないと、手塩にかけて作った機体が初飛行であの世行きになりかねません。

 早く飛ばしたい気持ちはちょっと抑えて、これからスケール機の調整方法についてお話しします。

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2,エンジンの搭載と調整

 まず飛行機を安心して飛ばすために必要なこと、それは、エンジンが止まらないことではないでしょうか? スケール機はどうしても重量が重く、抵抗も大きいので、エンスト即墜落の危険が待っています。皆さん、エンジンはもう搭載してしまいましたか? 実は私は、新しい機体に新品のエンジンを積むなどということは絶対にしません。いや、練習機や軽量のスポーツ機など、いつエンストしても恐くない飛行機は別ですが。
 私の場合、スケール機に搭載するためのエンジンはまず同クラスの他の機体に積んで慣らしを行います。その際、搭載方法(正立・倒立・サイドマウント)、プロペラ、燃料、マフラーなど、なるべく本命機と同じ条件に近づけます。機体はEZ機がよいでしょう。別にOK模型に義理があるわけではありませんが、EZ機のスケール機シリーズはエンジンの換装が簡単で、手軽にそこそこの飛びをしてくれますし、雰囲気もいいですから、エンジンの慣らしをしながら飛行練習をするのに最適です。本命機と似た性格のEZ機をチョイスし、貴方がその取り扱いや飛行特性に慣熟した頃、きっとエンジンも絶好調に仕上がっていることでしょう。
 さて、それでは「止まらずに調子よく回る」エンジンにするためのコツを順に挙げていきます。

燃料は15%ニトロで十分!
 皆さんはどのくらいのニトロの燃料を使っていますか? 20%? 30%? 最近はどんどん高い燃料を使うようになって、パワーは出るし、冷却は良くなる... しかしこれがスケール機にとっては大敵なのです。
 高ニトロの燃料はニードルセットに鈍感で、最適なセッティングがわかりづらいのです。少し辛めでも、甘めでもそこそこ回ってしまいます。これはエンジンにとって良いことではありません。最適なセッティングを覚えるため、ニトロは少な目にしましょう。また、高ニトロの燃料はエンジンが冷えすぎる傾向にあり、スローを多用するスケール機ではエンストの危険性が増大します。
 そんなにパワーを絞り出す必要はありません。低ニトロの燃料を使って、エンジンをしっかり調整する。これがコツです。私はエンジンが錆びにくいと評判のMG500FAを使用しています。

ニードル甘めは厳禁
 「ニードルは甘めのほうが調子が良いよ」という人、それは違います。これは多分、オーバーヒートを懸念してのことと思いますが、オーバーヒートをニードルセットでカバーしようとするのは邪道です。慣らしの終わったエンジンのニードルは、最高出力の位置よりほんの少し戻すぐらいがよいのです。決して「甘め」にしてはいけません。エンジンのレスポンスが悪くなったり、スローが安定しなくなったりします。飛行中にスローの時間が長いとエンジンが吹き上がらなくなったり止まったりするのは「甘め」のせいでエンジンが冷えてきた場合に多いのです。
 これらを守ってもオーバーヒートの兆候がある場合は、本当の原因を探して修正しなければいけません。もっとも、私の経験では、エンジンのほうがだんだんとその搭載された環境になれてきて、調整を繰り返す間に、いつの間にか調子が良くなってきた、ということのほうが多いのです。

上手なニードルの調整  大切なことではあるが、なかなかきちんと行うのが難しいのがニードルの調整です。ニードルの調整は、必ずプラグヒートを外して行わねばなりません。まず、ハイ(メイン)・ニードルの調整を先に行い、それが決まった後、必要に応じてスロー・ニードルを調整します。多くの皆さんはニードルを回すのが早すぎます。「ニードルセットがよくわからない」という理由はここにあります。混合気の変化に対してエンジンはそんなに早く追従しません。ニードルを少し動かしたらハイで数十秒、スローで数十秒、それから吹き上がりの様子を見て、再度、ゆっくり調整を繰り返すのがコツです。
 かなり昔から言い古されていることではありますが、以下に燃料が薄い場合/濃い場合の症状を表にしてみます

  燃料の濃さ
  う す い 濃   い
フルハイ時 排気が殆ど出ない
力のない乾いた音がする
回転が次第に低下する
機種を上に向けると症状は悪化する
排気が非常に多い
濁った音で回転が不安定
プラグヒ−トを外すと回転が下がる
スロー時 スローに絞った瞬間にストンと止まる
回転が次第に上がって後に低下する
(止まった後)非常に始動性が悪い
プラグヒートを外すと止まる
ブスブスといった音で次第に回転が下がる/ついには止まる
スロー〜ハイ
への吹き上がり
力のない音で回転が上がらない、または下がる
排気ガスが薄い
ブスブスいってなかなか回転が上がらない
生ガスを大量に排気する

プラグヒートは使わない
 ここでいう「プラグヒート」とは、インフライト・プラグヒートのことです。(プラグをヒートしなければエンジン掛からないじゃないですか!)
 さて、プラグヒートは飛行中のエンスト防止に絶大な効果を発揮するのですが、なぜこれを嫌うかというと、スロー調整がわかりにくくなるからです。プラグヒートを使うと、スロー調整(燃料の濃さ)がでたらめでも結構止まらず回ってしまいます。よって、調整に非常に苦労したり、全体の調整バランスを崩してしまうことがあります。
 私は倒立エンジンの場合でもプラグヒートを使ったことがありません。前述の調整をきちんとやれば十分満足のいく結果が得られます。このとき、プラグヒート装置などは余計なウエイト以外の何者でもありません。どうしてもプラグヒートが必要だと判断したときでも、エンジン調整だけはヒートをOFFにして十二分に実施してください。

チューンド・パイプは要注意!
 スケール機で、「2サイクルエンジン+チューンド・パイプ」という組み合わせは滅多にないと思いますが、それだけに調整が難しいところでもあります。何故なら、スタント機の場合と違って、「とりあえず他人と同じセッティングにすればいい」ということが出来ないからです。スケール機で選択するプロペラはその目的によって千差万別、機体重量も、多用する回転域もスタント機とは比べものにならないでしょう。
 パイプの調整が不確実な場合、回転が上がらないとか、エンジンが焼ける以外にも、「スローからの吹き上がりが悪い」という症状が出ることがあります。私はこの症状を32クラスのヘリと60クラスの水上機で経験したことがあります。いずれの場合も、それがパイプのせいであると気づくまで相当な時間を要しました。
 この組み合わせの場合、できればスケール機に積む前に、同じセッティングで他のスポーツ機などに搭載し、パイプの長さなどを調整した方が良いでしょう。私もXF−2支援戦闘機に積む予定のエンジン(OS46SF-ABC-P+スズキ模研製パイプ)はフラッシュ45に搭載し、いろいろ条件を変えて試験しています。

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3,プロペラの選定

 さて、エンジンの調整を先に述べましたが、その前提となる大切なことが、飛行用プロペラの選定です。
 皆さんの好みもあると思いますが、スケール機では一般的に、通常機では「大直径・低ピッチ」のプロペラが、ジェット機タイプでは「小直径・大ピッチ」のプロペラが適しています。その理由について、以下の表に纏めますので、プロペラ選定の参考として下さい。

  プロペラの種類と性格
  大径・低ピッチ 小径・高ピッチ
離陸時の加速 良い。ダッシュが効く
トルクによる癖は大きく出る
悪い。ゆっくりとした加速
癖はあまり気にならない
水平速度 すぐに最高速度に達する
ピッチに応じたそこそこの速度となる
最高速度に達するのが遅い
トップスピードは速い
上昇時 速度は遅いが上昇力はある
速度は急には落ちない
速度の余勢を駆って上昇する
上昇は長続きせず、速度が落ちる
着陸進入時 強力なエアブレーキとなる
パワーで速度をコントロールしやすい
パワーを絞ってもなかなか速度が落ちず、
一旦落ちた速度は回復しにくい
90・4サイクルクラスでは、 14×7、14×8など 12×11、12×12など


 以上ですが、日本の模型店ではあまりピッチの小さいプロペラは置いていないのが現状のようです。(パターン一辺倒のような気がして残念です)米国製品を探せば、ダイナスラスト、マスターエアスクリュー(ウィンザープロペラ社)、ジンガーなどいろいろなものが豊富にあります。タワーホビーズなどの模型屋さんで簡単に個人輸入できます。
 もう一つ、特に4サイクルエンジンではあまり負荷の小さいプロペラは選択しないようにしましょう。負荷が小さいと運転温度が下がり、エンストの原因となります。エンジンは十分に調整し、大きなプロペラをブン回してやるのが良いのです。

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4,重量重心

 さて、機体制作編(重量重心)で、重量重心に対する考え方、気を付けたいことを述べました。しかし、飛行機はもう出来てしまいましたね。重心はちゃんと合っていますか? ここを適当にしてはいけません。特に重心位置は最後にもう一度実測してみましょう。

重心は絶対に30%MACより後方になってはいけません。操縦不能になります。
 私は、「飛行機は軽い方がいい」と力説しています。皆さんももちろんそう思っていることでしょう。重心はなるべくRCメカや電池などを移動させて合わせるべきです。しかし、それでもうまくいかない場合、重りを積むことを渋ってはいけません。ただでさえ重くなりがちなスケール機に重りを積みたくない気持ちはよく分かります。でも、こうなったら重心位置を合わせることが最重要です。

重心位置の合っていない飛行機は満足に飛ばない。
と、認識すべきです。

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5,機体各部のねじれ

 あなたの飛行機、正確にできているでしょうか? 「当然!」とおっしゃるでしょうが、結構ありがちなのが塗装後に曲がってしまうケース。生地完成時に正確でも、今一度点検してみて下さい。フィルム張りの飛行機ならドライヤーで熱してある程度修正できると思います。塗装仕上げの場合は....あまり大きなねじれの場合、飛行はお勧めしませんが、それほどでもないと判断される場合は、

ねじれの具合をよく観察し、どのような癖が出そうか見当を付ける
 これだけで、初飛行でのとまどいはかなり軽減されるでしょう。
 緊張で一杯の初めての離陸、その直後に予期せぬ方向へ傾いていくのと、「おっ、やはり左(右)へ行ったか、よしよし」というのでは大分余裕が違いますね。まあ、機体が正確にできているのが一番ですが。

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6,操縦系統調整の考え方

 スケール機を手がける皆さんは、これまでに練習機、スポーツ機、スタント機などかなりの種類の飛行機を経験されていると思います。しかし、スケール機の場合はどうでしょう? 重い機体に、お世辞にも良いとは言えない飛行特性、おまけに引き込み脚やフラップ、エアブレーキ等々、これらを適切に操縦してやらねば安定した飛行はできません。そこで、これからスケール機ならではの操縦系統の調整や、最近の多機能プロポを使用したセッティングのノウハウなどを紹介します。
 これらの調整を行う前にまず基本的なことは、

ガタがなく、スムーズに確実に動くリンケージであること
 が大切です。スケール機は舵面も大きく、サーボやロッドを隠すために曲がりくねった複雑なリンケージ、時にはフレキシブルロッドなど。それに引き込み脚やフラップのサーボまでが狭いところにひしめき合って、まるでトラブルが手ぐすね引いて待っているようです。これらのロッド類、どれも干渉しないで確実に動くでしょうか? 舵面を手で軽く動かしたとき、ロッドが撓んでぐにゃぐにゃしないでしょうか? これらの基本ができていないと、いくら以下に述べる調整を行っても無駄だと思いましょう。

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7,舵角とエクスポネンシャル

 初飛行の前、3舵の舵角はどのぐらいにしたらよいのでしょうか? 何? キットの指定通り? あ、そうですね、それでいいでしょう。ただ、何も考えずにその通りにするのでなく、私なりの考えを持って再検討してみましょう。

  1. エレベーター:
     重心位置が前方気味の場合、キットの指定より多少大きめにします。着陸時の引き起こし力が不足するかもしれないからです。後方重心の場合(は、本当は困るのですが)は標準でよいと思います。なお、いずれの場合も、エクスポネンシャルを20−30%入力し、ニュートラル付近を鈍感にします。水平飛行でぴょこぴょこ不安定になるのを避けるためです。
  2. エルロン:
     舵角は少な目にします。(3/4程度)
     初飛行でエルロンロールをやれるほどの大きな舵角は必要有りません。逆に、エルロンが思ったより効きすぎて恐い目に遭う例が多いので、舵角は小さめにセットしておいた方が間違いないと思います。何度か飛行し、機体に慣れてきたら徐々に大きくすればよいでしょう。エルロンにもエクスポネンシャルを20−30%入力しておきます。
     また、エルロンのリンケージについては、考慮したい点があるので後述します。
  3. ラダー:
     やはり舵角は少な目にします。(1/2程度でも良い)
     まれに、極端にラダーが効く飛行機があるのです。(私のP−40がそうでした)飛行中、無意識にラダーに触るとヨーよりもロール方向の姿勢変化となって現れ、操縦不能になったかと錯覚することもあります。(ちとオーバーかな?)ともかく、飛行中にラダーを積極的に使うことはまずありませんから舵角は少な目で十分です。但し、1/2は動くようにして下さい。離陸時の方向保持に必要です。方向保持にはリニアに効くことが重要なので、エクスポネンシャルは入力しません。
     ラダーも、曲技に必要になってきたら舵角を増やします。


 最近は、デュアルレートを装備している送信機が殆どで、私が使用している、JR−PCM10Sなどは、舵角、エクスポネンシャル共、3ポジションの設定が出来ます。初飛行時はそれぞれのポジションに少しづつ異なった値を入力しておき、上空で切り替えてどれが適切か実験するのも良いでしょう。但し、一旦調整を決めたら、すべてのスイッチポジションに対して同じ入力としておきます。これは、飛行前にもし違うスイッチポジションになっていても同様に飛ばせるようにするためです。

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8,アドバース・ヨーに備えて

 「アドバース・ヨー(Adverse Yaw)」は、低速で飛行するスケール機にとって実に厄介で危険な特性です。なんじゃそれ? という方のために少し説明いたしましょう。

 「アドバース・ヨー」とは、低速で飛行機が旋回するときに起こる、旋回を妨げる方向への偏揺れのことです。まず右図を見てください。
 これは、飛行機が低速で左へ旋回しようとしているところです。左へバンクするために左翼のエルロンは「上げ」、右翼のエルロンは「下げ」になっています。飛行機は低速のため、主翼の迎え角が大きく空気抵抗が増えています。エルロンが上がった左翼は抵抗の増加は殆どありませんが、下がった右翼は更に抵抗が大きくなり、旋回と反対方向へ機首を振ろうとする力が働きます。これがアドバース・ヨーです。そして、
アドバース・ヨー
  1. エルロン操舵(左)
  2. 右翼の抵抗増加
  3. 機首が右に振られる(左横滑りとなる)
  4. 左翼の迎え角が増加
  5. 上反角効果で思うように旋回に入らない
  6. 更に左エルロンを使う(繰り返し)
  7. で、左翼の迎え角が危険なほど増加すると....


翼端失速でひっくり返る!
というわけです。恐いですねー、それでは早速、防止策について考えます。

 アドバース・ヨーの防止策は大きく分けて2つあります。ヨーを発生しにくくする方法と、発生したヨーを打ち消す方法です。
 まず1つ目は、
エルロンに上下への差動をつける
 先に、「上げ側のエルロンは抵抗が小さく、下げ側のエルロンは抵抗が大きい」と書きました。ですから、
 「エルロンは、上げ舵角を大きく、下げ舵角を小さく」
なるようリンケージします。エルロンが2サーボ使用している場合は、最近のコンピュータ・プロポの、「エルロン・ディファレンシャル」という機能で実現できます。また、エルロンが1サーボ使用、或いはコンピュータプロポがない場合でも、機械的に差動を付けることが出来ます。具体的には下図を見て下さい。
エルロン差動
 次に、ヨーを打ち消す方法ですが、
エルロンからラダーへ10−20%程ミキシングをかける
 つまり、エルロンと同方向にラダーも動かすことによって、ヨーを打ち消し、スムーズにバンクさせる方法です。ラダーの動作量はそれほど要りません。前述のヨーを打ち消すため必要な量は、フルストロークの20%も動けば十分です。
 ちなみに実機でも多くの飛行機でこのシステムが採用されており、これを

ARI= Aileron-Rudder Interconnect
といいます。ちなみに、間違っても「あり」とは読みません....
 F−4ファントム戦闘機などは、ARIが無いと、着陸進入時にひっくり返って墜落します。

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9,フラップの作動調整

 スケール機の醍醐味の一つとして、脚・フラップを降ろしてのローパスがあげられると思います。フラップを付けたならば、ぜひ「飾り」でなく、実際に作動させてその効果を満喫しましょう。ここでは、どのようにしたら実際にフラップが使えるようになるか述べます。
 さて、ここで皆さんのプロポを見て下さい。(慣れていない方は説明書を準備して)フラップのレバー(ボリューム)がありますね。フラップはこのレバー(ボリューム)でどの位置にでも動かせるようになっています。しかし皆さん、これ、飛行中にうまく動かせると思いますか? もっと動かし易いものはありませんか? そう、ギヤのスイッチのようなトグル・スイッチが他にもいっぱい有るじゃないですか。これを使わない手はありません。
 私は、フラップのレバー(ボリューム)は使いません。フラップは、スポイラーのチャンネルに接続し、スポイラーのスイッチで動かします。どうせ動かす範囲は、全閉と全開の2位置だけです。(半開の位置があっても良いですが)それならば、使いやすいトグルスイッチで事足ります。そして、とっておきの裏技です。オートランディング・スイッチを有効にしておき、(PCM10ではこれが一番使いやすい位置にあるスイッチです)スロットルが全開から2−3コマ下がった位置で働くようにしておきます。着陸進入時にはスロットルは半開以下ですから、いつでもオートランディングのスイッチでフラップを出すことが出来ます。そして、タッチ・アンド・ゴーでスロットルを全開にすれば、即座にフラップは格納されます。離陸操作中は機体の方向保持に専念できます。私は、タッチ・アンド・ゴーの最中にフラップのスイッチを触る自信はありません。スイッチは、離陸後落ち着いてからOFFにすればよいのです。どうです? イメージ湧きましたか? このような、楽に飛ばすためのミキシングをいろいろ工夫するのもスケール機の楽しみの一つと考えています。

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10,初飛行の前に

 さてこれまで、機体の完成から飛行までの間にもう一度確認したい事項、スケール機ならではの調整方法などを述べてきました。ここで、しつこいようですが最後に一つ、強調したいことがあります。それは、

飛ばせる状態にならなければ、飛行場へ持っていかない!
ということです。
 今日はエンジンを回すだけ、お披露目だけ、などと飛行場に持っていくことはありがちなのですが、お天気が良くて、みんなにおだてられたりすると、飛ばしたくなってしまうのが人情です。上記の調整が自信をもって終わっていなかったり、バッテリーをろくに充電しないで持っていったりすることはお勧めしません。そして、エンジン調整を行うときは、機体を組み立てるとき、必ずすべてのサーボを接続し、動作点検をしておくべきです。
 初回のエンジン・ランで思いのほか調子が良かったため、予定していなかった初飛行を決行した人物を私は知っています。彼の飛行機は10秒と空に浮かんでいませんでした。彼は、エンジンを回すだけのつもりで、エルロンのサーボを繋いでいなかったのです。

 さて、エンジンの調整も終わったら、初飛行を行う前に飛行場内を何度か走らせてみることをお勧めします。(タクシー・テスト)これで舵効きの具合が判り、方向保持の要領も掴めると思います。うまく走らなければ、タイヤのアライメントを調整しなければならないかもしれません。また、エンジンも加減速に対応してちゃんと反応するでしょうか?これも最終確認が出来ます。そして自分自身も初飛行に備えて自信がついてきます。

 ところで、タクシーテストは、いつ飛行させても良い状態で行って下さい。
 ゼネラル・ダイナミクス(現:ロッキード・マーチン)F−16戦闘機の初飛行を知っていますか? 世界で初めてサイド・スティックとフライ・バイ・ワイヤー操縦装置を採用したこの飛行機は、何度もタクシー・テストを繰り返し、縦横の操縦特性を探っていました。ある高速タクシーの日、F−16は予期しない横の振動(バンクのふらつき)に見舞われました。パイロットはすぐにパワーを絞り停止しようとしましたが、振動はますます大きくなり、このままでは飛行機がひっくり返りそうでした。パイロットは、このまま地上に留まるよりは、離陸した方が安全!! と判断し、再度スロットルを進め、機は見事に離陸しました。誠に予期しない初飛行ではありましたが、私が先程来強調しているように、パイロットも、地上支援要員も十分な体制をとっていたからこそ無事に飛行が出来たのだと思います。

 皆さんも初飛行前には十分機体を調整しておいて下さい。機体にも、エンジンにも、そして自分自身にも十分な自信をもって初飛行に挑みましょう。

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